ライフステージの変化に伴い、現在加入している保険を見直し、別の保険への乗り換えを検討する場合もあります。その際、どういったことに注意が必要かを解説してまいります。
生命保険の乗り換えとは
生命保険の乗り換えとは、現在契約している保険を解約もしくは減額し、新たに他の保険商品に加入することを言います。
乗り換えることによって保険料が安く抑えられるなどのメリットもありますが、気を付けておきたいデメリットもありますので注意が必要です。
生命保険の乗り換え(見直し)の必要性
生命保険は形のない商品ですから、その内容について加入時点では詳細に理解したものの長きにわたる契約期間中ずっと忘れずに理解し続ける事は、非常に難しいことかもしれません。
高い保険料を長い期間にわたって支払っていくわけですから、その時々によってメンテナンスが必要なのです。
洋服に例えるなら補正で済ますか、新たに買い替えるかといったところでしょうか。
乗り換え(見直し)のタイミングは後述しますが、現在加入している保険を点検確認して保障内容が自分に合わなくなっているのであれば乗り換えを検討してみるのも良いでしょう。
もちろん点検してみて問題がなければ当然ながら乗り換えの必要はありません。
注意すべき不利益事項
ここでは保険を乗り換える際の注意すべき不利益事項について解説してまいります。
これらを押さえておかなければ新たな保険加入が出来なかったり、こんなはずではなかったといった事態も想定されますので細心の注意が必要です。
不利益事項としては
・新たな保険に加入いただけない場合がある。
・現在加入中の保険を解約されても解約返戻金がない場合がある。
・新たな保険に加入されても、保険金が支払われない場合がある。……などがあります。
解約返戻金
現在加入している保険を解約する際、どれだけお金が戻ってくるかどうかです。
大半の定期保険だとほとんど戻ってきませんし、仮に戻ってきたとしても少額です。
保険料が保障額の割に安いと感じられる場合は定期保険の可能性が高いと言えます。
終身保険の場合は解約返戻金がありますが、解約や乗り換えの時期によって思ったより解約返戻金が低い場合があります。
特に加入後すぐに解約をすると払い込んだ保険料より戻ってくるお金がまったくないか、あってもごくわずかです。
乗り換えを検討する場合は今入っている保険が定期か終身か、終身の場合は解約時の返戻金がいくらになるのか保険会社等に確認してみるのが良いでしょう。
告知義務
新しい保険に加入する場合は、保険会社に対して現在の体況について大半の保険種類では告知をしなければなりません。
これを告知義務といいます。告知内容によっては新たな保険契約が引き受けられなかったり、告知しなかったために新たな保険契約が解除または取り消しになったりすることもあります。
乗り換え前の保険加入時に体況上の問題がなかったとしても、現在の健康状態や過去の病歴から保険会社が新たな契約の引き受けを承諾するとは限りませんので、既契約の解約は新たに加入する保険の契約が成立した日以降に行うようにすることが必要です。
無保険状態を発生させる事が一番危険です。
引受条件
上記の告知の結果、引き受けの条件として保険料が割り増しになったり、保障内容が制限されるなどのケースも考えられますので注意が必要です。
また正しく告知した場合でも責任開始前の疾病や不慮の事故を原因とする場合には保険金・給付金が支払われないこともあります。
また、がん保険の乗り換えの時は保障が開始されるまで大半の場合3か月(90日)の待ち期間がありますので、新たな保険の保障が開始されるまで既契約の保険は解約しない方が安心といえます。
このように引き受けの条件によっては乗り換えで新たな保険に加入し直すよりも、今の保険をそのまま持っておく方が良い場合も出てきます。
申し込めば必ず加入できるわけではないのです。
生命保険の乗り換えで失敗するケース
ここまで乗り換えに伴う不利益事項について説明してきましたが、ここからは乗り換えで失敗する代表的な三つのケースを説明してまいります。
安易な乗り換えで失敗することのないよう細心の注意を払うことが大切です。
乗り換え予定だった保険に加入できない
今ある保険を解約して新たな保険に加入しようとする際は、ご自身の現在の健康状態が加入の条件を満たしているかを見落としてはいけません。
