子どもが生まれると将来のために学資保険を検討される方は少なくないでしょう。しかし、数ある学資保険の中からどのようなポイントで選べばいいのか迷ってしまいますね。
また「学資保険」という名の商品以外でも子どもの教育資金準備に適した保険商品があるのをご存じでしょうか?
今回は学資保険の選び方のポイントや、学資保険以外で教育資金を準備するために使える商品についてそれぞれのメリット・デメリットなどを解説します。
この記事を読めば、ご自身にあった教育資金準備商品がはっきりと分かるでしょう!
そもそも学資保険とは?
学資保険とは、子どもの学資金(教育資金)を準備するための貯蓄型の保険のことです。
毎月決まった額の保険料を払うことで、子どもの成長に合わせた進学準備金や学資金を受け取ることができます。
では、教育資金を学資保険で準備することでどういったメリットがあるのでしょうか?大きく分けて次の2つのメリットがあります。
メリット1:お金が積立てられ、銀行預金より利率が良い場合が多い
メリット2:契約者(一般的には親)が万が一の場合でも、教育資金を準備出来る保険機能がある
せっかく子どもの教育資金を準備するのであれば、より効率良く準備したいものですよね。
なお、学資保険については下記記事でも詳しく解説しておりますので是非お読みください。
学資保険の選び方 4ステップ
では学資保険の選び方について、具体的にステップ毎に解説していきます。
受け取り時期を決める
最初のステップは、進学準備金や学資金の受け取り時期を決めることです。
保険満期は、子どもが18歳の大学入学時とするのが一般的です。
ただ、18歳時に一括で受け取るだけでなく、中学(12歳)・高校(15歳)・大学(18歳)と各進学時に分割で受け取る方法、18歳~22歳の大学通学期間中に分割で受け取る方法なども選べます。
中学、高校から私立も想定したい…… 大学は理系など費用が掛かっても大丈夫なように準備をしたい…… など家庭のライフプランに合わせて受け取り方法を選ばれると良いでしょう。
払込期間を決める
保険料の払い込み期間もポイントの一つです。全期払(保険満期まで払い込み)のほかに、10年払、15年払など払い込み期間を短く設定する方法もあります。
払込期間を短くすることで、返戻率(へんれいりつ。支払う保険料の総額に対し受け取る満期保険金等の総額の割合)を高める効果があります。ただし、その分一月当たりの保険料負担は大きくなります。生活をする中で保険料支払いが厳しくなっても途中で払込期間を変更することはできませんので、家計に無理のないよう契約時の保険料設定にご注意ください。
また手元資金に余裕がある場合は、保険料総額を一括で払い込むことも可能です。その場合、満期時の返戻率は分割で支払うより通常良くなります。
払い込む保険料を決める
3つ目のステップとして、満期時にいくらの満期保険金を受け取るかを設定し、月々に支払う保険料額を決定することが挙げられます。
前述のように、払込期間や満期時までにいくら準備したいかで、月々支払う保険料は変わってきます。単に安い方がいいということではなく、しっかりと準備するにはそれなりの保険料負担を求められます。
また1人目の子どもの場合、2人目、3人目も同様に準備してあげることを想定して予算組みする必要があります。
一方、必ずしも子どもの教育資金をすべて学資保険で準備する必要はありません。仮に大学4年間分で総額600万円を18年間で準備するには、単純計算で月々約27,000円程度の積み立てが必要となり、子どもが2人なら2倍、3人なら3倍貯めなければならず、若い方には大きな負担となります。
そもそも子どもが生まれた瞬間に将来の進学先が決まっている訳ではありませんから、明確にいつ・いくら必要になるか分かりません。学資保険積み立てと銀行ほか金融機関での積み立てを併用されると良いでしょう。
具体的には、以下の3ステップで考えてみると良いでしょう。
①学資保険で総額いくら積み立てたいのか? 例)18歳時に総額300万円貯めたい…… など
②月額はいくら支払えるのか? 例)子ども2人を計画しており、全体予算を月額3万円で考えると1人目に掛けられる保険料は月額1.5万円かな…… など
③上記①、②から逆算される払込期間を設定する。
または②月額支払額と③払込期間を先に決めてしまい、①総額いくら積み立てるかはその結果次第として、先々余裕が出たら積み増しするという形でも良いでしょう。
保険は一旦契約をスタートしてから途中で解約・減額すると不利益を被ることがあります。子どもの教育費をしっかりと用意してあげたいという想いもあると思いますが、予算を確認しながら無理なくバランス良く準備していきましょう。
特約を決める
4つ目のステップとして、学資保険の主契約に付加する特約を決定するということが挙げられます。
特約を付けることで保障を手厚くすることはできますが、当然その分の保険料は上がります。特約保険料は一般的には掛け捨てですので、必然的に返戻率は下がります。必要以上の手厚い保障は家計を圧迫し資金効率を悪くしますので本当に必要な特約なのか判断して加入しましょう。
以下、代表的な特約をご紹介していきたいと思います。
保険料払込免除特約
契約者(一般的には親)が死亡した場合や所定の高度障害状態となった場合に、その後の保険料支払いが免除される特約です。これにより親が万が一の場合でも満期保険金・お祝い金等を受け取ることができます。
本特約は、学資保険の根幹の部分となり基本的に自動付帯されます。
医療保険特約
