ひとことで“保険”と言っても、大変多くの種類があり、またその内容も様々……。
ちゃんと理解して加入している方はそれほど多くないかも知れません。今回は、何となく「同じようなもの」と思われがちな「医療保険」と「健康保険」の違いや仕組みについて解説をしていきたいと思います。
医療保険と健康保険の違い
医療保険は、公的医療保険(健康保険)と民間医療保険の2種類に分かれます。
ここでは、その2種類の医療保険について解説をしていきます。
健康保険とは
健康保険は、国・勤務先の福利厚生を目的とした社会保険方式で運営される保険で、健康保険法に基づくものを言います。
主に会社勤務の人が加入する被用者保険(職域保険)と、自営業者や退職後の人が加入する国民健康保険、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療保険制度があります。
医療保険とは
まず、医療保険とは、民間の保険会社や共済が販売している保険の一種類で、主に医療機関の受診によって発生した医療費について、その一部や全部あるいは実際の医療費とは関係なく定額を給付金として支払う保険を言います。
健康保険の仕組み
我が国では、すべての国民が以下の公的医療保険のいずれかに加入する必要があります。
これを、国民皆保険制度と言います。
職域保険(被用者保険)
- 中小企業などの従業員が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」
- 大企業などの従業員が加入する「組合管掌健康保険(組合健保)」
- 公務員などが加入する「共済組合」
- 大型船舶などの乗組員のための「船員保険」
地域保険
- 都道府県単位の「国民健康保険(国保)」
- 建設業・美容師、弁護士など特定職種の個人事業を対象とする「国民健康保険組合(国保組合)」
- 75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」
これら健康保険の主な特徴として、①医療費の自己負担割合は1~3割(現役世帯)②高額療養費制度の利用が可能③出産育児一時金等の給付金支払い④傷病手当金の給付があります。
①医療費の自己負担割合についてですが、医療機関(病院やクリニック等)を受診する際に健康保険証を提示することで、実際の医療費に対しての自己負担割合が1~3割(現役世帯)になります。
また、②高額療養費制度は、1ヶ月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合に、一定の金額を超えた分について払い戻される制度です。
(例;80,100円+(かかった医療費-267,000円)×1%)
※70歳未満 健保;標準報酬月額28~53万円の世帯の場合(国保;年間所得210万円超600万円以下)
③出産育児一時金については、健康保険加入者(被用者;本人・被扶養者;扶養家族)に対し、健康保険の適用外である分娩費用・健康診断費用・入院費用などをサポートする制度です。
④傷病手当金は、健康保険等の被用者が病気やけがで働けなくなり、事業主から十分な報酬を受けられない場合に傷病手当金が支払われる制度です。
支給額は、1日あたりの標準報酬額の2/3が支払われることになります。
支給期間は、休んだ期間のうち4日目から最長1年6ヶ月の期間で、条件(※)を満たしている日に支給されることになります。 (※国民健康保険には、原則、傷病手当金はありません。)
【傷病手当金の受給条件】(※)
(1)業務外の事由による病気やケガで療養中であること
(2)労務(今まで従事してきた仕事)に服することができないこと
(3)連続する3日間(待機期間)を含み4日以上休んでいること
(4)給与の支払いがないこと(給与の減額支給等ある場合は調整あり)
医療保険の仕組み
ここでは、民間医療保険について解説をしていきます。
万が一病気やケガをしてしまった際に、不安になるのが経済的な問題・・・。
中には日本の公的医療保険制度が充実しているため、民間の医療保険には加入する必要がないとお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、公的医療保険制度がすべての経済的負担をカバーしてくれるわけではなく、実際に病気やケガをした際には、就労が出来なくなる期間があったりして、収入面での不安も増大していきます。
イメージとしましては、公的医療保険制度は、“家計の出費(マイナス)を補うため”であり、一方の民間医療保険は、“収入の減少をカバー”するためのものと捉えて頂くと良いかと思います。
民間の医療保険の仕組みですが、入院日額タイプのものや、疾病・ケガに対して給付金が支払われるタイプなど販売されております。
ご自身のリスクに対して、例えばがんを重点保障するものや、三大疾病をカバーするもの、短期入院あるいは長期入院を重視したもの、女性疾病に特化したものなどあり、オーダーメイドで設計をしていけるほど自由度が高くなっております。
民間の医療保険については、ご自身で治療や給付金を選択することが可能になるため、ご自身やご家族のリスクに対して、また経済的なリスクを“どのように補うか”を事前にコントロールすることが出来るという意味では、大変重要な保険になります。
民間の医療保険に加入するメリット・デメリット
メリット
民間の医療保険に加入するメリットは、ご家族やご自身の入院・手術リスク等に対して、健康保険では補えない経済的負担を軽減できる点になります。
また、日頃の生活習慣から健康リスクを感じている場合には、重点的に保障を手厚くして備えることや、入院日額や入院日数限度、その他特約等を付加することで保障の調整が出来る点も重要となります。
デメリット
一方、民間の医療保険に加入するデメリットは、保険料負担と実際に医療保険を利用しない可能性による費用対効果を考えた場合等が挙げられるかと思います。
実際に、入院や手術等をしない場合にも保険料の支払いが必要となりますから、その点のバランスが重要になってくると考えます。
デメリットを感じる方にとっては、一定期間まで入院や手術がない場合に還付される「健康還付金付」の医療保険等もありますので、検討されるのも良いと思います。
医療保険と健康保険の使い分け方
健康保険については、実際の医療費負担に対して備える意味合いである一方で、医療保険は、差額ベッド代や食事代、その他費用など入院・手術等に係る出費や、先進医療等の高額な医療費に備える意味合いとして捉えておくことが重要と考えます。
また、入院等で働けない期間の収入の減少にも、医療保険は有効に機能しています。
まとめ
ここまで、医療保険と健康保険について解説をして参りました。
日本は、世界的に見ても公的医療保険制度が充実している国のひとつと言われています。
一方、医療技術の進歩に相まって、医療費自体の高額化も否めない事実です。
公的医療保険制度だけでは補うことが出来ない経済的な負担、特に「収入の減少をカバー」するという意味でも、民間医療保険の重要度は増していると考えます。
民間医療保険については、上述しました通り、ご自身のリスクに対してどのような保障が必要かを良く検討した上で加入をしておくことで、実際に病気やケガをした際の経済的な負担軽減と家計のコントロールをすることが可能になります。
特に、住宅ローン等高額かつ長期での返済をされている方にとって、就労が出来なくなり収入が減少するリスクは大変大きくなります。
ライフプランニングを受けたりして、ご自身とご家族の将来的な方向性と万が一の際に“どのように備えるか”をしっかりと把握しておく必要があると考えます。