老衰死とは? その定義や前兆となる症状、保険金の受け取り方

生命保険

厚生労働省の統計※1によると、『老衰』は死因順位の3位となっており、その数は年々増えています。高齢となった両親の衰えを見て、悲しいけれど先は長くないのかもしれないと覚悟されている方もいらっしゃるかもしれません。

『老衰』は一体どういう症状なのでしょうか。また、老衰死の場合、加入していた保険は適用されるのか、事前に準備しておくべきことはあるのかといった点について、この記事で解説していきます。

※1. 厚生労働省 令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況「性別にみた死因順位(第10位まで)別 死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」   
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/dl/10_h6.pdf

そもそも老衰死とは

厚生労働省による定義

厚生労働省ホームページ※2によれば、死因の種類は大きく2つに分かれています。

  1. 病死及び自然死
  2. 外因死(病死及び自然死か外因死か不詳の場合を除く)

この自然死というのが老衰死とも呼ばれています。
老衰死は、加齢に伴うさまざまな身体機能の衰弱による死のことを指し、「病死」とは異なります。

ちなみに外因死とは交通事故、転倒・転落、溺水、煙・火災及び火焔による傷害、窒息、中毒、その他による不慮の外因死と、自殺・他殺その他の不詳の外因死に分類されています。死因によって医師が警察に届けるケースもあります。

※2. 令和3年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/toukei/manual/dl/manual_r03.pdf

老衰とは何歳から?

では一体、老衰とは一般的に何歳からのことをいうのでしょうか?

結論としては、何歳という明確な基準はないのが実情です。何歳以上の方が亡くなった場合に老衰死として認められるのかということについては、医師によっても意見は分かれます。

医師が確認して、臨床医学的にも法医学的にも自然な死であれば老衰死ということです。

老衰死は死因の第3位

冒頭にも少し触れましたが、厚生労働省の統計※1によると、2019年の死因順位の1位は悪性新生物、2位は心疾患、3位に老衰、4位が脳血管疾患となっております。

数年前、平成28年(2016年)の調査※3によれば、死因順位の1位は悪性新生物、2位は心疾患、3位肺炎、4位脳血管疾患、5位が老衰でした。

この近年の死因順位の変動はまさに、超高齢化社会を進んでゆく日本を表しているかのように思えます。

※3. 厚生労働省 平成28年(2016)人口動態統計(確定数)の概況「性別にみた死因順位(第10位まで)別 死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei16/dl/10_h6.pdf

老衰死の前兆となる3つの症状

みなさんは、『ヘイフリックの限界』という言葉を耳にしたことはありますか?

ヘイフリックの限界とは、 動物の体を構成している各細胞が、限られた回数しか分裂・増殖することができないという法則のことです。アメリカの科学者の名前にちなみつけられたある法則をこう呼んでいます。動物の体を構成している各細胞は、いずれ老化細胞となってしまう訳です。

ここでは、老衰死の前兆として代表的な3つの症状を紹介します。

身体機能が低下する

老衰のスピードは状況や人によっても異なりますが、前兆としては身体のいろいろな能力や機能が低下していきます。加齢により蓄積される老化細胞が、臓器や組織の機能低下を引き起こします。

筋力の低下が原因で現れる前兆としては、歩く速度が遅くなる、転倒しやすくなる、握力が低下するなどです。

体重が減少する

続いて体重の減少です。臓器が委縮し栄養が吸収されず痩せ始めます。また、筋肉も委縮して筋力が衰えて筋肉量が減っていくことも要因の一つです。いずれは、食事すること自体もままならなくなります。

見た目が大きく変化することになるため、最も分かりやすい老衰死の前兆と言えるでしょう。

活動的な時間が減る

最後に、脳機能の低下によって活動的な時間が減ることが前兆として挙げられます。病気でなくとも、味覚や臭覚が低下し食事を楽しく美味しく感じることも低下します。

重ねて身体機能も低下しているので、悪いところはどこもないにも関わらず、一日の多くを寝て過ごすことになります。老衰が進むことで、自分の力で食事を摂ることも難しくなるでしょう。

老衰死に生命保険は適用される?

ここまで、老衰死はどういった状態を指すのか、そして老衰死の前兆はどこで見分けることができるのかという点について解説をしてきました。ここからは、老衰死の場合に生命保険は適用されるのか、という点について解説します。

老衰死に生命保険は適用される!

