一度契約をした終身保険は、一生涯の死亡保障を目的にしているので、お金がないからとか、もう死亡保障は必要ないからといった理由だけで安易に解約することは控えましょう。
契約当初の意向を再確認した上で、解約を含めたいろいろな対応を検討しましょう。
終身保険の解約を考える際に確認したい解約のメリットやデメリット(リスクや注意点)、および解約以外に考慮すべき方法についてまとめてみました。
終身保険を解約するメリット
貯蓄性保険のひとつである終身保険は、
①死亡保障期間が一生涯、②支払保険料の払込期間が1回(一時払)・30年払いや60歳払いなどの短期払
(保険期間よりも払込期間が短い払い方)・一生涯支払い続ける終身払、③払込方法として一時払・年払・月払のものをいいます。
終身保険は、すでに支払いを完了したものと現在支払いを継続中のものがありますので、まずは現在加入中の保険がどちらであるかを確認しましょう。
その上で、終身保険を解約するメリットは以下の通りです。
(支払保険料の総額に対する解約返戻金の率のことを、解約返戻率と呼びます)
解約返戻金を受け取れる
終身保険は貯蓄性保険ですので、解約手続きをすることにより受け取れる解約返戻金があります。
ただし、すでに支払いを完了しているものや長期にわたり保険料を支払っている終身保険は、解約返戻金が大きい(解約返戻率が高い)ですが、
一方で、契約後、短期間で終身保険を解約される場合は、解約返戻金がまったくないか、あっても小さい(解約返戻率が低い)ことを確認しましょう。
早期解約はもったいないと言われる理由です。
保険料にかかったお金が浮く
終身保険を解約することにより、今まで加入していた保険は消滅しますので、これまで支払っていた保険料は今後支払う必要がなくなります。
保険の解約により毎月または毎年のように支払っていたお金が浮くというメリットは、結構、忘れがちです。
今後の浮いたお金の有効活用を再考しましょう。
新しい保険への加入を検討できる
最近は、生命保険会社各社より新しいタイプの生命保険が発売されています。
その中でも、終身保険の種類は、外貨建終身保険、変額終身保険、特定疾病付終身保険(生前給付金付終身保険)、介護付終身保険、低解約返戻金型終身保険など、とくに際立って多いものです。
上記、解約返戻金や浮いたお金を利用することにより、これらの終身保険のみならず、掛け捨て型の定期保険や医療保険等の新しい保険への加入を検討することも可能でしょう。
終身保険を解約することで起こるリスクや注意点
終身保険は、加入当初から一生涯の死亡保障を目的に保険料を支払ってきたことでしょう。
そうした目的を途中で中断することになる解約は、以下のようなリスクや注意点があります。解約手続きをする前に、しっかり確認したいポイントです。
死亡保障がなくなる
終身保険は一生涯の死亡保障が、最大のメリットです。
つまり、契約を継続する限り、被保険者がいつ死亡しても、あらかじめ指定をしていた受取人に死亡保険金が支払われるというものです。
終身保険を解約するということは、こうした死亡保障がまったくなくなるというリスクを再確認しましょう。
解約返戻金の受け取りで税金が発生する
終身保険を解約すると、支払った保険料の総額を上回る解約返戻金を受け取る場合(解約返戻率100%以上)には、税金がかかる場合があります。
具体的には、保険料負担者と解約返戻金の受取人が同一の場合には、下記の場合に一時所得と住民税が課税されます。
解約返戻金-支払保険料総額-50万円(特別控除) > 0円
つまり、利益が50万円以上になる場合が課税対象です。
なお、保険料負担者と解約返戻金の受取人が異なる場合には、解約返戻金が110万円を超えると贈与税が課税されますので、注意が必要です。
解約返戻金 > 110万円
解約返戻金の受け取りには時間がかかる
生命保険会社各社の解約手続きは、従来から比べると随分早くなったと言われています。しかし、①解約したい旨を保険会社に連絡する、
②解約書類が自宅に送付されてから自署(および捺印)、
③解約に必要な書類を不備なく送付する、
④解約書類が保険会社(本社等)に到着する、
⑤解約返戻金が銀行預金口座に着金する、
という手続きが完了するまでには相当の時間がかかります。ちなみに、④⇒⑤の期間は2~4営業日という保険会社がほとんどです。
解約手続きには時間がかかるということに注意しましょう。
外貨建てだと為替変動等による影響がある
外貨建終身保険に加入されている場合には、上記のほか、為替変動リスクを念頭に置いておきましょう。
一般的には、上記④解約書類が保険会社(本社等)に到着した日の為替レートが適用されます。
解約手続き中にも為替変動リスクは回避できないことを理解しておきましょう。
また為替変動とは関係しませんが、特に外貨建一時払終身保険の場合には、短期間での解約には解約控除や市場価格調整といった費用が掛かることがあるので確認が必要です。
解約以外に、考慮すべき方法は?
終身保険の解約と一般的に言われている解約は全ての保険の解約(全部解約)です。
しかし、その他にも1/2や1/5を解約するような一部分だけを解約する方法(一部解約・減額)や途中で保険料の支払いをストップして、それまでの支払保険料の額に見合った死亡保障を受け続ける方法(保険の払い済み)も有効です。
どちらも、今までよりも死亡保障額は小さくなりますが、前者が解約返戻金の一部を受け取った上で、今後の保険料の支払いが少なくなるメリット、および後者が解約返戻金は受け取れないものの今後の保険料の支払いは不要になるメリットを享受できることは一考に値します。
その他、解約返戻金の一部を借入れする方法(契約者貸付)もあります。
保険料を抑えたいなら低解約返戻金型終身保険がおすすめ
最近は、終身保険の中でも保険料の支払いを安くしたい方に低解約返戻金型終身保険が人気です。
円建・外貨建商品ともに販売されています。
これは、保険料払込期間の解約返戻金を通常の終身保険よりも低くしていて、その代わりに支払保険料を割安にした保険です。
保険料払込みが完了すると、それ以降の解約返戻金は通常の終身保険と同じ水準に戻るというのが特徴です。
ただし、途中で解約する場合には、本来の解約返戻金の70%相当額しか受け取れないため、注意が必要です。
まとめ
会社の業績が思わしくなく年収が下がったり、子供の教育費が思った以上にかかったり、両親のご病気や介護等の生活費を負担しなければならなくなったりなど、人生にはまさかの収入減少や大きな出費増大があるものです。
そんな時には、今まで継続してきた貯蓄性保険のひとつである終身保険を解約するという選択肢が浮かぶかもしれません。
今回の終身保険の解約のメリットやデメリット(リスクや注意点)、および解約以外に考慮すべき方法を参考にしていただいて、ふと立ち止まって、終身保険の解約についてしっかり検討する。
そうしたことが今後のライフプランの一助になれば幸いです。