子どもが病気やケガで入院・手術をしたときに、給付金を受け取ることができる特約です。
学資保険と合わせて手軽に掛けられるメリットがありますが、満期を迎えれば保障は無くなります。
また多くの自治体が子どもの医療費助成制度を持っており、一定年齢までの医療費負担ゼロの自治体も少なくありません。本当に必要な特約なのか、メリットはあるのかしっかりと判断しましょう。
育英年金特約
契約者(一般的には親)が死亡したり、所定の高度障害状態となった場合に育英年金を受け取ることができる特約です。学資金というよりも親のお給料を保障するようなイメージです。
親が死亡保険に加入している場合、保障が重複してしまいますのでご注意ください。
学資保険の選び方 3つのポイント
前章では、学資保険の選び方のステップを解説しました。この章では選び方のポイントをご説明します。
返戻率の高さ
学資保険に限らず、積立型の保険で一番確認したいポイントの一つが返戻率です。
返戻率は以下の計算式で求められます。
返戻率(%) = 受け取る満期保険金等の総額 ÷ 支払う保険料の総額 × 100
返戻率が100%を超えれば、支払った保険料総額より受け取る満期保険金額等の方が多いことになりますし、100%を下回る場合は少なくなる、つまり元本割れして戻ってくることになります。
現行の学資保険の返戻率は100~105%程度が標準的な水準かと思います。商品によっては元本割れしてしまうものもありますので、選ぶ際は十分に確認してください。
また前章でもご紹介したような特約をどこまで付保するのか、或いは保険料の払込期間によっても返戻率は大きく影響を受けます。
当然、返戻率は高い方が嬉しいわけですが、特約の要・不要、無理のない月額保険料など全体の保障内容と支払のバランスを見て判断しましょう。
お祝い金の有無
学資保険によっては、進学の節目ごとに「お祝い金」と呼ばれるお金をもらえるものがあります。中学校、高校の入学時に必要となる指定の制服やカバン、体操着、帽子、上履き等々の学用品を購入するのに役立ちます。
また据え置き制度というものがあり、その時にお祝い金を必要としなければ受け取らず保険会社にそのまま預けておくことも出来ます。預けた場合の利率は保険会社へご確認いただけると良いですが、銀行に預金するよりは高いことが多いです。
お祝い金として分割で受け取った場合と大学入学時に一括で受け取る場合とでは、受け取り総額が同じだとしても返戻率(払込保険料)が変わりますので、その点はご注意ください。
保険金の受け取り方法
学資保険で受け取れるお金(学資金)には、小中高の進学時のお祝い金、大学進学時に一括で受け取る満期保険金、大学入学から各進級時にも受け取る学資年金などがあります。
いずれの場合でも、勝手に銀行口座へ振り込まれる訳ではなく、保険会社へ請求する必要があります。
概ね、満期保険金の場合は満期の2ヶ月ほど前に、進学時のお祝い金などは前年の11月前後に保険会社より案内が郵送されます。その案内に従って保険会社へ連絡すると請求関連書類が郵送されてきます。
請求書ほか必要書類を保険会社へ返送し、不備無く受理されて初めて学資金(満期保険金等)が銀行口座へ振り込まれます。場合により実印や印鑑登録証明書も必要となることもありますのでしっかりと確認して対応してください。
また学資金(満期保険金等)の受取方法によって課税される税金の種類も変わってきます。一時金で受け取る場合は一時所得、年金形式で受け取る場合は雑所得として課税処理されますので、この点もご注意ください。
学資保険を選ぶ上での4つの注意点
学資保険を検討するにあたって事前に知っておきたい注意点が数点挙げられます。ここからは、大きく4つの注意点について順を追って解説していきたいと思います。ここでご紹介する注意点を念頭においた上で、本当にご自身にとって学資保険がベストな選択なのか再度検討してみましょう。
中途解約では元本割れする可能性がある
第一の注意点は中途解約のリスクです。保険期間満了(満期)前に解約すると解約返戻金として受け取るお金は、それまでに払い込んだ保険料総額よりも少なくなる可能性が高いです。
従って、最後まで続けられる無理のない保険料の範囲でスタートされることをおススメします。
契約者が死亡してもすぐには満期保険金を受け取れない
学資保険の保険金は死亡保険金ではなく、子どもの教育のための学資金です。
つまり、学資金(満期保険金等)を受け取れるタイミングは、進学時や大学入学時など、あくまで契約に基づく形となります。
契約者が死亡し、経済的に厳しくなったから保険期間満了(満期)前にお金を受け取るとなると、学資保険を中途解約することになり、その場合受取額が目減りしてしまう可能性もあります。
流動性が低い
また学資保険の積み立ては銀行の預金とは違いますので、出し入れ自由ではありません。
つまり、急にまとまった現金が必要になったからといって簡単に引き出せません。
前述の通り、途中で解約をしてしまう場合は支払った保険料に対して受け取る金額が目減りしてしまうことがほとんどです。契約者貸付という制度を使う方法がありますが、利息が付いてしまいます。学資保険での積み立ては流動性が低いことを理解しておきましょう。
物価の変動に対応できない
学資保険はほとんど円建て商品であり、現状ではそれほど返戻率が高いとは言えません。
実際にそのお金を使うのは15年先、20年先となる訳で、その間に大きくインフレに振れたとすると、せっかく資金が増えてもそれ以上に物価が上昇しているケースもあります。
学資保険の選び方に関するQ&A
学資保険のおすすめの加入時期は?