厚生労働省の分類上の『病死及び自然死(老衰死)』は、死亡保険金の給付対象です。医師が確認して、臨床医学的にも法医学的にも「自然な死」つまり病死でなかったとしても死亡保険金の給付対象となります。

生命保険の死亡保険金の受け取りの流れ

まずは、死亡保険金受取人が保険会社へ連絡をし、死亡保険金請求のための所定の書類を取寄せてください。

つぎに、届いた書類に必要事項を記入し保険会社へ返送します。ここでの注意は、役所や病院からの書類も必要となる点です。
一般的に必要とされる書類は以下の通りです。

  • 死亡証明書(生命保険会社所定の書式があるケースが多いため、確認が必要です) 病院から取り寄せ
    ※死亡診断書や死体検案書のコピー提出で代用できる場合もあります
  • 住民票(被保険者の死亡記載のあるもの) 役所より取り寄せ

他にも死亡保険金受取人の本人確認書類の写しを提出する場合や、印鑑証明書が必要な場合もあります。

なお、死亡保険金受取人が複数指定されている場合や、受取人がすでに死亡しておりその後再指定がないままに被保険者が死亡してしまった場合、通常の手続きとは異なり別途追加で書類提出が必要となります。

生命保険が適用されない4つのケース

告知義務違反があった場合

生命保険に加入するときに、被保険者が自身の健康状態や職業などを保険会社に伝えるために記入する書類を告知書と言います。

被保険者が告知する際、故意または重大な過失によって事実を告げなかったり、事実でないことを告げたりした場合は、「告知義務違反」となり、保険会社は保険契約を解除することがあります。

保険金を請求したが、告知しなかった病気が原因での死亡だったため死亡保険金が支払われないということもあります。

受取人による殺害が行われた場合

受取人による殺害が行われた場合、当たり前ですが死亡保険金は支払われません。

加入から早期に自殺した場合

責任開始日または復活の日から一定期間内(1~3年)に被保険者が自殺した場合には死亡保険金は支払われません。

危険地帯に自ら出向いて死亡した場合

被保険者に重大な過失がある場合は死亡保険金が支払われないことがあります。

老衰死を迎える前に確認したい 保険金の受取人

ここまで、老衰死に生命保険は適用されることや、その受け取り方、また保険金が支払われないケースについて解説してきました。

ここからは、死亡保険金受け取りの際に重要になってくる保険金の受取人について、解説します。

死亡保険金の受取人とは

生命保険金の受取人は、文字通り被保険者が亡くなった後に死亡保険金を受け取ることになる方を指します。死亡保険金の受取人は、契約当初に契約者が指定します。

ただし、誰でも死亡保険金の受取人に設定できるというわけではなく、死亡保険金の受取人の範囲には制限があります。

死亡保険金の受取人の範囲は、基本的に法律上の配偶者または2親等以内の血縁者です。

  • 配偶者
  • 1親等(親・子)
  • 2親等(祖父母・兄弟・姉妹・孫)

が該当します。

ただし、何らかの事情で該当する人を受取人に指定できない場合は、保険会社によっては3親等内の血縁者(叔父・叔母、甥・姪)を受取人に指定することが可能な場合もあります。

受取人は遺言でも変更できる

死亡保険金は保険契約に基づき受取人が受け取るものであり、受取人固有の財産として考えることができるため、遺産分割の対象となりません。このことから原則として遺産分割協議書への記載は不要ということになります。

しかし、死亡保険金の受取人を変更する旨の内容が遺言書に記されていた場合、支払時に指定されている受取人に死亡保険金が支払われる前であれば、保険会社はその遺言で変更された受取人に保険金を支払うことになります。

死亡保険金にかかる税金3パターン

被保険者が死亡した場合に発生する死亡保険金は、個人が受取った場合には税金の対象となることがあります。どの種類の税金に該当するかは保険の契約形態、つまりは保険の契約者(=保険料負担者)、被保険者(=保険対象者)、および受取人の関係によって決まります。

課税される可能性がある税金は次の3種類になります。

①相続税

契約者=被保険者≠受取人(相続人)の場合
例えば、契約者(夫)、被保険者(夫)、受取人(妻)

②贈与税

契約者≠被保険者≠受取人の場合
例えば、契約者(祖父)、被保険者(父)、受取人(子)

③所得税

契約者=受取人の場合
例えば、契約者(子)、被保険者(父)、受取人(子)

となります。具体的な計算についてはこちらの記事も参照ください。

生命保険の受け取りにかかる相続税はいくら? 知って得する事前対策! 生命保険の受け取りにかかる相続税はいくら? 知って得する事前対策! 生命保険の受け取りに関わる相続税について、具体例を交えながら詳しく解説し、相続税対策に有効な生命保険等の非課税枠や、誰を生命保険の受取人にすると大きな効果につながるのかについても理解することができます。

まとめ

ここまで、老衰死の定義やその前兆となる症状、及び生命保険の適用の可否について解説をしてまいりました。医療が日々進化し続け、充実している現代において老衰死は身近なものになりつつあります。

どういった最期を迎えられるのが望ましいのか、ぜひ一度ご家族で話し合いをされてみると良いでしょう。

その際、保険に関する困り事が出てくるかと思います。そんな時は保険のプロであるFPに相談してみてはいかがでしょうか。

執筆者

秋吉 淳二(ファイナンシャルプランナー)

1988年大学卒業後、製薬会社に就職。その後、1999年に外資系生命保険会社に転職。2008年に現職。楽しい職場で楽しく仕事を続けていることに感謝している今日この頃。皆さんにもこの楽しさが伝わるといいなと思っています。
■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士AFP資格
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