独身の人は、保険に加入すべきなのでしょうか?
「病気やケガをしたり死んでしまったりしたとしても、誰に迷惑をかけるわけでもないし、特に保険は不要だろう」
と考える方も多いのではないでしょうか? 答えは・・・独身の方でも保険は必要です!
「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)によると、平成28年以降に契約された方の保険の加入目的は、「医療費や入院費のため」が59.0%と最も多く、次いで「万一のときの家族の生活保障のため」52.4%、第3位が「万一のときの葬式代のため」12.4%となっています。
参照:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査《直近加入の生命保険(個人年金保険を含む)》」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
こうしてみると、加入目的の2位「万一のときの家族の生活保障のため」以外は、両方とも独身の方でも当てはまる理由と言えます。
ここでは、独身の人が加入すべき保険の種類やその必要性をご説明します。
この記事を読んでいただくことで、独身の方がどの保険に加入すべきなのか、ご理解いただくことが出来ます!
独身でも保険に加入すべき3つの理由
冒頭では、独身の方でも保険は必要であるとお伝えしました。では、なぜ独身の方でも保険は必要なのでしょうか?
ここでは、独身の方にも保険が必要な3つの理由を一つずつ解説していきたいと思います。
保険は「雨傘」のようなものだから
1つ目は、保険を「雨傘」に例えてみるとその性質や必要性を理解することが出来ます。
晴れているとき(健康なとき)は要らないと思っていますが、雨が降り出す(病気やケガをしたとき)と欲しくなります。しかもこの傘は、いざ雨が降り出すと値段が高くなったり売ってくれなくなったりするため、購入すること自体が難しくなってしまいます。しっかり吟味して購入することは晴れているときにしか出来ないのです・・・。
普段から大きくて重い雨傘を持ち歩くのは大変ですが、独身の方でもせめて折り畳み傘くらいは持っておいた方が安心ですよね。将来結婚したら配偶者に雨がかかってしまわないような大きさや形の傘に買い替え、子どもが出来たら子どもも雨のかからないものに買い替えてあげればよいと考えると、必要な保険がイメージしやすいのではないでしょうか。
また、傘には雨専用(病気やケガ、死亡時)や晴れ専用(老後資金や教育資金)、晴雨兼用のものもあるので、ご自身の考え方や家計のやりくりに応じて選びましょう。
独身でもリスクはあるから
保険が必要になるのは年配の方が中心になってくるというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、誰しもが予期せず病気やケガをして入院したり働けなくなったりするリスクがあるというのが2つ目の理由です。
そして、独身の方がそのような状態になった場合は収入がダウンするだけでなく、家事など身の回りを手伝ってくれる方がいないことからさらに出費がかさむ可能性があります。
例えば生命保険文化センターの調査によると、治療費・食事代・差額ベッド代・交通費・衣類・日用品などを含めた1日あたりの平均入院費用は20,700円、1回あたりの平均入院費用198,000円となっています。また、入院費用と入院によって失った収入の合計額の平均は268,000円となっており、まとまった貯蓄が無い場合は経済的に困窮する可能性があります。
参照:(社団)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r4/2022honshi_all.pdf
若いうちに加入した方が有利だから
3つ目の理由としては、若いうちに加入した方が有利だから、というものが挙げられます。具体的に申し上げますと、若いうちに加入した方が支払う保険料が安くなることがほとんどです。
保険料はどのようにして決まるかご存知でしょうか?保険会社は次の3つの予定率を基に保険料を決めています。
①予定利率
保険会社は契約者より受取った保険料の一部を積み立てて運用します。この運用によって得られる収益を予め予測し保険料を設定します。この予測した運用利率を予定利率といいます。一般的に、予定利率が高ければ保険料は安くなり、予定利率が低ければ保険料は高くなります。
②予定事業費率
契約の締結・保険料の収納・契約の維持管理などの事業運営に必要な経費をあらかじめ見込んでいます。これを予定事業費率といいます。
③予定死亡率
過去の統計を基に、性別・年齢別の死亡者数を予測し、将来の保険金支払いに充てるための必要額を算出します。算出の際に用いられる死亡率を予定死亡率といいます。
このうち、③の予定死亡率は年齢が上がるほど高くなるため保険料も加入時の年齢が上がるほど高くなります。毎月の保険料負担を考えるとなるべく若いうちにご加入いただく方が良いでしょう。
また、保険料が安くなること以外にも若いうちに加入した方が有利な面はあります。
特に大病を患っていなくても健康診断や人間ドックで異常を指摘されると保険加入が一定期間見合わせとなることがあります。また、加入出来たとしても保険料が割り増しになったり、特定の病気で給付金を受け取れないなどの特別条件が付いてしまったりすることが考えられます。身体に何か変調を来たす前に加入しておくことが大切になってくるということです。
独身の保険選びの3つのポイント
ここまで、独身の方にも保険が必要な3つの理由を一つずつ解説してきました。必要性についてご理解いただけたのではないでしょうか?しかしながら、保険が必要と一口に言われても様々な種類の保険があるためどの保険に加入すべきなのかわからない方もいらっしゃると思います。
ここからは、独身の方が保険を選んでいく上で念頭においてほしい3つのポイントを解説していきたいと思います。
保障は医療保障を優先する
医療保障とは、病気やケガで入院・手術をした際に給付金を受け取れるものです。給付金は保険加入者自身が受け取ります。自分自身が元気になって元の生活を取り戻すための保険とも言えますので、独身の方でも加入を検討すべき保険です。
ケガをしたり病気になった場合に、自費で治療費を賄える若手社会人の方は多くないのではないでしょうか?