学資保険はいつ入ればいいのか?
おススメは、「できるだけ早く」です。
そもそも学資保険には加入可能期間があり、0歳~7歳までが一般的です。8歳を超えても加入可能な商品もありますが、選択肢は限定されてしまいますのでのんびりし過ぎないようにしましょう。
ちなみに、生まれる前でも、出産予定140日前から加入可能な商品も出ておりますので、早めに情報を集めておきましょう。
子供の学資を貯める他の方法はあるの?
ここまで、「学資保険」として販売されている商品の選び方をみてきましたが、実は、ほかの保険商品でも代用することができます。
学資保険の目的は、「お金を積み立てること」と「保障機能を持つこと」ですから、この二つの目的を果たせればいいわけです。
例えば「終身保険」や「養老保険」がそれに該当します。特に終身保険は、返戻率や保障額の高さから我々FPが案内する学資保険の代用商品としてよく利用されます。
終身保険を学資保険代わりに使う時には、保険料払込期間をできるだけ短くするなど、ちょっとした工夫が必要です。
例えば10年払や15年払にすることで、子どもの大学進学時には返戻率が100%を超えてくることが多いです。
また終身保険には満期がありませんから、積み立てられたお金をいつ使うかは親の裁量で決めることができるのもメリットです。
最近ですと外貨建ての終身保険を使ってより運用性を高める方法を選ぶ方も増えてきておりますので、固定観念に囚われず広い視野で選んでみてください。
ここで念のため、学資保険と終身保険それぞれの特徴をまとめたいと思います。
学資保険 | 終身保険 | |
---|---|---|
保険金 | 進学時の祝い金や満期時の学資金 | 何事もなく進学時に使う場合は解約返戻金、契約者死亡時は死亡保険金である |
税金 | 一時所得、もしくは雑所得に対する所得税 | 解約返戻金は一時所得に対する所得税、死亡保険金は相続税(契約形態による) |
保険金額 | 何事もなく満期を迎えた場合でも、契約者途中死亡した場合でも受け取る金額は同じ | 契約者死亡時に受け取る金額(死亡保険金)は、学資保険と同じ保険料で比較すると大きくなる(保障性が高い) |
保険金 受取 |
契約時に保険金受け取り時期を決めるため、忘れていても保険会社より時期が来たら案内される | いつ・いくら使う(解約する)かは、契約者の裁量で解約請求(一部解約含む)して使う |
契約時期 | 出産後や、出産予定140日前以降 | いつでも可能。場合によっては、1人目のタイミングで2人目、3人目も合わせてスタートさせることで返戻率を高めることが可能。 |
商品数 | 選択可能な保険種類は限定されている | 商品数は比較的多く、選択の幅が広がる |
私の経験上では、決めた額を決めたタイミングできっちり受け取りたい方は学資保険、自分自身の裁量や他の保険・資産などと総合的にコントロールしたい方は終身保険を選ばれる傾向にあるように感じます。
まとめ
今回は学資保険というテーマでその選び方や加入時に確認すべき事項について解説してきましたが、決めなければいけないことが多く困惑される方も多いと思います。
また教育資金はすぐに貯まるものではありません。
子どもにどういった教育環境を与えていくかは、親として重大な責任です。
ライフプランに沿って計画的に準備する仕組み作りが大切です。そんな時は『保険のプロ』であるFPに相談してみてはいかがでしょうか。