生命保険の世帯加入率は89.8%だそうです。
生命保険に加入していない人がこの数字を聞けば、自分も早く加入を検討しなければと焦る人もいるでしょう。
しかし、生命保険と一言で言っても、商品の種類が多岐に渡り、初めて保険加入を検討する人がひとりで決めるのはなかなか難しいことです。生命保険の種類は主に4種類あります。
ここでは、それぞれの種類のメリットや特徴を解説します。この記事を読めば、自分にあった生命保険が何なのか明確になるでしょう!
参照:(公財)生命保険文化センター 「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
そもそも生命保険とは?
生命保険とは?
そもそも保険とは、「一人は万人のために、万人は一人のために」という相互扶助、助け合い、支え合いの精神により成り立っています。民間保険会社の取扱う保険は「私的保険」と言われるもので、国や地方公共団体が担う社会保障制度である「公的保険」を補完する目的があります。
こちらの記事でも生命保険について詳しく解説しております。
生命保険に加入する目的
人それぞれライフスタイルは異なりますが、生命保険に加入する目的は、予期せぬ出来事、例えば傷害や病気等により個人が被る経済的損失リスクに備えるためです。代表的な3つのリスクについて解説して参ります。
死亡のリスクに備えるため
もしもある日突然に一家の大黒柱である世帯主が死亡してしまったら・・・、残された配偶者や子ども、両親など扶養されていた家族は経済的に困窮するかもしれません。子どもが小さければ、住宅費や食費などの生活費だけではなく、その先の教育費も必要となります。もちろん、十分な貯蓄がありこれらをすべて賄うことが出来るのであれば良いですが、なかなか若い夫婦では難しいことでしょう。そんな死亡のリスクに備えるために「死亡保険」があります。
病気や怪我のリスクに備えるため
生命保険は死亡時だけではなく、病気や怪我をしたときの入院、手術、通院費用をカバーする役割もあります。もしあなたが自営業者であれば、会社員と違って有給休暇などはなく、病気やケガによって収入が減少するかもしれません。会社員であっても治療期間が長引けば、家族の生活費の心配も出てきます。公的医療保険が適用されない高額な治療もあります。このリスクに備えるために「医療保険」や「がん保険」などの商品があります。
将来必要になる資金を用意するため
生命保険では、将来必要となる資金準備を目的に加入するケースもあります。
近年平均寿命は伸びており、老後の十分な生活資金を確保出来ず、生存中に資金が枯渇してしまうかもしれないという「長生きリスク(生存リスク)」も昨今の超高齢社会では考えられます。このリスクに備えるために「個人年金保険」や「養老保険」などの商品があります。保険期間中に亡くなった場合は死亡保険金が受取ることができる保険もある一方で、満期や解約時にはまとまった金額のお金を受け取ることができるような保険です。
4種類の生命保険をわかりやすく解説!