特に女性の場合は、妊娠中は保険加入にあたって引き受け制限(加入から1年以内の帝王切開や切迫入院は給付対象外など)となる場合がありますので、独身のうちに医療保険に加入しておく方が安心かもしれません。
死亡保障は余裕があればつける
死亡保障は、ご自身に万が一のことがあったときに死亡保険金が支払われる保険です。当然ながら死亡保険金を自分で受取り、使うことは出来ません。あくまでも遺された家族のための保険ということになります。
従って、独身の方の場合は基本的には大きな死亡保障は必要ないでしょう。ただし、万が一の際の葬儀費用などで家族に迷惑を掛けたくないと考える場合はお葬式代となるような保険金額、ご実家に仕送りをしているなど金銭的な影響が考えられる場合は仕送り額に応じた保険金額の保険に加入しておく方が安心かと思います。
月々の保険料負担をなるべく少なくしたい場合は掛け捨てタイプが良いでしょう。掛け捨ては極力避けたいということであれば、解約払戻金のある養老保険や終身保険などにすることで、お葬式代と将来の貯蓄を兼ねる方法もあります。
貯蓄という観点も持つ
保険は掛け捨てで貯蓄は銀行や郵便局ですべきという方もいらっしゃるかと思いますが、実は保険を使って貯蓄をする場合、保障があるだけでなく各種税制面での優遇があります。
1つ目は所得税の優遇です。例えば、保険料の負担者本人が満期保険金を一括して受領した場合には、この所得は原則として一時所得になります。一時所得の金額は、受け取った保険金額から既に払い込んだ保険料の総額を差し引き、その金額から一時所得の特別控除額50万円を差し引きます。課税対象となるのは、この金額をさらに1/2にした金額となります。
要するに、年間50万円までの利益に対しては所得税がかからず、それを超えた分についても1/2にした金額だけが課税対象となるということです。仮に普通預金で50万円の利子が付いたとしても、20%の源泉分離課税で10万円が徴収されてしまいますから、この差は大きいですよね。
参照:国税庁「タックスアンサー《生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき》」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm
2つ目は生命保険料控除です。
払い込んだ生命保険料に応じて一定の金額が契約者(保険料負担者)のその年の所得から差し引かれる制度で、税率を掛ける前の所得が低くなることにより所得税・住民税の負担が軽減されるものです。
例えば、老後のために個人年金保険に加入したとします。年間に支払った保険料が80,000円を超える場合、所得税については一律40,000円、住民税は一律28,000円が所得から控除されることとなります。
特に所得税は累進課税制度と言って所得が増えるほどより高い税率となるため、高所得者ほど控除の効果が大きくなります。独身で年収700万円の方が上記の控除を受けた場合、所得税と住民税の税軽減額効果は年間10,800円となります。
年間80,000円の積み立てに対して10,800円手取りが増える訳ですから、利回りを考えるとかなりの利率と言えます。また、保険会社によっては保険料のクレジットカード払いが可能であり、クレジットカード会社のポイントなども考慮するとより効果的になります。
詳細は下記記事をご参照下さい。
独身におすすめの保険5選!
