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生命保険の死亡保険金の受取人は子供にできる! 税金の計算法や注意点を徹底解説

生命保険

この記事を書いた人

吉野 紀幸(ファイナンシャルプランナー)

1987年大学卒業後、生命保険会社に入社。24年間の勤務の間に代理店営業部門、営業所長等を経験。2011年代理店として独立し税務・法務の知識を活用して法人分野(経営者保険・福利厚生制度のプランニング等)や相続・事業承継分野を中心に活動し現在に至る。活動エリアは九州を中心に関西、首都圏等。
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「被保険者(その方が亡くなったときに死亡保険金が支払われる人)」が亡くなった場合に死亡保険金を受け取る権利を持った人は「受取人」と呼ばれるのをご存知でしょうか。

この受取人は「配偶者」である場合が多いのですが、「子供」を受取人とすることがあります。

そして、死亡保険金の受取人であるお子様が未成年者である場合には注意すべきチェックポイントがあります。

今回は、死亡保険金の受取人を「子供」とした場合のメリットや注意点について解説します。

そもそも死亡保険金の受取人とは

死亡保険金の受取人とは

「死亡保険金の受取人」とは「被保険者(その方が亡くなったときに死亡保険金が支払われる人)」が亡くなった場合に死亡保険金を受け取る権利を持った人のことです。

「契約者」は保険契約の当事者で死亡保険金の受取人を指定することができ、契約者が受取人になることもできます。

誰が受取人になるかによって死亡保険金を受け取った時にかかる税金の種類や計算方法が違ってきます。

死亡保険金の受取人になれる人

死亡保険金の受取人は誰でもなれるというわけではありません。
契約締結時に保険会社が指定する一定の範囲で指定することができます。なお、この時被保険者の同意が必要です。

一般的なケース

どの保険会社でも、配偶者と2親等以内の親族(子・親・孫・兄弟姉妹など)を受取人に指定できます。

この範囲の人であればモラルリスク(※)は極めて低いと考えられるからです。また保険会社によっては3親等以内としている会社もあります。

(※)モラルリスク:保険金や給付金を不正な目的で取得するなどの、生命保険制度の悪用や道徳的な危険のこと

特殊なケース

配偶者と2親等以内の親族以外を受取人に指定できる場合もあります。

内縁関係の人は一般的に死亡保険金の受取人に指定することができますが、保険会社が指定する方法で内縁関係であることの確認が必要となる場合があります。また婚約者も受取人に指定することができる場合があります。(保険会社によって取り扱いが異なります)

保険会社によって異なりますが、親族がいない方は一定の条件下で親族関係にない方を死亡保険金の受取人とすることができる場合があります。

死亡保険金の受け取り時にかかる相続税

相続税が課税されるケース

死亡保険金の受け取り時にかかる税金としては相続税が課税される場合が多いです。

相続税が課税されるのは、契約者と死亡保険金の受取人が異なり、かつ死亡保険金受取時に契約者が亡くなっている場合です。つまり契約者=被保険者で死亡保険金の受取人が契約者以外の方の場合です。

契約者と死亡保険金の受取人が同一人物で、被保険者が異なる場合は所得税(一時所得)が課税されます。

被保険者と死亡保険金の受取人、契約者が全て別の人物の場合は贈与税が課税されます。

相続税の計算時に押さえたい3つの制度

基礎控除

相続税の計算において、必ず知っておきたいのが基礎控除です。
相続財産の内、一定の額の財産までは相続税がかかりません。
基礎控除額の計算式は以下の通りです。

基礎控除額=3,000万円+600万円×(法定相続人数)

Ex) 法定相続人が配偶者と子供2人の計3名の場合:
3,000万円+600万円×3人=4,800万円

生命保険の相続税非課税枠

死亡保険金は、相続税の計算上一定の額までは非課税になります。

死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人数

※配偶者とお子様2人が相続人の場合「500万円×3人=1,500万円」が非課税となります。
※受取人が法定相続人以外の場合や相続放棄した場合、非課税枠は使えません。

