生命保険に関する3つの予定率から導き出された数字と実際の状況に差があったとき、余剰金が生じるともらえるのが配当金です。中には、これが無い保険もあることを知っていましたか? 一体、どんなものなのか見ていきましょう。
生命保険に関する3つの予定率との差(差益)とは
生命保険の保険料はどのように決まるのでしょうか。生命保険の保険料は、一般的には予定死亡率・予定利率・予定事業費率という3つの予定率にもとづいて計算されています。では順番にみていきましょう。
過去の統計をもとに男女別・年齢別の死亡者数を予測し、将来の保険金の支払いにあてるために必要な保険料を算定しますが、この計算に用いる死亡率を予定死亡率といいます。実際の死亡率とこの予定死亡率との差が死差益(損)になります。
利差益とは予定利率により見込んでいる運用収益を実際の運用収支が上回る状態に発生します。下回る場合は利差損となりいわゆる『逆ざや』と言われる状態となります。
費差益とは予定事業費率によって見込まれた事業費よりも、実際の事業費が少なくてすんだ場合に生ずる利益のことをいいます。あらかじめ差し引いた経費と実際の運用コストの差が費差益(損)となります。
保険料は3つの予定率をもとに計算されていますが、実際には予定したとおりの死亡者数、運用利回り、事業費になるとは限りません。予定と実際の差によって生じた損益を集計し、利益が生じた場合にご契約者に還元するものが契約者への配当です。
つまり、契約者への配当は、予定率を用いて計算された保険料を実績にもとづいて事後的に精算するという性格をもっており、預貯金の利息や株式の配当とは異なります。
出典:(社)生命保険協会発行「生命保険会社のディスクロージャー虎の巻」 2016年版
「配当」で見る生命保険のタイプ
有配当タイプ
剰余金の分配が行われる保険を有配当保険といい、毎年の決算において、3つの予定率(予定死亡率、予定事業費率、予定利率)と実際の率との差によって生ずる損益を集計し、剰余金が生じた場合に配当金として分配する仕組みの三利源配当タイプの保険や、予定利率と実際の運用成果との差によって生じる損益を一定年数毎に通算し、剰余金が生じた場合に配当金として一定年数毎に分配する仕組みの利差配当タイプの保険などがあります。
出典:(社)生命保険協会発行「生命保険会社のディスクロージャー虎の巻」 2016年版
無配当タイプ
保険料を安くする代わりに、剰余金の分配が行われない保険のことをいいます。これは、保険の配当の有無による区分で、配当金がありません。現在、無配当定期保険や無配当終身保険、無配当養老保険、無配当学資保険、無配当医療保険などがあります。
無配当の保険のメリット
保険料
無配当の保険は、その名の通り、配当がないタイプの保険です。利差益・死差益・費差益がどれほど発生しても、配当はありません。しかし配当がない分だけ、有配当の保険と比べると、保険料が割安になっています。
また、定期保険の保険金額で考えますと、同じ保険料、同じ保険期間であれば有配当定期保険より無配当定期保険のほうが保障額が大きくなります。
いくら出るか分からない配当金に期待するよりも、今支払う保険料の負担を抑えたいという方には無配当型の保険のほうがいいのかもしれません。
保険期間
保険期間は、無配当の保険か有配当の保険かによって何か違いが生じるものではないと考えてよいと思います。
自動更新
自動更新に関しても、無配当の保険か有配当の保険かによって違いが生じるものではありません。自動更新は、保険期間が10年や20年といった年満了のものは、いったん保険期間が満了しても、保険契約者側から特に申し出がない限り、保険契約は80歳まで自動的に更新されます。
自動更新の最大のメリットは、更新時の健康状態を問わず無条件に更新することができることです。
更新時に大きな病気等で体調が悪い状態であっても、更新することが可能です。デメリットは、更新のたびに保険料が上がることです。
これは契約時の保険金額のまま更新した場合の話になります。更新の直前までに保険金額を減らすことで、保険料を減らすことは可能です。
まとめ
今回は配当という視点で保険をみてきましたがどうでしたでしょうか。有配当保険と無配当保険では、無配当保険の方が配当金を出さないために保険料が安く抑えられることが分かります。
しかし、それだけで有配当保険より無配当保険のほうがメリットがあると考える訳にはいきません。また有配当保険の配当金は、景気の影響を受けやすくインフレ時には配当金が増額、デフレ時には配当金が減額します。
皆様が保険を検討される時に、どのような期間、どれくらいの大きさの保障が必要かを考え、その保険は配当があったほうがいいのか、またはないほうがいいのかを考えるのが大事ですね。
どのような商品を選ぶとどのような違いがでるか分からない時はファイナンシャルプランナーに相談してみてください。いろいろな視点からの保険選びの参考になると思います。