ここまで、生命保険はそもそもどういった商品で、加入する目的は何なのかという点について解説を加えてきました。
生命保険会社が販売する商品全般はおおむね4つに分類されます。ここからは、分類した4つの生命保険について1つずつ解説していきたいと思います。
死亡保険
保険の対象となる人(被保険者)が死亡または高度障害状態になった場合に保険金が支払われるタイプの保険です。前述の通り死亡のリスクに備えられます。死亡保険は、大きく分けると「終身保険」と「定期保険」とがあります。
終身保険は保障が一生涯続くタイプです。
保障される期間が限定されないので安心感があります。ある程度長期に継続した場合、払い込んだ保険料の総額を上回る解約返戻金を確保できる場合もあり、貯蓄性のあるタイプと言えます。
定期保険は保障される期間が一定期間に限定されるタイプです。
「必要な時期に必要なだけ」の保障を得るというイメージで、保険料は終身保険と比べて一般的に安くなります。その代わり、保険期間が10年や15年のような短い期間の場合は解約返戻金が全くないか、あっても金額は僅かな場合が多く、保険期間が満了すると解約返戻金は0になるので、いわゆる「掛捨て」的な存在です。働き盛りの一家の大黒柱の万が一の事態に備えるなど、期間を限定した保障を得たい場合に検討できる保険です。
生存保険
契約してから一定期間が満了するまでに保険の対象となる人(被保険者)が生存していた場合のみ保険金が支払われる保険です。代表的なものに「学資保険」や「個人年金保険」などがあります。
学資保険
学資保険は貯蓄性が高いタイプの保険で、主に教育資金形成に利用されます。子どもが所定の年齢になると満期保険金として、まとまった金額を受け取れます。また、満期になる前の一定時期には祝い金などが受け取れる商品も主流です。満期前に契約者となる親が死亡した場合、それ以降の保険料の払込みが免除されますが、満期保険金等は契約通りに受け取れるのが大きなメリットです。昨今、マイナス金利の影響を受け、受け取ることが出来る満期保険金等を合わせた総額が支払った保険料総額を下回るケースもあります。また、祝い金や満期保険金を受取る時期がいつか、しっかりと確認する必要があります。
こちらでは、詳しく学資保険について解説をしております。
個人年金保険
個人年金保険も貯蓄性が高いタイプの保険で、老後など将来の生活資金を準備することができます。60歳や65歳といった一定の年齢まで保険料という形でお金を積み立て、その後は積立金をもとに年金をもらうというしくみの保険です。国民年金にさらに上乗せする形で毎月受け取ることが出来ます。
年金の受け取り方は以下のように3種類に分かれます。
- 終身年金型・・・生きている間はずっと年金を受け取れますが死亡すると給付が終了します。
- 有期年金型・・・年金の受け取り期間が10年、15年など決まっており、その間に生存している限り年金を受け取れますが、死亡すると給付が終了します。
- 確定年金型・・・年金の受け取り期間があらかじめ決まっており、その間年金の給付を受けられます。途中で死亡しても本人の代わりに遺族が年金を受け取ることができます。
(※ 1 と 2 については「保証期間」を設け、その間に被保険者が死亡した場合は一定の給付金が遺族に支払われるものもあります。)
こちらでは、詳しく個人年金保険について解説しております。
生死混合保険
死亡保険と生存保険を組み合わせた保険です。保険の対象となる人(被保険者)が保険期間の途中で死亡または高度障害になったときには死亡保険金や高度障害保険金が、保険期間満了まで生存した時には満期保険金が支払われる保険です。満期保険金は死亡保険金と同額になっているなどのプランが一般的です。死亡リスクに備えながら、老後のための資金も計画的に準備したいとお考えの方にオススメの保険となります。
代表的な生死混合保険としては「養老保険」が挙げられます。
こちらでは、詳しく養老保険について解説しております。
それ以外の生命保険
上記で説明してきた生命保険以外にも様々な生命保険がありますので、代表的な保険商品について解説して参ります。
医療保険
生命保険には死亡や高度障害時を保障する死亡保険や生死混合保険だけでなく、ケガや病気により入院した際に給付金を受取れる「医療保険」もあります。
医療保険は主に、
- ケガや病気などで入院した際の費用を保障する「入院給付金」
- 所定の手術を受けた際の費用を保障する「手術給付金」
の2つが基本保障となる保険です。医療保険も死亡保険と同様に一生涯保障が続くタイプである終身医療保険と保障期間が一定期間に限定されるタイプである定期医療保険の2種類に分けられます。
