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個人年金保険料控除の仕組みを知ろう

生命保険

この記事を書いた人

吉野 紀幸(ファイナンシャルプランナー)

1987年大学卒業後、生命保険会社に入社。24年間の勤務の間に代理店営業部門、営業所長等を経験。2011年代理店として独立し税務・法務の知識を活用して法人分野(経営者保険・福利厚生制度のプランニング等)や相続・事業承継分野を中心に活動し現在に至る。活動エリアは九州を中心に関西、首都圏等。
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個人年金保険は「個人年金保険料控除」を受けることで「所得税」「住民税」が安くなります。
今回は「個人年金保険料控除」についてまとめています。

※控除の対象は生命保険会社の個人年金保険の他、旧簡保・農協・漁共・生協等の商品があります。
※変額個人年金は個人年金保険料控除の対象ではなく一般生命保険料控除の対象となります。

個人年金保険料控除とは

個人年金保険料控除は、保険料の一定の割合を課税所得から差引く制度(※所得控除)です。

個人年金加入者の所得税・住民税を安くして老後資金準備の個人負担を軽減する制度として位置づけられています。

※【所得控除】
納税額は「課税所得金額×税率」で計算しますので「課税所得」から控除額を差し引くと
税額が安くなります。

例えば5万円の所得控除を受けることで税率が10%の方は5万円×10%=5,000円

税率が20%の方は5万円×20%=1万円の納税額が減る計算になります。

税率は、所得税は所得額の区分ごとに段階的に5%~45%・住民税は一律10%です。
※復興特別所得税は含みません(以下同じ)

個人年金保険料控除制度の内容

個人年金保険料控除は2つの制度が併用されています。

個人年金保険料控除は他の保険料控除制度と併せて平成22年に改正が行われました。

契約日が平成24年1月1日以後の契約は「新制度」(所得税での適用限度額4万円)が適用されますが、契約日が平成23年12月31日までの契約には改正前の「旧制度」( 〃 5万円)が適用できます。

また、両方の契約を併せて申告する場合の限度額が別途決められています。

新制度

所得税

支払った保険料の額 控除額
20,000円以下 支払った保険料の全額
20,001円から40,000円まで 支払った保険料の合計×1/2+10,000円
40,001円から80,000円 支払った保険料の合計×1/4+20,000円
80,000円を超える場合 一律40,000円

住民税

支払った保険料の額 控除額
12,000円以下 支払った保険料の全額
12,001円から32,000円まで 支払った保険料の合計×1/2+ 6,000円
32,001円から56,000円 支払った保険料の合計×1/4+14,000円
56,000円を超える場合 一律28,000円

旧制度

所得税

支払った保険料の額 控除額
25,000円以下 支払った保険料の全額
25,001円から50,000円まで 支払った保険料の合計×1/2+12,500円
50,001円から100,000円 支払った保険料の合計×1/4+25,000円
100,000円を超える場合 一律50,000円

住民税

支払った保険料の額 控除額
15,000円以下 支払った保険料の全額
15,001円から40,000円まで 支払った保険料の合計×1/2+ 7,500円
40,001円から70,000円 支払った保険料の合計×1/4+17,500円
70,000円を超える場合 一律35,000円

旧制度の年金と新制度の年金がある場合の注意点

両方の年金契約がある場合は各々の制度で計算した額の合計が控除額ですが限度額は次の通りです。

①新制度だけ 所得税4万円 住民税2.8万円
②旧制度だけ  〃 5万円  〃 3.5万円
③新旧併用   〃 4万円 住民税 2.8万円

①~③の有利な控除額を選ぶことができます。

注)旧制度の保険料が4.2万円超6万円未満の場合は所得税では「併用」が有利で住民税では「旧制度だけ」が有利になります。
この場合は住民税の計算上は各自治体が納税者に有利に計算する事になっています。
注意点は、例えば所得税の控除額で「新制度だけ」でも「併用」でも限度額4万円場合に
同じだからといって新制度だけを記載するのではなく旧制度も記載しておく点です。

記載しないと各自治体が把握できないからです。

他の保険料控除制度と通算限度額

制度改正で個人年金保険料控除枠は減りましたが、保険料控除制度全体では枠は増えました。

改正前の制度は①一般の生命保険料控除、𖯃個人年金保険料控除(限度は各5万円)の2制度でしたが、改正によって①一般の生命保険料控除、②個人年金保険料控除、③介護医療保険料控除(限度額は各4万円)の3制度になりました。

