日本人がよく罹患すると言われている病気として、「がん」「心疾患」「脳血管疾患」「糖尿病」「高血圧性疾患」「肝疾患」「腎疾患」が挙げられ、これらを総称して「七大生活習慣病」と呼んでいます。
このうち糖尿病を見てみると患者総数は328.9万人(出典:厚生労働省「平成29年患者調査」)にものぼっています。
このデータだけ見ても不安に感じ何らかの対策をしなければと感じる人は多いと思います。また、身近な方が既に罹患され、治療されているのを目の当たりにされている方も多いのではないでしょうか。
今回は、糖尿病という病気について概略を説明したのち、糖尿病に備えて生命保険に加入する必要がある理由について解説致します。
また、実際に糖尿病と診断された場合、または糖尿病予備軍と診断された場合、どのような対処の仕方があるのかについても解説して参ります。
この記事を読むことによって、糖尿病に対し生命保険でどのように備えたらいいのかが理解していただけると思います。
糖尿病に関する基礎知識
「糖尿病」という病名はよく耳にしますが、その種類を大きく分けると4種類に分類されます。
このうち2型糖尿病の患者数が最も多く、皆様がイメージされる通り生活習慣に密接した発症原因により罹患するケースが多い型になります。
糖尿病の種類
それぞれの種類の違いを以下に記載します。
上述の通り、2型糖尿病の患者数が最も多く、皆さんがイメージされることが多い「糖尿病」がまさに2型糖尿病です。
1型糖尿病
1型糖尿病では、膵臓からインスリンがほとんど出なくなるため、血糖値が高くなります。
生きていくために、注射でインスリンを補う治療が必須となります。この状態を、インスリン依存状態といいます。
1型糖尿病の大部分は自己免疫が関係して発症することが多く、乳幼児から成人に至るまで幅広い年齢で発症することも特徴です。糖尿病全体の約5%が1型糖尿病であると言われています。
2型糖尿病
2型糖尿病は、インスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなったりすることによって血糖値が高くなる病気です。
2型糖尿病になる原因は、遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があるといわれています。
すべての2型糖尿病患者さんに生活習慣の問題があるわけではありませんが、血糖値を望ましい範囲にコントロールするためには、食事や運動習慣の見直しがとても重要となります。飲み薬や注射なども必要に応じて利用します。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて見つかり、まだ糖尿病には至っていない血糖の上昇(糖代謝異常)をいいます。
妊娠中は絶えず赤ちゃんに栄養を与えているため、お腹が空いているときの血糖値は、妊娠していない時と比べて低くなります。
一方で、胎盤のホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、食後の血糖値は上がりやすくなります。糖は赤ちゃんの栄養となりますが、多すぎても、少なすぎても、成長に影響を及ぼすことがあります。そのため、お腹の赤ちゃんに十分な栄養をあげながら、細やかな血糖管理をすることが大切です。
多くの場合、高い血糖値は出産の後にもどりますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来糖尿病になりやすいと言われています。
そして4つ目が糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇することによって発症することのある糖尿病となります。
■参照:国立国際医療研究センター糖尿病情報センター 「糖尿病とは」
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html#04
糖尿病かどうかの判断基準
2型糖尿病の方の場合、ある日突然、血糖値が高くなるのではありません。はじめは正常な範囲の血糖値だったのが、少しずつ高くなり、徐々に糖尿病の範囲まで高くなっていくのです。
正常から糖尿病になるまでの段階は、血糖値の高さで、正常型、境界型、糖尿病型と3段階に分類されます。糖尿病型が2回確認される、など一定の条件を満たして初めて糖尿病と診断確定されます。気づきやすい目安としましては、高い血糖値が続いていれば糖尿病の可能性が高いと言えます。
具体的には、血液検査でわかる血糖値とHbA1cが基準値より高いかどうかで診断します。次のうち、いずれか該当される方は、糖尿病の疑い(糖尿病型)となります。
- 空腹時血糖値(10時間以上絶食後の、早朝空腹時の血糖値)126mg/dL以上
- HbA1c 6.5%以上
上記の数字が同日または別の日に2つ確認されると糖尿病の診断確定となります。
■参照:国立国際医療研究センター糖尿病情報センター 「糖尿病は早くみつけましょう」
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/030/010/01.html
糖尿病患者の生命保険の必要性
ここまで、糖尿病という病気について説明をしてきました。
では、糖尿病に対して事前に生命保険で備えておくことがなぜ必要なのでしょうか。
