夏の初めになると、熱中症により病院に救急搬送される人数が連日報道されます。熱中症はただめまいや頭痛がするだけではなく、ときには命の危険を伴う病気です。
熱中症は保険の対象となるのか、またどんな対策ができるのかについて解説します。
熱中症で起こる可能性のリスクとは?
熱中症とは、私たちの身体が高温多湿な環境に適応できずに、体内の水分および塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして生じるさまざまな障害の総称です。具体的な症状には以下のようなものがあります。
- Ⅰ度(軽度):めまい・立ちくらみ・筋肉痛・筋肉の硬直・大量発汗
- Ⅱ度(中度):頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感
- Ⅲ度(重度):意識障害・けいれん・手足の運動障害・高体温
いつでもどこでも、また誰でも、条件次第で熱中症になる危険性はあります。しかし予防法を知り、普段から気を付けることである程度防ぐことができます。また応急処置を知っていれば救命できる病気です。
例えば、初夏や梅雨明けなどの体が暑さに慣れていない時期に、気温が急上昇するような日は危険です。また、水分補給・塩分の摂取、適度な休息を取る事が基本です。
入院や手術のリスク
熱中症で入院が必要になった場合は、当然その症状によって期間や費用は変わってきます。
例えば、めまいや立ちくらみ、多少の筋肉のけいれんなど比較的軽度の熱中症ならば、緊急搬送されたとしてもそれほど大きな費用はかからないでしょう。
しかし、内臓疾患や意識障害を起こしているような中度から重度の場合は費用がかさむことがあります。後遺症が残ってしまう恐れがあるため内臓や脳波の検査などが必要となるからです。入院期間も長くなる可能性があります。
後遺障害のリスク
熱中症の後遺症としてはまず、頭痛や耳鳴り、また食欲不振が続くことが挙げられます。これは熱中症によって自律神経のバランスが崩れることがひとつの原因です。
また、体温が異常に高い状態になったことにより血液中の酸素濃度が下がり、筋肉に酸素がいきわたらない状態が起こります。
それにより関節や筋肉の痛み、体のだるさといった症状が続くことがあります。
これらの症状は、体の治癒能力により、安静にしていればいずれはバランスを取り戻し改善していくでしょう。
しかし、意識障害などの重度の熱中症になると、深刻な後遺症が残ってしまうケースもあります。
例えば、血液に異常をきたし腎不全や脳出血、重度の意識障害を起こした場合、これらは完全に組織が破壊されてしまった状態ですので自然治癒では元に戻りません。
熱中症は重症化する前に気づき、早期に適切な処置を行う必要がある病気と言えるでしょう。
死亡のリスク
熱中症は時に命にかかわることがあります。東京都福祉保健局が公表している「熱中症死亡者の状況【東京都23区(確定値)】を例にとると、令和3年6月~9月の4か月間における熱中症による死亡者数は58人となっており、重症化するのは特に梅雨明けから初夏に集中することが分かります。
またその内の51人(87.9%)が屋内で亡くなっていることから、直射日光に当たらない屋内にいる時でも注意と対策が必要です。
加えて、屋内で亡くなった方の82.3%がクーラーを使用していなかったことが分かっています。動いていなくても意識してこまめに水分・塩分補給をすること、室内の風通しをよくして高温多湿を避けること、また冷房の過度の自粛を避けることなどが呼びかけられています。
参照:東京都保健医療局「令和3年夏の熱中症死亡者数の状況【東京都23区(確定値)】」
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansatsu/heatstroke/R03-heatstroke-kakutei.html
熱中症の医療費を保険で準備するなら
まず、生命保険商品は、例えば一般的な医療保険では熱中症で入院や手術を行った場合、給付金の対象となります。熱中症を原因とした入院後に通院した場合も保障内容によっては給付金を受け取ることができます。
万一、熱中症により治療を受けることになった時には医療保険があることを思い出し、忘れずに給付金請求するようにしましょう。
一方、損害保険商品の多くは病気が原因の場合は対象外となるので、熱中症では給付金を受け取ることができないのが一般的です。
しかし損害保険商品の中にも、子供用の傷害保険や旅行保険、ごく一部の普通傷害保険などで、熱中症を補償の対象とする商品もありますので、気になる方は、細かい補償内容を確認してみましょう。
熱中症が補償対象となる損害保険は?
傷害保険の熱中症危険特約
傷害保険は、基本的には日常生活上のケガの補償をします。家庭や学校、スポーツやレジャー、旅行中のケガを補償するわけです。
そして「熱中症(危険)特約」というオプションを付加しておくことにより、熱中症による死亡や入院、通院した場合に給付金を受け取ることができます。
しかし保険会社によっては、子ども用の傷害保険にしかこの特約を付けられず、有職者は付加できない商品もありますので、事前に必ず確認が必要です。
労災総合保険
個人だけでなく企業でも、業務中の熱中症対策は必要不可欠です。企業は働く人に対して安全配慮義務が課されていますが、特に建設現場や高温多湿になりやすい工場内での作業を行う仕事の場合、注意が必要でしょう。
万一の時に企業側の賠償責任を問われかねません。水分補給や休憩頻度を以前より多くとるようにしている会社も増えているようです。
「労災総合保険」では、業務が原因であることが確認できれば熱中症は補償の対象となります。仕事をしている時間・場所に熱中症を引き起こす明確な原因があることがポイントです。
保険料は企業が支払い、認定されれば社員は給付金を受け取ることができます(この保険はあくまでも会社が契約する保険となります)。
まとめ
地球温暖化の影響もあり毎年のように日本各地で最高気温の更新が報告されています。熱中症は炎天下での運動などで発症しやすいことが知られていますが、注意が必要なのは昼間の時間帯だけではないようです。
高齢者の方が、熱帯夜にクーラーを使用せずに寝ているうちに発症するなど、日が沈んだ夜の時間帯でも熱中症のリスクがあることを意識しておきましょう。
特にお子様や高齢者の様子を気にかけ、早めの対策を取ることが重要です。