ここまで、独身の方が保険を選んでいく上で念頭においてほしい3つのポイントを解説してきました。
ここからは、独身の方におすすめの5つの保険を、保険の種類ごとに詳しく解説していきます。この5つの保険の中から自分のライフステージに合った保険を見つけていきましょう。
医療保険
基本的には入院・手術などの給付金が受けとれるシンプルなプランで問題ありませんが、喫煙や飲酒などの生活習慣や、親族の病歴を考慮して保障内容を決めることによりさらに安心できるものにしておきましょう。
自分自身が生きている限り必要な保障ですから、保険期間は更新のある定期型ではなく、一生涯の保障がある終身型をおススメします。月々の保険料を極力少なくしたい場合は、保険料の払込期間も終身タイプにすることで負担を軽減出来ます。
医療保険について詳しく解説したこちらの記事もご覧ください。
就業不能保険
就業不能保険とは、被保険者がケガや病気などを被り、その結果働けなくなった場合に保険金を受け取れるものです。働けなくなったと一口に言っても、どのようなケースが対象になるのかは各社で異なります。公的介護保険や障害等級に連動するものや保険会社独自の要件に該当すれば保険金支払いの対象となるものなど様々です。
実際に働けなくなった場合でも、会社員の方々は組合健保や協会けんぽなどに加入していれば傷病手当金を受け取ることが出来ますが、元の収入よりは少なくなってしまうことがほとんどです。また、国民健康保険に加入している自営業やフリーランスの方々には傷病手当金がありません。そのため、働けなくなることが収入ダウンに直結してしまいますので、重要度の高い保険と言えるでしょう。
参照:全国健康保険協会「こんな時に健保《病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)》」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/
就業不能保険について詳しく解説したこちらの記事もご覧ください。
がん保険
医療保険に加入していればがん保険は不要なのでは?と考える方もおられると思います。もちろん医療保険でもがんの治療で入院や手術をすることになれば給付金を受け取ることが出来ます。
しかしがんの場合はその後の治療として、抗がん剤やホルモン剤などの「化学療法」、エックス線照射などの「放射線治療」を通院しながら行うことも多く、かつその治療が長引く傾向があります。少し古いデータですが、平成16年の厚生労働省の調査によると、がんの診断後、勤労者の34%が依願退職・解雇され、自営業者の13%が廃業しています。
参照:厚生労働省 「疾患を抱える従業員(がん患者など)の就業継続《がん患者の就労や就労支援に関する現状》」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000043580.pdf
現在、国を挙げて治療と仕事の両立を支援する環境作りが行われていますが、やはり収入ダウンは避けられません。がん保険では化学療法や放射線治療を受けた場合に給付金を受け取れたり、がんと診断を受けただけで一時金を受け取れたりするなどがん保険独自の保障があります。また、男性は40代から、女性は30代から罹患率が上がり始めると言われていますが、がんになり得る病変が見つかると加入が難しくなるため健康な若いうちから積極的に加入を検討したい保障の一つと言えます。
がん保険について詳しく解説したこちらの記事もご覧ください。
終身保険
終身保険とは、言葉通り「身が終わるまで」保障が続く、保険期間が一生涯の生命保険で、一般的に掛け捨てではなく解約払戻金があります。
終身保険の目的としては①万が一死亡した場合に最低限のお金を遺族に遺すこと②将来に向けて貯蓄することの二つが挙げられます。独身であっても、万が一死亡した場合にはお葬式代などの費用が掛かりますが、貯蓄が少ない場合にそうしたリスクをカバーするのは大変です。
「貯蓄は三角、保険は四角」と言われるように貯蓄は少しずつしか増えないのに対して、保険はリスクに備えて保険料を払っていれば、万一あった際にもすぐに保険金を確保することが出来ます。しかも終身保険はほとんどの場合、いざという時に解約すると解約払戻金があるので貯蓄はしたいものの手元にお金があるとついつい使ってしまう・・・といった方は終身保険を上手に活用しましょう。
年金保険
2019年に金融庁の金融審議会、市場ワーキンググループが公表した報告書を発端とした「老後2000万円問題」はニュースやワイドショーで大きく取り上げられました。
公的年金だけでは悠々自適の老後を送ることは難しいと危機感を覚えた方も多いのではと思います。誰しもが備えておくべき老後資金の準備方法としては個人年金保険も選択肢として挙げられます。