ここではまず、糖尿病の治療にかかる金額について解説を加えたのち、糖尿病に備えて生命保険、特に医療保険に加入すべき理由について触れたいと思います。
糖尿病になったらかかるお金
一旦、糖尿病と診断されると治療が開始されることになりますが、症状や血糖値などによって、治療方法は異なります。食事療法、運動療法、薬物療法のいずれか、またはこれらを組み合わせて治療することになります。
これらの治療はいずれも長期間にわたることが多く、症状や数値によっては日常生活を制限され入院治療を余儀なくされるケースも考えられます。
また、長期間の入院生活には多額の費用が掛かってしまいます。
具体的に治療にかかる「お金」の目安の概算
- 投薬がない方、もしくは飲み薬だけの方の場合
1,960円~4,780円(月1回通院・3割負担の場合) - 注射製剤を使用している方の場合
11,820円~14,130円(月1回通院・3割負担の場合) - インスリンポンプ治療をしている方の場合
19,830円~31,920円(月1回通院・3割負担の場合) - 他の病気と合併症を伴う方の場合
4,960円~13,160円(月1回通院・3割負担の場合)
ご注意:糖尿病の外来治療にかかる費用は、薬の種類や量・自己注射の種類や回数・通院する医療機関や通院回数・合併症の状況や程度などによって変わります。諸々の条件や内訳等については、下記ホームページでご確認下さい。
■参照:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 「糖尿病とお金のはなし」
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/080/100/01.html#02
3割負担の場合、月々の負担がかなり大きくなってしまうことがお分かりいただけたと思います。しかもこのような治療が長期間続くことを考えると、大きく家計を圧迫することになることは想像に難くないでしょう。
糖尿病のために生命保険に加入すべき2つの理由
糖尿病の月々の治療費は思ったよりも高額になることがお分かりいただけたでしょう。
ここでは、月々の高額な治療費に加えて、糖尿病に備えて生命保険(医療保険)に加入すべき理由を説明いたします。
完治が難しいため通院が必要
「糖尿病」は完治という概念がない病気と言われています。一度「糖尿病」と診断されると、日常の食生活や血糖値、HbA1cの数値管理を徹底していく必要があります。
なかなか完治することが難しく、通院が必要になるため、医療費が継続的に必要になってきます。
合併症の危険性
糖尿病が進行した状態になると、命に関わるような合併症を引き起こす可能性があります。以下の3つの病気は糖尿病の三大合併症と呼ばれており、特に発症される方が多いものです。
- 網膜症:網膜にある毛細血管に障害が起きます。進行すると失明の危険性があります。
- 腎症:腎臓の毛細血管が傷つけられることなどが原因で腎臓の働きが低下します。進行すると人工透析を受ける必要があります。
- 神経障害:感覚神経や運動神経などの末梢神経に障害が発生します。三大合併症の中で最も早く併発する方が多いです。これらの病気以外にも、多くの合併症があり、合併症になればさらにいろいろな治療が必要となってきます。
糖尿病に事前に備える生命保険はあるのか
糖尿病に備えた 生命保険の特約
「糖尿病」に罹患した場合、病状によっては入院が長期化するリスクが生じます。
こういった事象の発生の可能性も十分にありうるので生命保険に加入する際には商品選択の検討材料の1つとして心掛けておきましょう。
これらのことから「糖尿病」を含めた七大生活習慣病で入院や手術をした際には、入院日数が無制限に保障される、あるいは保障される入院日数を延長することができる特約、または一時金としてまとまったお金を受取ることができる商品が各保険会社から販売されています。
糖尿病に備えるには、糖尿病専用の保険というよりも、糖尿病の治療に対して多くを保障してくれる特約を必要に応じて付加していく、または一時金として備えるという備え方が正しいと言えるでしょう。
糖尿病予備軍だと要注意
一旦「糖尿病」と診断確定されたら、一般的な医療保険や死亡保険に加入することは非常に難しくなります。
また、糖尿病と診断確定されないまでも、保険加入時に血糖値やHbA1cの数値が高い場合、保険会社の引受条件に合わず、保険加入が困難なケースや割増保険料などの条件付きでの引受になるケースも出てきますので注意が必要です。
ただし、妊娠糖尿病については、治療内容や数値、他疾患の治療の有無などにより各保険会社の査定や引受可否が異なる為、事前に加入を検討している保険会社に相談されてみることをお勧めします。
どうしても保険会社が引受をしてくれない場合には4の項目で、糖尿病と診断された方でも加入できる保険について解説しておりますので、そちらを参照なさって下さい。
健康上問題が無いうちに先のライフステージの事も視野に入れ保険の準備を心掛ける必要があると言えます。
糖尿病でも入れる2種類の生命保険
一般的な生命保険では、「糖尿病」の治療中もしくは治療歴があると加入は難しいと考えておいた方がいいことを解説してきました。では、糖尿病と診断されてしまったら、新しく生命保険に加入することはできないのでしょうか。実は、糖尿病でも加入できる可能性のある生命保険が2種類あります。以下ではそれぞれについて利点や欠点と合わせてお伝えします。
引受基準緩和型保険
引受基準緩和型保険とは?
