通販や訪問販売などでは、一定の期間内に購入を取りやめる「クーリングオフ」制度がありますが、これは生命保険にも適用されるのでしょうか?
また、そのやり方はどのようにしたらいいのでしょうか?
一緒に確認していきましょう。
クーリングオフの基礎知識
消費者保護やコンプライアンスの観点から、特に生命保険のように複雑で理解しにくい金融商品では、繰り返し申込意向の確認や重要事項の説明など、複数のプロセスを経た上で申込・契約に至ります。
それでも、
- 営業マンの熱弁を受けて申込んだものの、冷静になってみて、必要ないと考えが改まった
- 担当者に勧められるまま、何となく申込んでしまった
- 一旦は、自身の意向通り加入したものの、数日後、家族に報告した結果、加入を取り消したくなった
といった経験をされた方はいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで利用できるのが、「クーリングオフ」という制度です。
どんな制度?
この制度は、事業者が突然訪問してきたり、電話をかけてきたりして不意打ち的に勧誘され、よく考える時間もなく契約させられたような、訪問販売や電話勧誘販売などの不意打ち性の高い取引やマルチ商法、内職商法などの複雑な取引について、特定商取引法で規定されている消費者利益の保護を目的とした制度です。
「Cooling-off」と書くように「冷却期間を置く」。
つまり、申込や契約後に冷静になってみて「申込を撤回したい」、「契約を解除したい」と思った時に、無条件かつ一方的に契約を解除できる制度となってます。
クーリングオフできる期間
クーリングオフが可能な期間は取引形態や保険会社によっても違ってきます。
とても大切なポイントですので、確認していきましょう。
1.クーリングオフ可能期間
クーリングオフ可能期間は、原則8日以内と捉えて頂ければ間違いありません。
よって、申込を撤回するのであれば、早めに実行に移しましょう。
一方、8日を過ぎてしまったらダメなのかということ、そうとも限りません。
保険会社によっては、期間を15日以内や、長いところでは31日以内に設定しているところもあります。
2.クーリングオフ期間の起算点
では、その期間はいつからスタートするのか。
原則は、「クーリングオフに関する書面を受け取った日」または、「申込日」のいずれか遅い日となります。
申込んだ日を1日目に算入しますので、1月1日の申込であれば、1月8日までがクーリングオフ可能期間となります。
しかし、これも保険会社により違い、申込日の「翌日」を起算日としているところもあります。
この場合ですと、1月1日申込で、翌1月2日からスタートし、8日後の1月9日までが可能期間となります。
詳しくは、注意喚起情報・ご契約のしおり・約款などに書かれておりますし、見当たらない場合には、各保険会社のお客様窓口へ問合せいただくのもいいと思います。
生命保険のクーリングオフ
生命保険の場合には、生命保険なりの特殊条件が入ることがありますので、それらも合わせて確認したいと思います。
特に、そもそもクーリングオフ制度の対象外となるケースもありますので、注意してみておきましょう。
クーリングオフできないのはどんなとき?
クーリングオフ制度を利用できない場合、認められない場合として、以下のようなケースがあります。
1.自らの意思をもって、積極的に行った契約
- 過去の健康診断結果ではなく、保険加入のために改めて自らの足で医師の診査を受けに行った場合
- 保険会社や代理店へ自ら出向いて行った契約の場合
- 申込者が自ら指定した場所で申込手続きを行った場合
2.個人間ではなく、会社間の契約
- 事業、営業を目的とした契約の場合
- 法人・団体契約の場合
3.ほか
- 保険期間が1年以内の場合
- 住宅ローンの団体信用生命保険など、担保を目的とした契約の場合 など
クーリングオフの申出方法
クーリングオフの申出は、あくまで書面で行う必要があります。とはいっても、特にフォーマットが用意されている訳ではありませんので、ハガキや手紙などで準備頂く必要があります。
その場合でも、ただ『辞めたいです』と書かれているだけでは受け付けて貰えません。
一般的に必要な項目を確認しておきましょう。
必要項目
- 申込撤回意思を伝える一文
(例:私、○○○○は、以下の契約申込を撤回(クーリングオフ)します) - 契約者名、および申込印の押印
- 被保険者名
- 契約者住所、電話番号
- 申込日
- 申込保険の種類
(例:終身保険、医療保険、がん保険 など) - 保険証券番号(分かれば)
- 契約取り扱い保険会社、または代理店名
なお、必要項目も保険会社により違うことがありますので、こちらも詳しくは、ご契約のしおり・約款などをご確認ください。
ここで大切なポイントとして、クーリングオフは、郵便消印が期間中であれば、保険会社への到達が期間を超えても有効ですので、覚えておいてください。
- 一般の契約の解約:到達主義
(意思が保険会社に到達したときに効力が生じる) - クーリングオフ:発信主義
(意思が発信されたときに効力が生じる)
クーリングオフ時に注意すべきこと
自分の意思をもって購入したものを、「なんだか、思っていたのと違う・・・」といって、何でもかんでも利用できる制度ではありません。
自身の意思に反して申込・契約をしてしまった場合に活用する制度です。
クーリングオフはあくまでも最終手段
ここまでクーリングオフ制度について見てきました。上記でも述べました通り、クーリングオフ制度は何でもかんでも利用できる制度ではありません。
クーリングオフ制度があるからと安心するのではなく、あくまでも最終手段と考え、原則的にはクーリングオフ制度を使わずに済むように、普段から契約の締結や商品購入を決断する前に、自己防衛しておくことが、より重要です。
クーリングオフ期間が過ぎてしまったときの対処法
では、クーリングオフ制度期間が過ぎてしまった場合の対処法はあるのか?
保険契約が成立する前であれば、仮に保険料を払い込んでしまったあとでも、申込を撤回することで保険料が返金される可能性はあります。
この申込の「撤回」というのは、ご自身の保険申込の窓口となってくれた営業担当者などへ事情を説明し、内部的な動きで処理をしてもらうようになると思いますが、これも確実に撤回できるという保証はありませんので、改めて申込の段階でクーリングオフ制度の期間を確認することを強くオススメします。
即解約をして費用を最小限に抑える
契約が成立してしまったあとは、「撤回」ではなく、「解約」という処理になります。
その場合には、契約形態や保険会社にも寄りますが、支払った保険料のうち、未経過保険料として日割りや月割りでの返金、場合によっては1回分の保険料は丸々返金されない場合もあります。
代わりの保険商品が決まってから乗り換える
申込内容に納得がいかず、クーリングオフも間に合わず、少しでも早く解約したい思いもあるかもしれませんが、一方で気を付けたいのは保障を切らさないことです。万が一は、この瞬間にも起きてしまうかもしれません。
今度こそ納得のいく申込となるようにしっかりと検討いただいた上で、次の保険契約への切り換えをしたいものです。
まとめ
クーリングオフ制度を利用するには、条件がうるさかったり、書面での申請が必要など、面倒も多いです。
保険会社によっても求められる条件が違うため、条件が満たされないとクーリングオフ対象外となることもありますので、しっかりと確認しておきましょう。
そもそもクーリングオフせずに済むのが一番ですので、営業マンの饒舌なプレゼンテーションに胸を熱くしても、頭は冷静(Cool)にして申込判断をするようにしましょう。