1. 終身医療保険
終身医療保険は保障が一生涯続くタイプです。保険料は一生涯払込みを続けるもの(終身払)や、60歳、65歳など一定の時期までに払込みを終了するもの(短期払)があり、保険料は保険加入以降上がることはなく一定となります。保険料が変わらないため、特に短期払の場合は払込保険料の総額が明確で、その費用を支払えば保障が一生涯続くという安心感を得ることができます。
2. 定期医療保険
定期医療保険は、保険期間が一定期間に限定されます。5年や10年、60歳までなど、一定期間が経過すると保険期間が終了し保障がなくなります。契約を継続更新できるタイプのものもありますが、更新のたびに保険料が上がるケースがほとんどです。働き盛りの時期だけに安価で保障を確保したい場合などに検討されるタイプですが、その後継続したくても、80歳など高齢になると継続更新ができなくなるものが多いのでこの点は留意が必要です。
こちらでは、詳しく医療保険について解説しております。
がん保険
罹患した場合の治療費用の負担が大きくなる「がん」という疾病に特化して保障を受けられる保険です。
がん保険は主に、
- がんの治療による入院の費用を保障する「入院給付金」
- がんの治療による手術の費用を保障する「手術給付金」
- がんの診断を受けた際にまとまった一時金を受け取れる「診断給付金」
の3つが基本保障となる保険です。他には、通院給付金や放射線治療給付金、抗がん剤治療給付金なども受け取れる商品もあります。がん保険も死亡保険と同様、保障期間は一生涯保障を受けられる終身タイプと保障期間が一定期間に限定される定期タイプの2種類があります。
こちらでは、詳しくがん保険について解説しております。
介護保険
介護保険は、介護サービスを利用した際に生じる自己負担に備えることを目的とした生命保険です。
保険金を受け取れる要件は商品によってそれぞれ異なりますが、公的介護保険制度における介護状態の区分などに連動して支払われる商品もあれば、保険会社が独自に定めた介護状態に該当した場合に受け取れる商品などもあります。
生命保険文化センターの調査によれば、介護保険・介護特約の世帯加入率は令和3年において16.7%となっております。他の保険と比較すればこの加入率は低い方です。しかし、社会的ニーズの高まりでしょうか、介護保険を販売する生命保険会社も年々増えてきているようです。
参照:(公財)生命保険文化センター 「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
こちらでは、詳しく介護保険について解説しております。
就業不能保険
冒頭で、そもそも生命保険に加入する目的について解説しました。大きく分けて3つのリスクに備えるためでしたが、就業不能保険は2つ目のリスクであるケガや病気のリスクに備えるためのものです。
この保険は、ケガや病気により長期間就労が出来なくなり、「収入が減少」することに対して備える生命保険です。
同じく生命保険文化センターの調査によれば、生活障害・就業不能保障保険、生活障害・就業不能保障特約の世帯加入率は令和3年において18.4%と、こちらも加入率は低い方ですが、この保険も近年ニーズが高まりつつある保険です。
参照:(公財)生命保険文化センター 「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
こちらでは、詳しく就業不能保険について解説しております。
生命保険の種類を一覧で整理
ここでは、上記で紹介してきた保険の種類を表で整理致します。
種類 | 商品 | 特徴 | 世帯加入率 (公財)生命保険文化センター 令和3年度 生命保険に関する全国実態調査より |
---|---|---|---|
死亡保険 | 終身保険 | 「死亡保障が一生涯続く」生命保険になります。基本的に、解約返戻金のある積立型の生命保険です。 | 調査データなし |
定期保険 | 掛け捨て型の生命保険の“代表格”とも言える保険で、契約時に保障期間を定め、一定期間を保障する死亡保険になります。 | 調査データなし | |
生存保険 | 学資保険 | 貯蓄性が高いタイプの保険で、教育資金形成に利用されます。子どもが所定の年齢になると満期保険金としてまとまった金額を受け取れます。満期になる前の一定時期には祝い金を受け取れる商品が主流です。 | 調査データなし |