引受基準緩和型の生命保険は読んで字のごとく、一般的な医療保険と比べて加入できる健康状態の要件を緩くした商品であり、簡単な告知項目に該当しなければ加入ができる商品です。
当然「糖尿病」の方も告知項目に該当しなければ加入が可能な医療保険です。
注意すべきは、加入できる方の健康状態の要件は緩和されていることから、加入後の一定期期間は保障額が半分になる商品が多く、また一般的な医療保険よりも保険料は高くなります。従って、保障内容と保険料のバランスを考えた上での加入が望ましいと言えるでしょう。
引受基準緩和型保険のメリット
- 持病があっても入りやすい
告知書に記載された病気や質問事項に該当しない場合、保険に加入することが可能です。 - 持病の悪化・再発も保障される
告知書で該当する項目がない場合、加入以前にかかった病気が再発した場合でも給付金の請求対象になります。 - 糖尿病以外の病気・ケガも保障される
糖尿病以外の病気やケガも当然保障の対象になります。
引受基準緩和型保険のデメリット
- 通常の生命保険より保険料が高い
健康状態に問題がある方でも加入できる保険は、健康状態に問題がない方が加入する保険種類と比較すると一般的に割高な保険料になります。 - 加入後の一定期間内は給付金額や保険金額が半額(50%)になるものが多い
持病による入院や手術の可能性も高く、加入後一定期間は給付金額や保険金額が半額(50%)としている保険商品が一般的です。このことを理解して加入するようにしましょう。 - 特約のバリエーションが少ない
健康状態に問題がない方が加入できる保険種類と比較すると、一般的には付加できる特約は少ないです。
無選択型保険
無選択型保険とは?
無選択型保険とは、告知なしで加入できる保険のことです。
一般的な生命保険や引受基準緩和型保険では加入が困難な方が、最後に検討する保険ということになります。
無選択型保険には健康状態の告知がなく、健康状態にかかわらず誰でも加入できるところが最大の特徴です。
無選択型保険のデメリット
- 通常の生命保険より保険料が高い
健康状態に関係なく加入できる保険になりますので、おのずと保険料水準は高くなります。 - 医療保険の場合、既往症の再発または悪化による入院や手術は保障の対象外になる
既往症の再発や悪化による入院や手術に関しては保障の制限が掛かります。当然ながらそれ以外の病気やケガは給付の対象になります。 - 保険金や給付金の上限が低く設定されている
保険商品ごとに異なりますが、加入できる保険金額等にも制限を設けています。
糖尿病でも入れる生命保険に関するQ&A
糖尿病でも入れる生命保険の診査って厳しいの?
引受け緩和型商品では告知項目が3~4個あり、それを満たせば基本的には入れます。告知義務違反が無いように注意しましょう。
糖尿病でも入れる生命保険での告知義務違反って?
保険契約時には健康状態について告知していただく必要があります。これを告知義務といいますが、事実をありのまま正確に、もれなく告知して下さい。
故意または重大な過失によって事実を告知せず、正しくないことを告知した場合には「告知義務違反」として保険契約または特約を解除されることがあります。
こちらの記事でも解説しております。
糖尿病でも入れる生命保険の保険金の給付はどのタイミング?
通常の生命保険と同じく死亡保険金や入院給付金と手術給付金が基本保障となります。
死亡保険金は病気やケガで万一亡くなられた際に支払われます。医療保険の入院給付金とは、病気や怪我などで治療を目的として入院した場合に保険会社から支払われるものです。
同じく手術給付金とは、病気や怪我などで治療を目的とした手術を受けた場合に保険会社から支払われるものを指します。
給付金の種類によって支払われる条件は異なりますが給付のタイミングはいずれも入院や治療後の請求後となります。
まとめ
以上解説して参りましたが、糖尿病に備えるために生命保険、特に医療保険が必要であることがお分かりいただけたと思います。
また、糖尿病に罹患した後でも入れる保険はあるものの、デメリットは大きいこともわかっていただけたと思います。
ガンとは違って、糖尿病だけに対する保険はなく、今後のライフステージも考慮に入れて、早めにかつ戦略的に保険を選択する必要があります。
そのような時に保険のプロであるFPを頼ってみてください。的確な問題解決の一助になると思います。