配偶者の税額軽減

配偶者が相続した財産については、相続税法上大きな軽減制度が設けられています。

これは、配偶者が相続した財産は亡くなった方と「協力して築いてきた財産」であり、重い税負担は適当ではないという考え方や「配偶者の生活の保護」などの趣旨によるものです。

具体的な軽減額は以下の通りです。

  1. 相続財産額 1億6,000万円までは非課税
  2. 1億6,000万円を超えても法定相続分までは非課税

※配偶者と子供で相続する場合の配偶者の法定相続分は遺産の1/2となります。

税金の計算時に考えたい二次相続

配偶者と子供が相続人となる相続を一次相続、その配偶者が亡くなり子供だけが相続人となる相続を二次相続と言います。

死亡保険金の受取人を配偶者にした場合の二次相続では「配偶者の税額軽減」はなく、また相続人の数が減ることによって「基礎控除」の額が少なくなることがほとんどのため、相続財産に対する相続税額の割合が高くなる傾向があります。

そのため、死亡保険金の受取人を初めから子供にした場合の方が、一次相続と二次相続トータルでの相続税よりも安くなる場合があります。

※子供の内1人が二次相続前に亡くなり、その子供(孫3人)が相続人となっている場合(これを代襲相続と言います)には法定相続人の数は1人+3人の合計4人となりますので、必ず法定相続人が減るとは限りません。

死亡保険金の受取人を子供にできる?

前章では死亡保険金の受取人を子供にすることで、税制上有利になる可能性があることをご説明しました。

ここからは、受取人を配偶者にした場合と子供にした場合とで、どれくらい税金の負担額が異なってくるのかという点について解説します。

子供は何歳から受取人になれる?

子供は年齢に関係なく死亡保険金の受取人になれます。保険法42条によって受取人の同意は必要ありません。

受取人を配偶者にした場合

それでは死亡保険金の受取人を「配偶者」にした場合にかかる相続税について具体例を見てみます。

状況設定

相続人 配偶者・子供2人
相続割合 法定相分通り(配偶者1/2・子供1/4×2人)
遺産総額 1億円(死亡保険金は含みません)
死亡保険金 1,500万円
死亡保険金の受取人 配偶者100%受け取り

相続税の軽減

一次相続
死亡保険金 1,500万円-(500万円×法定相続人3人)=評価額0円
課税対象額 1億円-(3000万円+600万円×3人)=5,200万円
相続税額 配偶者 0万円(配偶者の税額軽減のため)
子供1人あたり 145万円
合計 290万円
二次相続(財産に増減がないものとして試算しています)
配偶者の財産 5,000万円(死亡保険金は含みません)
死亡保険金 1,500万円のまま現金で持っていた場合
遺産総額 6,500万円(5,000万円+1,500万円)
課税対象額 6,500万円-(3000万円+600万円×2人)=2,300万円
相続税額 子供1人あたり 123万円
合計 246万円

※死亡保険金1,500万円を一時払終身保険の保険料にあてれば死亡保険金の非課税枠を使えますが500万円×2人=1,000万円になります。

受取人を子供にした場合

それでは、最初の相続の時に死亡保険金の受取人が子供だった場合はどうなるでしょうか。

二次相続
配偶者の財産 5,000万円
死亡保険金 0万円
遺産総額 5,000万円
課税対象額 5,000万円-(3000万円+600万円×2人)=800万円
相続税額 子供1人あたり 40万円
合計 80万円

※死亡保険金はすでに非課税で子供が受け取っているため二次相続では課税されません。

死亡保険金の受取人を子供にする際の2つの注意点

ここまで、子供を死亡保険金の受取人に設定した際のメリットについて解説してきました。

ただし、受取人を子供にする場合に注意するべき点もあります。ここからは死亡保険金の受取人を子供にする際の注意点を2つご紹介します。

死亡保険金は相続財産ではない

死亡保険金は、生前の保険契約にもとづいて直接受取人に支払われるので遺産ではありません。

税金の計算上は相続税の対象ですが「みなし相続財産」といって「本来の相続財産」とは区別されます。
「みなし相続財産」と「本来の相続財産」の違いは、遺産分割の対象にはならない点です。