個人年金保険 | 貯蓄性が高いタイプの保険で、老後など将来の生活資金を準備する保険です。 | 個人年金保険の世帯加入率 令和3年 24.3% 民保(かんぽ生命含む)、簡保、JA全労災の合計 |
|
生死混合保険 | 養老保険 | 被保険者が、保険期間の途中で死亡または高度障害になった時や、保険期間満了まで生存した時に保険金が支払われる保険です。 | 調査データなし |
その他 保険 |
医療保険 | ケガや病気により入院した際に給付金を受取ることが出来る生命保険です。 | 医療保険・医療特約の世帯加入率 令和3年 93.6% 民保(かんぽ生命を除く)が対象 |
がん保険 | 「がん」という疾病に特化し治療費等の保障を受けられる生命保険です。 | がん保険・がん特約の世帯加入率 令和3年 66.7% 民保(かんぽ生命を除く)が対象 |
|
介護保険 | 介護サービスを利用した際に生じる自己負担に備えることを目的とした生命保険です。 | 介護保険・介護特約の世帯加入率 令和3年 16.7% 民保(かんぽ生命を除く)が対象 |
|
就業不能保険 | ケガや病気により長期間就労が出来なくなり、収入が減少することに対して備える生命保険です。 | 生活障害・就業不能保障特約の世帯加入率 令和3年 18.4% 民保(かんぽ生命を除く)が対象 |
生命保険の種類に関するQ&A
おすすめの生命保険の種類を教えてください
よく聞かれる質問ですが、回答が最も難しい質問になります。
おすすめの生命保険はライフステージやその人の所得等の状況によるため、一概に「おすすめはこの保険」と回答出来ません。
働き方の変化や個々のライフスタイルが多様化している現在の状況下では、ライフプラン=人生の設計図 を作成することをおすすめしております。人生は自分で思うようにコントロール出来ないことも多いですが、だからこそ、どうなりたいか・どうしたいかを考えて計画的に行動することで、リスクを把握することも可能となります。リスクを把握すれば、どのような生命保険が自分に必要なのか答えが出しやすくなります。
こちらでは、理想的なライフプランの立て方について解説しております。
生命保険の種類で掛け捨て型とは何ですか?
「生命保険の種類で、掛け捨て型とは何ですか?」という質問もよく受ける質問です。ここでは、積立型と言われる生命保険との対比を交えて解説致します。
掛け捨て型の生命保険とは、解約返戻金や満期保険金がないか、あってもごくわずかで、その代わりに支払う保険料が低く抑えられている保険です。掛け捨て型の生命保険は、積み立て型の生命保険に比べて一般的には割安な保険料で大きな保障額を設計できることがメリットです。一定期間、できるだけ安い保険料で大きな保障を持ちたいといったニーズに応える商品となっています。
一方で積み立て型の生命保険は、保障機能と貯蓄機能を併せ持った保険です。保険期間が一生涯となる終身保険や、長期間にわたる定期保険・養老保険・年金保険等が該当します。
こちらの記事でも、掛け捨て型の生命保険について詳細に解説を加えております。
生命保険の会社はどのように選べば良いの?
私たちを取り巻くリスクに備えるべく、生命保険に加入することを決めたなら
- どの種類の商品が自分に必要なのか
- その種類の保険商品は、どの保険会社の保障内容が一番自分に合っているのか
この順番で保険会社選びをして下さい。
加入する保険会社を先に選び、その保険会社の取扱っている商品の中から加入する商品を決めるという順番はおすすめ致しません。本来必要な保障が足りない可能性があります。
また、実際に選択した保険会社の健全性を確認出来る指標を2つ紹介したいと思います。
1つ目は、「ソルベンシーマージン比率」です。通常の予測以上に発生したリスクに対する「支払余力」を表す指標のことです。各保険会社が開示を義務付けられている情報ですので、契約を検討する際にも確認することができます。
2つ目は、格付機関(S&P、Moody’s、日本格付研究所など)による格付グレードです。保険会社の財務に対する評価を知ることができる情報です。
まとめ
ここまで、生命保険の種類について解説してきました。
お分かりの通り非常に多くの種類の生命保険が発売されていますが、その全てを同時に契約するわけではありません。
ご自身のライフステージや所得等の状況に合わせて最適な保険を組み合わせていくものです。
とはいえ、なかなかご自身にとって最適な保険を見つけていくことは簡単なことではありません。
そんな時には、「保険のプロ」であるFPに相談してみることも一つの方法です。ご自身にぴったりの保険を選んでくれることでしょう。