新しい保険に入るつもりでも告知や診査で落とされることがありますので、必ず新たな保険の成立を待って、それまで入っていた保険を解約するようにしましょう。
でなければ、これまでの保障内容が確保できなかったり、最悪の場合は保険に加入できなくなるということにもなりかねませんから。
予定利率や解約返戻金の変動で損をする
予定利率とは生命保険の契約者に約束する運用の利回りのことです。
また解約返戻金とは保険契約を途中で解約した時に戻ってくるお金のことです。
一般に同じ解約返戻金に対して、予定利率が高いものは低いものに比べて保険料が安くなり、同じ保険料であれば、予定利率の高いものは低いものに比べて解約返戻金が高くなります。
場合によっては、無理に乗り換える必要はないと言えます。
ご自身の現在の契約の予定利率や解約返戻金を把握しておくことも大切です。担当者に確認してみてください。
空白期間ができて保障が途切れる
乗り換えで気を付けなければいけないことに保障を途切れさせないということがあります。
保険契約は申し込み、診査、保険料の払い込み、以上三つが無事に完了して成立の運びとなります。
診査が通らなければ無効ですし、保険料の入金が確認されなければ、やはり無効です。空白期間つまり無保険の状態になるわけです。
保険を乗り換える際はこの無保険の状態を作らないことが重要です。無保険ということはその間に万が一のことあっても何も保障されないということです。
このような事態を避けるために乗り換えをする際は必ず先に新しい保険の契約を済ませておくことが重要です。
さらに上でも述べましたががん保険を乗り換える際にも3か月の待ち期間の関係から責任開始90日間は保障が重なりますが、旧契約を継続しておいた方が安全といえます。
生命保険の乗り換えを検討するタイミング
生命保険の見直しのタイミングはいくつか考えられますが、主なものにライフプラン上の変化があった時が考えられます。
- 結婚した時・・・配偶者という扶養家族が生まれます。特に専業主婦の場合は乗り換えを検討するタイミングといえます。
- 子供が生まれた時・・・将来の教育費をはじめ、子供の成長に伴って準備するお金や保障も増えていきます。
- 自宅を購入した時・・・多くの場合「団体信用生命保険」に加入しますので、この場合は支出を減らすという意味で乗り換えが考えられます。
- 子供が独立した時・・・扶養家族が減り必要な保障額も減少します。
- 仕事を辞めた時・・・特に定年退職などの場合は退職金や年金を受け取るタイミングでもあり、必要な保障額は減少します。
さらにはライフプランとは直接関係ありませんが、新商品が販売された時、特に医療保険は日進月歩で次々に新しい商品が開発されていますので、そういった時は乗り換えを検討してみるのも良いかも知れません。
支払いが厳しい場合の乗り換え以外の対策方法
保険料の支払いが厳しいため保険の解約を検討している場合、一部を犠牲にすることで解約しないで済む方法もありますのでご紹介しておきます。
特約のみを解約する
保険の主契約に付いている特約部分を解約することにより、保険料を安くする方法です。
定期特約や入院特約、介護特約などがありますが、これらの特約部分の保険料が安くなります。
ご自身の現在の保険にどんな特約が付いているか一度確認してみてください。
保障額を減らして保険料を抑える
減額といい、現在の保険を一部解約して保障を減らすことです。減らした分の保険料が安くなり、解約返戻金がある保険ですと、その部分に応じた解約返戻金が支払われます。
払済保険にする
積立型の保険の場合、その保険に積み立てられている解約返戻金を一時払保険料に充てる方法です。
保障額は減り、特約は解約となりますが、解約返戻金を一時払保険料に充てることで、それ以降の保険料の支払いは必要ありません。
契約者貸付を利用する
契約者貸付とは貯蓄性のある保険に加入している場合、その解約返戻金の一定の範囲内で保険契約者がお金を借りられる制度です。
まとめ
ここでは乗り換えについて解説して参りましたが、保険の見直しには乗り換えだけでなく中途付加や増額といった方法もありますので、ご検討中の方は保険に詳しいファイナンシャルプランナーに相談してみるのも良いのではないでしょうか。
執筆者
小代 信介(ファイナンシャルプランナー)

■保持資格:トータル・ライフ・コンサルタント