「医療保険はいらない」って本当?

医療保険

最近は、医療保険しか加入していないという方も多くいる一方で、医療保険は本当に必要なのかと考える方も増えてきているのではないでしょうか。いる、いらないを決める前に、医療保険というそのものについて考えてみましょう。

そもそも「医療保険」ってどんなもの?

死亡保険に入院保険特約として販売されていたものが、2001年に第三分野保険が自由化され国内生命保険会社、損害保険会社が本格参入をして「医療保険」そのものが多く販売され始めました。

主には、
入院日数に応じた給付金。
手術内容に応じた給付金。
先進医療を受けた場合の技術料実額の給付金。

これらに加えて、通院給付金、三大疾病入院給付金や入院一時金、女性疾病入院給付金等、「特約」と呼ばれるさまざまオプションが数多く存在しています。

どんなものか?と聞かれると、病院や診療所でその治療を目的に入院や手術をした場合に、民間保険会社より給付金を受取るための保険ということではないでしょうか。

医療保険不要論の主な理由

不要論で多く聞かれる理由としては下記について。

入院日数の減少

全病床平均在院日数 一般病床平均在院日数 総病床数
1995年 44.2日 33.7日 約193万床
2004年 36.3日 20.2日 約181万床
2014年 29.9日 16.8日 約168万床
2018年 27.8日 16.1日 約164万床
2019年 27.3日 16.0日 約162万床

入院日数は20年前から減少をし続けている。精神病棟、感染症病床など除く一般病床に限れば半分になっている。だがそれよりも、そもそもの入院出来るベッドそのものが減ってきているのです。

参照:厚生労働省 「医療施設(静態・動態)調査・病院報告」(平成7、16、26、30、令和元年分参照)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1a.html

「今はそんなに入院しませんよ」、確かにそれは事実ではあります。ただ、では何故長く入院しないのか? それをきちんと説明出来るかが重要です。

「医療技術が発達してきたから」、もちろんそれも大きな要因ではあります。しかしながら、それだけでは医療保険が要らないという十分な説明とは言えないのです。

2025年問題

2025年以降、「第一次ベビーブーム」に生まれた「団塊の世代」が75歳以上になり始める。人口の約18%つまり人口の5人に1人近くが75歳以上という超高齢化が始まるのです。

そこで予想されるのは、病院不足、医師不足です。

2025年を見据えた医療・介護制度の見直しをするために、2014年に「地域医療・介護推進法」が成立しました。厚生労働省は2025年の必要病床数(目指すべき姿)として、115~119万床程度としています。(全国厚生労働関係部局長会議資料参照)

つまり、入院日数の短期化以前に入院をするためのベッド数が現在の約162万床からも大幅に減少していくということです。

今後は、厚生労働省が推し進める「かかりつけ医」、「地域医療」そして「在宅医療」が増えることになると思われます。

「高額療養費制度」の存在

公的医療保険、いわゆる社会保険についても知っておかなければいけません。

同一月(1日~月末)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分があとで払い戻される制度です。医療費が高くなることが事前に分かっている場合は「限度額適用認定証」を提示すれば、一時的立替も不要です。

一定の金額は年齢、所得により異なりますが、例えば70歳未満で標準報酬月額28万円~50万円の方の場合は

80,100円+(総医療費-26,700円)×1% を超えた金額が払い戻されます。

4か月目以降は、44,400円となります。

但し、差額ベッド代や食事代等の保険適用される診察費用以外の費用は対象とはならず全額自己負担になります。

一部負担還元金・家族療養費付加金

加入している健康保険組合によっては、「一部負担金還元金・家族療養費付加金」や「一部負担金払戻金・家族療養費付加金」などの高額療養費制度とは別に健康保険組合が独自で実施している場合があります。

例えば、自己負担額25,000円を超える金額が給付されるという組合もあります。その場合、どんなに高額な医療費がかかったとしても、自己負担額は25,000円ということです。

ご自身が加入している健康保険組合に確認してみましょう。

医療保険は本当に必要?不要?と悩むその前に。

そもそも、何が必要なのか?ということを考えなければいけません。

病気やケガで入院した時に「医療保険」という商品が必要なのではありません。窓口に払う医療費や、それ以外にかかる費用が必要なのです。

小さなお子さんがいる場合、入院期間中のベビーシッター代が必要であったり、近隣に専門医がいない場合は、県外に行く交通費が必要であったりと人それぞれ入院に伴う必要な費用は異なります。

いずれにせよ、その時にその費用をどこから調達するかは事前に考えて備えておかなければなりません。

「高額療養費制度」見直しの可能性は?

70歳以上が対象でしたが、平成29年、30年と、自己負担の増額が行われました。(高額療養費制度を利用される皆さまへ 厚生労働省参照)

今後も高齢化社会、人口減少に伴い高額療養費制度をはじめ、社会保険制度の見直しはされるものと予想されます。

高額療養費制度があるから備えは不要とは、これから将来は言えないかもしれません。

時代のニーズに合った商品

各保険会社が、今後もいろいろな保険商品を開発、販売していくと思われますが、入院の短期化、在宅医療、自己負担の増額等、環境の変化にどこまで対応できるかも考慮しなければいけません。

いずれにしても、医療保険一つだけで備えは十分という商品を探すのは難しいかもしれません。

自営業者のリスクヘッジ

自営業者の方は入院費用だけに留まらず、場合によっては入院期間中の休業についても考えておく必要があります。

ご自身が入院した際に休業しなければいけない場合は、売上げが下がることはもちろん、その時の色々な支払いの状況がどのようになるかということです。テナント賃料であったり、仕入れの支払い、従業員の給料等。

入院保障に加え休業補償についても検討が必要かもしれません。

自分には必要?不要?判断基準はどこ?

判断基準は、入院した時に何の費用がいくら必要で、その費用を賄えるかどうかです。
あとはその資金調達をどこからするかだけなので、医療保険はその選択肢の中の一つであると考えれば良いかと思います。

まとめ

何より大切なのは、その時にご自身が支払いや生活に困らないようにしておくということです。

そのためには、入院した時に何のための資金がいくら必要かを概算でも把握しておくことが大切です。それがどのくらいか分かりにくい場合は、我々FPに気軽に相談して頂ければと思います。

執筆者

山崎 浩志(ファイナンシャルプランナー)

兵庫県生まれ。1994年大学卒業後信用金庫へ入庫。富裕層向け資産運用アドバイス、法人経営コンサルティングなどの業務に従事。外資系金融機関を経て現在に至る。延べ3000世帯以上の保険・住宅ローン等お金にまつわるコンサルティングやリスクマネジメントを手掛けている。 商工会議所、中小企業中央会、大阪府学校生活協同組合等にて、金銭教育に関するセミナーも数多く行っており、その語り口は女性にも人気があり難しい金融の話もわかりやすく楽しく学べると好評。
■保持資格:トータル・ライフ・コンサルタント
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