合計控除額は旧制度は10万円、新制度は12万円となります。

また、すべての控除制度を合計して控除限度額は12万円です。

旧一般生命保険料控除5万円、旧個人年金保険料控除5万円を受けている方が新制度の介護医療保険料控除4万円を受ける場合は合計額は14万円ですが控除限度額は12万円となります。
※それぞれの制度の控除額計算方法は新・旧ごとに共通です。

個人年金保険料控除の税軽減効果

概算計算例

※控除額は所得税で4万円・住民税で2.8万円
※所得金額=(収入金額)-(給与所得控除・基礎控除・配偶者控除・扶養控除)

家族構成 収入金額 課税される
所得金額
所得税
軽減額
住民税
軽減額
軽減額
合計
独身 200万円 84万円 2,000円 2,800円 4,800円
300万円 154万円 2,000円 2,800円 4,800円
500万円 308万円 4,000円 2,800円 6,800円
700万円 472万円 8,000円 2,800円 10,800円
配偶者あり 200万円 46万円 2,000円 2,800円 4,800円
300万円 116万円 2,000円 2,800円 4,800円
500万円 270万円 4,000円 2,800円 6,800円
700万円 434万円 8,000円 2,800円 10,800円
配偶者あり
子1人
200万円 8万円 2,000円 2,800円 4,800円
300万円 78万円 2,000円 2,800円 4,800円
500万円 232万円 4,000円 2,800円 6,800円
700万円 396万円 8,000円 2,800円 10,800円
配偶者あり
子2人
200万円 0万円 0円 0円 0円
300万円 40万円 2,000円 2,800円 4,800円
500万円 194万円 2,000円 2,800円 4,800円
700万円 358万円 8,000円 2,800円 10,800円

控除を受けるための方法

税制適格特約

「税制適格特約」

個人年金保険料控除を受けるためには「税制適格特約」という特約を付加する必要があります。

付加しない場合は一般生命保険料控除の対象です。

【特約を付加するための条件】
■次の契約形態であること

条件を満たす契約形態 契約者(保険料負担者) 受取人 被保険者
受取人=契約者本人の場合 契約者 契約者 契約者
受取人=配偶者の場合 契約者 配偶者 配偶者

■保険料払込期間が10年以上あること
月払・年払・半年払が対象です。
一時払の場合は一般生命保険料控除の対象です。

■年金の支払い期間が次のどれかであること
・確定年金は年金開始が「60歳以上」かつ「受取期間が10年以上」
・年金支払期間が終身の場合は開始は何歳でも可
・被保険者の重度障害により年金開始する場合は年齢に関係なく受取期間が10年以上

特約付与による制限

特約を付加することでいくつかの制限ができます。

■条件を満たさなくなる契約内容変更はできません。
(例)
・契約後10年以内は払済年金保険への変更はできません
・一部減額をした場合に返戻金が発生しても支払わず年金支払いの原資に充当します
*配当金の途中引出ができません
*特約の途中解約はできません(途中付加は可)
*その他いくつかルールがありますので加入時に確認しましょう

控除を受けるための手続き

給与所得者は年末調整、確定申告をされている方は確定申告で申告します。添付書類は「控除証明書」「保険料領収証」「団体扱の団体(会社等)の証明書」等です。

また控除を受けられるのは実際に保険料を負担した方です。例えば、収入のない妻が契約者で夫が保険料を支払った場合は夫が控除を受けることができます。(控除証明書は妻宛のものを添付します)
※ただし、この場合は税法上の契約者は夫となるため受取る際に贈与税の対象となるので
注意が必要です。

控除についての注意点

・控除を受けられるのは控除を受ける年に支払った保険料全額です。

例えば12月に新規加入して保険料を支払った場合は月払は1ヶ月分が年払や半年払であれば支払った全額がその年の控除対象となります。

・税制適格特約を付加しない場合は一般生命保険料控除の対象となりますが、配当金を自由に引き出せる契約になっている場合には(実際に受取っていなくても)控除対象額は「(支払った保険料)-(その年の配当金)」となり配当金分減る可能性があります。契約時に確認しましょう。
※近年は配当金が比較的出やすい環境となっています。

まとめ

個人年金保険料控除は公的年金を補完する役割を持つ個人年金保険等について所得税・住民税を安くすることで積立て負担を軽減する制度です。

税制適格特約を付加することでいくつかの制約もありますが、制約の趣旨は「老後資金を確実に積み立ててもらう」ことにあります。

税制を上手に活用して効率の良い老後資金積み立てを検討してみてはいかがでしょうか。

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