就業不能になる原因の多くはうつ病を始めとした精神疾患と言われています。
就業不能となった際に保険金を受け取れる就業不能保険は、うつ病等の精神疾患になった際に適用されるのかについて知っておきたいところですよね?
ここでは、就業不能保険について解説をしていきます。
就業不能保険の特徴とは?
まず、就業不能保険とはどのような保険のことを言うのでしょうか?
「就業不能保険」とは、その言葉の通り、被保険者が“就業不能”状態になり保険金支払い事由に該当した場合に、保険金が支払われる保険を言います。
保険金支払い事由とは、病気やケガで働けない状態(所定の就業不能状態)が長期間続いた場合、傷病手当金や障害年金といった公的保障だけでは十分にカバーできない長期の収入減少に備える保険を言います。
就業不能保険の適用条件って?
就業不能保険の適用条件について解説をさせて頂きます。
就業不能保険の支払い条件
主に、就業不能保険の保険金支払い条件は、所定の「就業不能状態になった時」とされていることが一般的です。
では、就業不能状態とは、「働くことができない状態」を指していますが、それは具体的にどのような状態を指すのでしょうか?
この定義について、各保険会社や保険商品によって様々であり、就業不能保険の加入を選択される際に大変重要なポイントとなります。
一例として、
就業不能状態の定義
- 病気やケガの治療を目的として、病院もしくは診療所で入院をしている状態
- 病気やケガにより、医師の指示のもと、在宅療養で(軽い家事および必要最小限の外出を除き)治療に専念している状態
(ただし、梱包や検品等の軽労働または事務などの座業ができる場合は、在宅療養をしているケースは対象外とする場合があります。)
加えて、保険金支払いが出来ないケースについて一例を掲載します。
尚、保険会社および保険種類によって条件が異なりますのでご留意下さい。
- うつ病等の精神疾患を原因とした就業不能状態
- むちうち症や一種の腰痛等、本人が症状を訴えていても、その医学的根拠による裏付けが乏しい病気やケガを原因とする就業不能状態
- 自殺行為・犯罪行為・薬物依存・泥酔等を原因とする就業不能状態
- 免責期間を始めとした所定の支払対象外期間中の就業不能状態
就業不能保険は、保険金支払いの条件等も保険会社・保険種類によって様々です。
パンフレットや約款等を確認しておくことが重要です。
うつ病のような精神疾患の場合は適用されない
上述のように、うつ病のような精神疾患に罹患した場合、就業不能保険の多くは、保険金支払いが出来ない免責事由に該当します。
一方、昨今では、「精神疾患で60日以上の入院」、あるいは「精神疾患で入院し、60日を超えて入院」した等の条件に該当した場合には、保険金が支払われるタイプの保険も販売されています。
また、この場合での精神疾患を原因とする就労不能状態とは、一般的に以下のような要件となります。
精神疾患を直接の原因とする①治療目的とした入院、②国民年金法施行令または精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令に定める障害等級2級以上に認定した状態を言います。
いずれにしましても、保険金支払いの条件についてはハードルが高く、精神疾患を原因とした就業不能状態に対する保障を十分に確保させることは、なかなか困難な状況にあることは否めません。
精神疾患が保険適用外なのはなぜ?
精神疾患が保険適用外になる大きな理由として、「医学的他覚所見」のエビデンスが取りにくい点にあります。
「医学的他覚所見」とは、「医師が視診・触診や画像診断などによって症状を裏付けることができること」を言います。
具体的には、理学的検査・神経学的検査・臨床検査・画像検査等によって確認することが出来る異常な所見のことを言いますが、特に精神疾患について医学的他覚所見の判断も難しく、保険適用とする場合の根拠が見つけにくい点もあります。
就業不能保険以外にできる対策
ここでは、就業不能保険以外で出来る対策についてまとめておきます。
傷病手当金の申請をする
公的医療保険の被保険者が病気やケガを理由として就業出来ない場合、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やケガを理由として会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
(※)任意継続被保険者は、支給の対象外となります。
尚、傷病手当金の条件は以下の通りとなります。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことが出来ないこと
- 連続して3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
会社の傷病休暇を利用する
勤務先の福利厚生制度を利用して、傷病休暇を利用することが出来ます。
尚、傷病休暇については、勤務先の就業規則等に定められていますので、事前に確認をしておくことをおススメします。
自立支援医療制度を活用する
自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度のことを言います。
主に精神疾患の治療のための「通院治療」(入院治療は対象外)の際に、自己負担が3割⇒1割負担となる制度(当該治療のみ)で、経済的な負担を軽減し治療に専念できる制度となります。
尚、この制度の利用対象者は以下の状態になります。
- 精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
- 更生医療:身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
- 育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)
詳しくは、『厚生労働省HP 自立支援医療制度の概要』をご参照下さい。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/gaiyo.html
■出典『厚生労働省HP 自立支援医療制度の概要』
まとめ
ここまで、うつ病等の精神疾患に罹患した際の就業不能保険について解説をさせて頂きました。
まさに社会問題とも言われる精神疾患ですが、ストレスや睡眠障害、食生活等の生活習慣等が原因とも言われています。
いずれにしましても、実際に精神疾患に罹患した場合には、精神的・経済的なダメージも大きくなりますので、何かしらの準備をしておく必要性がありそうです。
そして、まずは「ストレスを溜め込まない」、「生活習慣に注意する」等、日頃の健康意識を持つことも大切です。