医療保険やがん保険を検討する際によく耳にする「先進医療特約」。付けた方が良いのかどうか、どんな保障内容なのか、そもそも先進医療とは何なのか、見ていきましょう。
「先進医療」とは
〇〇大学で難病に対する画期的な治療方法が見つかった、△△製薬で新しい治療薬が開発された・・・など、医療技術の進歩を実感するニュースを目にする機会もあるかと思います。
先進医療とはこうした医療技術のうち、将来的に健康保険(公的医療保険)の給付対象とするかどうかを臨床の場で評価を行うことが必要と判断された、「厚生労働大臣が定めた高度な医療技術を用いた療養」のことを指します。
なお、健康保険の給付対象外となるため、技術料は全額患者の自己負担となります。
新たに開発された医療技術
先進医療はその言葉通り“先進的な”医療技術ですから、日々研究・開発が進められ、続々と新しい医療技術が生み出されています。新たに先進医療として追加されるものもあれば、健康保険の給付対象となることが決まって、先進医療から除外されるものもあります。
“先進”と付くと、とても効きそうなイメージが湧きますが、逆にまだまだ安全性や有効性を確認中の技術であるとも言えます。
先進医療の主な種類
先進医療は大きく2種類に分けられます。人体への影響が極めて少ないものが第2項先進医療【先進医療A】、もう一つは効果などを重点的に観察する必要があり、適切な体制が整っていると厚生労働大臣に認められた病院でのみ実施できる第3項先進医療【先進医療B】です。
令和4年3月1日現在、先進医療Aは24種類、先進医療Bは57種類の全81種類となっています。
参照:厚生労働省 「先進医療の各技術の概要」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html
費用はどのくらい?
先に述べた通り全額患者の自己負担となりますが、医療技術の種類によって異なります。
検査や診断などの技術だと1件あたり1,000円前後から数万円ですが、治療や手術となると1件あたり数十万円から数千万円するものもあります。
第2項先進医療【先進医療A】で最も高額な治療は、がん治療の重粒子線治療で、1件あたり3,186,609円になります。令和2年7月1日~令和3年6月30日の1年間の実績としては683件あります。
また、がんの陽子線治療は1件あたり2,649,977円となっています。
参照:厚生労働省 「令和3年6月30日時点における先進医療に係る費用」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000861354.pdf
どこで受けられるの?
先進医療はどこでも治療が受けられるわけではなく、厚生労働省が認めた医療機関でのみ受けることが出来ます。
厚生労働省のホームページに先進医療を実施している医療機関の一覧が載っており、新しい医療機関が追加されるなど変更があれば随時更新されています。
参照:厚生労働省 「先進医療を実施している医療機関の一覧」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html
がん保険の「先進医療特約」
がん保険に付加できる先進医療特約は、がん治療における先進医療だけが保障対象となります。そのため、他の病気で先進医療を受ける場合は給付対象とならないので注意が必要です。ちなみに、令和4年3月1日現在の全81種類の先進医療のうち半数近くががんに関するものと言われています。
日進月歩するがん治療
初めてがんが日本人の死亡原因の1位となったのは、1981年のことでした。以来、国を挙げてがん対策が進められています。
現在、がんを告知された方が示される治療方法は、手術療法・化学療法(抗がん剤治療)・放射線療法の3種類があり、三大治療とも呼ばれます。いずれも直接がんを標的にした治療法です。
これらに加えて、免疫療法も一般的になってきました。免疫療法は薬が直接がん細胞を攻撃するものではなく、もともと体内に備わっている患者自身の免疫の力を利用してがん細胞を攻撃するというものです。
弱った免疫細胞を再活性化してがん細胞を退治する免疫チェックポイント阻害療法や、がんに対する攻撃力を高めるT細胞療法などが挙げられます。
また遺伝子解析の技術が進み、費用も抑えられるようになったことから、遺伝子レベルで個別の治療・予防を行うゲノム医療も広がっています。
治療の選択肢を残す「先進医療特約」
従来の治療で思うような効果が得られなかった時に、最後の砦となり得るのが先進医療です。先進医療特約を付けておくことで、金銭的な負担を軽減し、治療に専念できる環境作りに役立つでしょう。
「先進医療特約」を付ける必要性
健康保険対象の治療であれば高額療養費制度のおかげで一定の限度額内で収まりますし、十分な貯蓄があれば医療保険は必要ではないかもしれません。
しかし、先進医療は上記で述べた通り全額自己負担であり、がん治療を対象とした最も高い治療では1件あたりの費用が300万円を超えます。
そのため相当額の貯蓄があったとしても、先進医療を受けるとなれば大きな出費は免れません。金銭的に少しでもご不安があれば、先進医療特約を付けておくべきでしょう。
「先進医療特約」を付ける際のポイント
先進医療特約を付加する場合は、医療保険やがん保険に付加する方法が一般的ですが、単品加入出来る商品も発売されています。保険会社によっても保障内容が異なりますので、加入する際のポイントを見ていきましょう。
保障の通算額を確認する
一般的には各社とも自己負担となる先進医療の技術料が給付対象となっていますが、通算上限額が決まっています。現在は2000万円となっているところがほとんどですが、数百万円~1000万円の商品もあります。
上限額が低いからといって加入内容を見直す必要は無いと思いますが、新規に加入する場合は上限額が高い方がご安心かもしれません。
全期型か更新型かを確認する
保障期間が終身のタイプと、5年間や10年間でその後更新していくタイプがあります。終身の場合は、保険料は契約時のままで変わりませんが、更新型の場合は更新時に保険料が変わる可能性があります。また、更新時に保障内容が変わることもあり得ますので確認しておきましょう。
「先進医療特約」を付けるときの注意点
先進医療特約の保険料は、月々100円前後の保険会社がほとんどです。これに対して保障内容は先進医療にかかる技術料と同額となっているので、重粒子線治療のような自己負担額が300万円以上の治療を受ける場合を考えると大変有用な特約と言えます。
しかし、厚生労働省の令和2年度の先進医療の実績報告によると、先進医療を受けた全患者数は5,459人、実施件数が0件の先進医療も20種類あることから、先進医療自体を受ける機会はそう多くないかもしれないことも念頭に置いておく必要があります。
参照:厚生労働省 「令和2年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000703575.pdf
また、厚生労働省指定の病院で治療を受けることが前提になりますので、近隣に該当の医療機関が無い可能性もあります。
最近の先進医療特約は、遠方での治療を想定して、交通費や宿泊費などに使える「先進医療一時金」が支払われるタイプも出てきています。
さらに、通常の給付金はいったん患者が支払ってから保険会社に請求しますが、技術料が特に高額な治療を対象に、保険会社から医療機関へ直接先進医療給付金を支払う「直接支払いサービス」を設けている保険会社もあります。
先進医療特約の保障内容は各社似たものになってきていますので、ご加入の際にはこうしたプラスαの保障やサービスも確認しておきましょう。
まとめ
先進医療の技術数は追加・削除を繰り返しているため毎年数字は変わりますが、実施医療機関数や患者数は年々増えております。
保険料に対する負担感はご契約者それぞれかと思いますが、今後も続々と新しい医療技術が生み出されるであろうことを想像すると、やはり先進医療保障は付けておいた方が安心な特約のひとつと言えるでしょう。