死亡保険金を受け取った子供が「死亡保険金とは別に遺産分割をして欲しい」と言えばその通りになるのが原則です。

※裁判例としては、死亡保険金を遺産分割に反映させるべき場合がありますが原則は対象外とされています。

未成年の場合 関係者が増える

未成年者が死亡保険金の受取人となること自体に問題はありませんが、実際に死亡保険金が支払われる場合を具体的に考えると注意するべき点があります。

未成年者は自分一人では死亡保険金を請求する権限がないため、親権者または未成年後見人が代理あるいは未成年者の請求に同意する形で死亡保険金を請求する必要があります。

また、親権者や未成年後見人が実質的に財産を管理するのが通常です。この場合、以下のような問題点が指摘されています。

  1. 未成年後見人は裁判所が選任するが、選任には数か月かかるケースもあるため、死亡保険金が請求できるようになるまでに時間がかかることがある
  2. 親権者や未成年後見人が受取人である子供のためだけに死亡保険金を使うとは限らない

親権者や後見人は信頼できる方が多いと思われますが、もしこの点に不安を感じられるのであれば、お子様を受取人にするのではなく、他の方(例えば自分の親など)に受取人になっていただくという選択肢も考えられます。

死亡保険金の受取人の変更方法

死亡保険金の受取人は途中で変更することができます。

保険会社は、受取人とすることができる方の範囲を、被保険者と一定の親族関係(2親等以内)であることとしていることが多いです。また例外的に、内縁関係の人や婚約者など、一定の範囲で受取人にできる点も契約時と同じです。

契約時とは異なり、変更の場合は保険法上、受取人を指定できる範囲には強制的な制限が加えられません。ただし、変更の場合も被保険者の同意が必要なため、ある程度の範囲でモラルリスクを回避することができると考えられています。

※契約時には保険会社所定の範囲外の人を受取人に指定した場合は契約自体を引き受けない権限が保険会社にあります。契約後は強制的な解約や契約の成立を無効にすることはできないからです。

保険会社へ連絡する

死亡保険金の受取人を変更する場合は、まずは保険会社へ連絡して変更したい旨を伝えてください。

また、申し出の際に証券番号を聞かれる場合が多いので、保険証券などを手元に置いてから連絡するとスムーズです。

必要書類を揃え提出する

保険会社所定の請求書と、保険会社が定めた必要書類を提出します。

※受取人変更の請求書の他、保険証券や印鑑証明書、運転免許証などの本人確認書類の提出が必要な場合があります。

子供を死亡保険金の受取人にする際のQ&A

両親が離婚した場合 子供は保険金を受け取れる?

両親が離婚した場合は実子であれば、親権を持たない親の死亡保険金を子供は受け取ることができます。
シングルマザーが契約者となり死亡保険金の受取人を子供にすることももちろんできます。

子供が複数人いる場合 受取人はどちらに設定すべき?

子供が複数いる場合はどちらを受取人とするかは自由です。複数人を死亡保険金の受取人とすることもできますので、子供全員を受取人にすることもできます。

非嫡出子が認知された場合 保険金を受け取れる?

非嫡出子を認知している場合は死亡保険金の受取人に指定することができますが、認知していない場合は指定できない保険会社がほとんどです。

まとめ

これまで、死亡保険金の受取人を子供にすることについて、税制上のメリットや注意点について解説してきました。

死亡保険金の受取人はいつでも変更できますので、一度ご自身が加入されている保険の契約状況について確認してみてはいかがでしょうか。

その際に「保険のプロ」であるFPの力を借りるのも一案だと思います。

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