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医療保険の請求を忘れた! 請求期限や手続き方法は?

医療保険

この記事を書いた人

吉野 紀幸(ファイナンシャルプランナー)

1987年大学卒業後、生命保険会社に入社。24年間の勤務の間に代理店営業部門、営業所長等を経験。2011年代理店として独立し税務・法務の知識を活用して法人分野(経営者保険・福利厚生制度のプランニング等)や相続・事業承継分野を中心に活動し現在に至る。活動エリアは九州を中心に関西、首都圏等。
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病気やケガで入院したり手術等の治療を受けていても、医療保険等の請求を忘れてしまうこともあります。

また、医療保険に入っていることを忘れていた場合はどうなるのでしょうか。
請求期限や請求方法についてまとめています。

医療保険の請求期限はいつまで?

保険法95条に沿って医療保険等の契約約款には「入院給付金等を請求する権利は3年間請求しなかった場合は時効によって消滅する」という趣旨の記載があります。

たとえば入院から3年間保険会社に入院給付金の請求をしなかった場合は給付金が支払われない・・・という意味にとれます。実際にはどうなのでしょうか。

3年で権利が時効消滅するとは、3年経つと自動的に権利が消滅するという意味ではありません。

保険会社が給付金受取人に「時効期間を過ぎた為給付金を支払わない」旨を伝える(時効の援用と言います)ことによって確定的に請求権が消滅します。

したがって保険会社が時効の援用をしないで支払えば給付金を受取れることになり、実際に保険会社は多くの場合に3年以上経過していても給付金等を支払っているのが現在の状況です。(受診した医療機関のカルテが保管期限経過で破棄され診断書が取れない場合もあるので注意が必要です。)

しかし、もし保険会社が時効を援用すれば給付金を請求できません。また実際に保険会社が時効を援用したことにより、時効期間が経過しているかどうかをめぐっての裁判例などもありますので請求し忘れをしないことは大変重要です。

※入院給付金の請求権は1日1日の入院について時効期間が始まりますので例えば20日間入院すると最初の入院日の請求権は最後の入院日の請求権よりも20日早く時効消滅します。

請求し忘れではなく医療保険に加入していることを忘れていた等はどうなるでしょうか。

これについては民法改正(2020年4月1日新法施行)に伴って次のように解されています(法務省見解)。

<抜粋>

(現行法)
(消滅時効の進行等)
第166条
1. 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
(新法)
(債権等の消滅時効)
第166条
1.債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

※請求権の発生(治療を受けた時)が2020年3月31日までは現行法、2020年4月1日以降であれば新法が適用されます(法務省説明)。

保険の請求権の時効期間について保険法は95条で3年という期間を定めていますが、いつからカウントするかは定めていないため、時効期間の始期は民法166条の一般原則によるとされています(通説・実務)。

現行法の「権利を行使することができる時」とは一般に「法律上の障害がなくなった時」とされています。

その意味は「請求できるのを知らなかった」「保険に入っているのを知らなかった」等の請求者の事実上の事情は考慮されず原則的には医療保険であれば治療した時から3年経てば請求権は時効消滅することになります(通説)。
(個別事情も考慮するべきとする見解が学説・判例ともあるとされています)
(以上下記文献参考)

新法は「権利を行使することができることを知った時」の条件も加えていますので請求できることを知らなかった場合はまだ時効期間のカウントが始まらないことになります。

ただし法務省の見解では「知らなかったことに過失がある場合」は「権利を行使することができることを知った時」は適用されず「権利を行使することができる時」が適用されるそうです。(詳細な解釈は実務を待つことになります)

参考文献:
近畿大学教授 野口夕子(生命保険論集第183号) 生命保険文化センター 2013年6月発行
「保険金請求権の消滅時効の起算点-民法(債権関係)改正を射程にして-」 P61~P71参照
問合せ:法務省 問合せ窓口

請求手続きに必要となる書類は?

請求手続きには

①保険会社所定の請求書の他に
②医療機関が発行する診断書等の入院や治療内容を証明する書類が必要になります。

診断書等は請求する保険会社ごとに書式がありますが、一定の基準を満たせば他の保険会社用にとったもののコピー添付でも良い場合もあります。
※コピーに医師の捺印を求められる場合は診断書等と同額の支払いを医療機関に求められる場合もあります。

③また、請求内容が「入院給付金だけ」「入院日数が一定の期間以下」「所定の疾病による請求ではない」など各保険会社ごとの条件に当てはまれば請求者が書いた証明書や医療機関からの領収証などの提出で請求ができ、医療機関からの診断書等は不要の場合もあります。

医療保険の請求手続きの流れ

保険会社への申告

入院・治療等受けた場合は早めに保険会社に連絡を取ることをお勧めします。
連絡は保険会社のお客様センターの他、保険会社の担当者、代理店へ連絡してください。
連絡の際には次のような情報の他必要な情報を質問されることがあります。

証券番号・入院・手術をされた方のお名前・入院や手術の原因・入院日・退院日・手術名等、先ほどの請求に必要な書類が簡略化できるかなどもある程度確認できます。

診断書などの準備

診断書等保険会社等からの案内に応じた必要書類を準備します。

書類の提出

必要書類がそろったら保険会社に提出します。
保険会社への直接郵送や担当者・代理店を通じての提出など便利な方法で提出ができます。

書類の審査

請求書等一式が保険会社に到着すると「書類の不備の有無」「支払いの内容」「支払えない場合に該当しないか」などのチェックが行われます。

給付金の受け取り

支払条件をクリアーできていることが確認できると給付金がお客様指定の口座に振り込まれます。

請求から給付金を受け取れるまでの日数

多くの保険会社が、必要書類が生命保険会社に到着した日の翌日(当日からとしている会社・商品もあります)から起算して5営業日までに支払うとしています。(5営業日より早く支払っているケースも多く見られます)

※書類を受取ったのが担当者や代理店である場合は受取った日が「生命保険会社に到着した日」として取り扱われます。

支払期限が長くなる場合

また次のような場合には支払期限が長くなります(45日が多いですが保険会社により異なります)

  1. 支払事由などの発生の有無の確認が必要な場合
  2. 免責事由(保険会社が支払を免除される場合)などに該当する可能性がある場合
  3. 告知義務違反に該当する可能性がある場合
  4. 普通保険約款に定める重大事由(契約者・被保険者・給付金受取人に支払いが社会正義に反するといえるような一定の時効がある場合等)、詐欺または不法取得目的に該当する可能性がある場合

※条件は保険会社が定めます。

また、調査に特別な専門機関や公的機関への照会が必要な場合や調査対象者が海外にいる場合等はさらに期限を延長している場合が多くこの場合の期限も保険会社により異なります。

まとめ

医療保険の請求には契約の約款や法律上の重要なポイントがいくつかあります。

請求にあたっては専門家である保険会社の社員や代理店からの案内やアドバイスを受けるとスムーズな給付金受取につながるのではないでしょうか。

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