近年では、公務員だけの優遇処置が縮小傾向にあるようです。
例えば、地方公務員の退職金は年々減少しており、直近4年間で平均345万円減少しました(総務省平成30年「地方公務員給与実態調査」より)。
また、2015年には公務員独自の年金制度であった「共済年金」が「厚生年金」へ統合されたことにより、実質的な保険料負担は増加しています。
公務員になれば将来安泰と言われたのは過去の話、しっかりとしたライフプランを立てておくべき時代が訪れています。
とは言え、まだまだ優遇されている制度も残っていますので、これを活用しない手はありません。
今回は公務員の方の医療費負担について確認し、民間の医療保険への加入は必要なのかについて解説します。
公務員に民間の医療保険が必要ないと言われる理由
市役所職員や教員など公務員の多くは、公的医療保険である共済組合に加入しています。
これにより病気やケガをした場合、保険診療(保険証が使える治療や投薬)であれば自己負担は3割、というのは一般の会社員や自営業者と変わりありません。
その他に、公務員が受けられる医療費補助制度には以下のようなものがあります。
附加給付制度がある
医療費における強力な優遇制度として「附加給付(ふかきゅうふ)」があります。
一部負担金払戻金・家族療養費附加金などとも呼ばれています。この制度によって、公務員世帯の医療費の自己負担上限は非常に低くなります。
ちなみに日本では、保険診療(保険証が使える治療や投薬)には自己負担の上限額が設定されています。これは「高額療養費」という制度であり、この制度については公務員でも会社員でも、また自営業者でも条件は変わりません。
附加給付はこの高額療養費に加え、さらに上乗せ給付される制度です。
自己負担上限額は、加入している共済組合や所得によって変わりますが、仮に年収500万円の方であれば1ヶ月の医療費の自己負担額は2万5,000円に設定されています。
(参考:地方職員共済組合 「高額療養費の支給」より)
もちろんその分、給与から保険料(共済掛金など)が引かれている訳ですが、万一1ヶ月まるまる入院するようなことがあったとしても、自己負担が2万5,000円で済むのであれば貯蓄で賄える金額ではないでしょうか。
福利厚生が充実している
公務員の入院費用に対しては、福利厚生による補助も充実しています。
都道府県や職種によっても異なりますが、上記で取り上げた附加給付制度を補完する形で、自己負担額が5,000円~2万円となるような制度があるのが一般的です。
更に互助会制度などで、入院1日あたり数千円の医療費補助が受け取れるのが一般的で、そうなるとかかった医療費のうちの自己負担額はとても少なく済むケースが多いようです。
どれほどの補助があるかについては勤務先によって異なりますので確認が必要ですが、このような制度があること自体ご存じない公務員の方も多いようです。
定年後も公的医療保険がある
退職後も、いずれかの公的医療保険があるので医療費はある程度抑えられるはずです。
具体的には、退職後に民間企業に再就職するケース、ご家族の扶養家族になるケース、また共済組合の任意継続組合員になるケースが考えられます。
ケースによって協会けんぽや国民健康保険の被保険者となることも考えられますが、いずれにしても高額療養費制度があり、年齢や所得によって自己負担額の上限が決められています。
任意継続組合員は、公務員を退職する前日までに一年以上組合員だった方が申請すれば、退職後二年間は在職中と同様の給付制度を継続して受けることができるというものです。
しかしこの任意継続組合員は、退職後二年間を過ぎると失効してしまいますので制度をきちんと確認し、自分にとってベストな選択ができるようにしましょう。
公務員が医療保険に加入したほうが良いケース
大きな助けとなる公務員の附加給付制度ですが、負担してくれる医療費は、あくまでも保険診療内での話です。
保険適用外の治療を受ける場合の医療費は全額自己負担となることに注意が必要です。
例えば、がん治療などの自由診療や先進医療などが挙げられますが、これらの治療を選択した場合、治療の内容によっては数十万~数百万円単位の治療費が必要となるケースもあります。
また、入院や治療が長引いた場合には、純粋な治療費だけでなく、日常の生活ではかかっていなかった食費や保育費や交通費などの出費が考えられますし、またパートナーやご家族の収入にも影響を与える可能性も出てくるでしょう。
強力な優遇制度があるにもかかわらず民間の医療保険に加入する公務員の方が多いのは、そういったことが理由かもしれません。
公務員が加入するのに向いている民間の医療保険
公務員が民間の医療保険の加入を検討する場合、いくつか選び方にポイントがあります。
まずは、保障内容と保険料です。
自分が必要性を感じている条件を明確にしましょう。そこが明確になっていなければ、自分に合った医療保険選びをすることはできません。
自分の健康状態を見極めて、特定の疾患に対する不安が強ければその疾患に特化して手厚く保障してくれる医療保険を選択することができます。
体質や遺伝的な情報も整理するとよいでしょう。
必要な保障だけに絞ることで、様々なオプションを選択するよりも保険料を抑えることができます。
まとめ
今回は一般的な公務員の方が受けられる医療費の優遇制度について解説してみました。
ご自分が受けられる制度については勤務先によく確認していただき、民間の医療保険がさらに上乗せで必要かどうかを検討してみましょう。
冒頭でお話ししたように、公務員の優遇制度は縮小され続けています。制度の変化に気を配りながら、できるだけ過不足ないように準備できるといいですね。
執筆者
宮脇 英寿(CFP®資格)

■保持資格:CFP®資格、住宅ローンアドバイザー、宅地建物取引士