個人年金保険とは、払い込んだ保険料を積み立て契約時に定めた年齢から年金を受け取るものです。年金の受け取り期間は5年・10年・15年など一定期間のものや、生存している限り受け取ることが出来る終身年金があります。また、払い込む保険料は円建てやドル建てがあり、積み立てた保険料が運用されるものや、配当金が受け取れるプランもあります。個人年金保険料控除が適用されるプランであれば、所得税・住民税も軽減されます。保険以外の金融商品としてはiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAなど、他にも税制優遇のある積み立て方法がありますが、それらと比較するとリスクは低い商品ですので始めやすいと言えるでしょう。
年金保険について詳しく解説したこちらの記事もご覧ください。
年代別に考えた独身に必要な保険
ここまで、独身の方におすすめの5つの保険を、保険の種類ごとに詳しく解説してまいりました。
ここからは、年代別に分けて必要になってくる保険を解説していきたいと思います。ぜひご自身の該当される年代の箇所をお読みいただき、ご自身にとって最適な保険を見つけてください。
20代の方
自分で働き稼いだお金を自由に使える方が多いため、なかなか保険で「万が一に備える」という考えには至らないかもしれません。しかし、将来に起こり得るリスクをぜひ想像して頂きたいところです。医療保険は掛け捨てで出来るだけシンプルなものが良いでしょう。また、やりくりに余裕があるのであれば1-1で述べた「晴雨兼用の傘」である終身保険や養老保険で死亡保障と将来の資金準備を同時に備えるのも一手です。
30代の方
30代といえば仕事にも慣れてきて収入も落ち着いてきたころでしょうか。まだまだ若いからと何の保険にも加入していない方もいらっしゃるかもしれませんが、30代半ばからは健康診断の検査項目が増える職場が多いため、これまでは気付かなかった病変が判ることが出てきます。ぜひ元気なうちに医療保険やがん保険の加入を検討してください。健康診断を受診してから加入を考えたいとおっしゃる方もいらっしゃいますが逆です。健康診断を受診する前に加入をご検討下さい。また、個人年金保険料控除を目的の一つとして個人年金保険に加入いただくのもおススメです。
また、30代の方に向けて解説してあるこちらの記事もぜひご覧ください。
40代の方
40代は健康リスクが顕在化し始める時期であるだけでなく、仕事上では責任のある立場を任されて役職がつき、将来のキャリアデザインに悩む方が多くなる年齢でもあります。
また、普段ライフプランの相談を受けている立場から感じるのは、セカンドライフ、親御さんの介護など、家庭面での心配事も増える年代だということです。実際、民間保険会社の世帯加入率は40~44歳が81.6%、45~49歳は87.0%となっており、全年代で最も高くなっています。
(2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査《生命保険(個人年金保険を含む)の加入状況》」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
医療保険はもちろん、セカンドライフへの備えとして個人年金保険、介護保険の加入を検討しましょう。
また、40代の方に向けて解説してあるこちらの記事もぜひご覧ください。
独身の保険選びに関するQ&A
男性と女性で必要な保険に差は出ますか?
個人的な見解になりますが、やはり女性に医療保険は必須と考えます。2-1の項でも触れましたが、女性には子宮がんや乳がん、妊娠出産に伴う切迫早産や帝王切開など、体の構造の違いからくる病気やリスクが男性より多くあるからです。
保険加入時に申告が必要な告知書のほぼ全てに、女性の場合は「現在妊娠していますか?」という項目があり、妊娠中の場合は向こう1年間の妊娠出産に伴う異常妊娠・異常分娩での入院・手術については給付対象外となったり、妊娠の週数や検診結果などによっては加入自体が見合わせとなることもあります。
生命保険は独身の場合いらないのですか?
先に述べたように、生命保険加入の目的の一つは遺族のためです。だからと言って独身の方には不要と断言出来るかというと、そう簡単なことでもありません。
生命保険は加入したい時にいつでも加入出来る訳ではなく、病気やケガをして加入出来なくなる可能性もあります。将来結婚した場合に備えて独身のうちから加入する方や、親に迷惑が掛からないように葬儀費用として加入する方もいらっしゃいます。
もちろん経済的に余裕が無い場合は、生命保険加入の優先順位は低くなるでしょう。個々人の置かれている状況や考え方によって変わってきますので、安易に要らないと判断を下すのではなく、慎重に判断しましょう。
まとめ
ここまで独身の方にとって必要な保険に関する解説をしてきました。
備えるべきリスクへの対応や独身の方におすすめ出来る保険はありますが、最終的に必要か否かの判断はそれぞれの経済状況や健康に関する不安、家族の状況、将来設計といったライフプランも含めて考えていく必要があります。
もしご自身で判断するのは難しいという方がいらっしゃいましたら、保険のプロであるファイナンシャルプランナーにご相談ください。
きっとご自身に合った保険プランを見つけることが出来るでしょう。