不妊治療に不安をお抱えではありませんか?
不妊治療についての相談を受けることは私の仕事柄少なくありません。
以前は、
「不妊治療の費用が高額でこれ以上続けるかどうか悩んでいる」
「これから不妊治療を行うと高齢出産となり、出産した場合にその後のライフプランの変化が心配」
という相談を多く頂きました。
しかし、ここ数年の相談ではその内容が変化していて
「不妊治療でお勧めの病院はありますか?」
「不妊治療は高額と聞いていますので治療を始める前に加入したほうが良い保険はありますか?」
「結婚して間もないですが、子供が出来ない期間が長くなるより早めに治療して計画的に妊娠したいのですが・・・」
というように、以前と比べて不妊治療についてより詳細な相談を受けるようになりました。
それは『不妊治療』という言葉がずいぶんと浸透してきたことに加え、兄弟姉妹や友人、または仕事の同僚など身近な人に治療をしている方が出てきたことで、自分事のように捉える方が増えたからなのかもしれません。
自然妊娠を目指しているがなかなか妊娠できず不妊治療に踏み切ろうと思っている方、自然妊娠を目指しながら不妊治療も同時に進めていく方、最初から不妊治療を行う方など、不妊治療をされる理由もタイミングも様々です。
いずれにしても不妊治療と聞くと、【高額な費用】というキーワードが浮かんでくるのではないでしょうか?
この記事を読んでおられる方でも、不妊治療では一般的に保険がきかず費用が高いというイメージをお持ちなのではないでしょうか。
後述しますが、実は一部の治療では保険が適応され、国からも公的制度を利用して助成金をもらうことができるのです。しかしながらやはり現実は不妊治療=高額治療費というイメージは払拭されないですよね。
この記事では、不妊治療とはどんな治療なのかという点からスタートし、かかる費用やその費用をカバーする国の公的制度について解説したのち、不妊治療に備えることができる民間保険について解説していきたいと思います。
この記事を読んでいただくことにより不妊治療に関する基礎的な知識が得られ、どのように備えるべきなのかという点についてもしっかりと分かります。
不妊治療とは
不妊治療とは
『不妊治療』とは自然妊娠が困難な夫婦が、妊娠することを目的に行う治療のことを言います。
今では、テレビで有名な夫婦が不妊治療を受けて出産したり、治療した方の体験がインターネットやSNSによって投稿されることが増え、『不妊治療』という言葉はよく耳にするようになりました。
不妊治療の分類
不妊治療は特定の1種類の治療を指すわけではなく、男女共に行う検査でそれぞれの現状を知ることから始まり、タイミング法、人工授精、体外受精と進んでいきます。
ここでは、一般的な不妊治療の種類を時系列でご紹介します。
タイミング法による治療方法
タイミング法とは、医師の指導で排卵日前後に性行為をするという方法です。
タイミング法による治療は不妊治療の一番はじめの段階と言えます。
まだ治療という意識はほとんどない状態ではないでしょうか。
人工授精による治療方法
人工授精とは、受精が行われる場所である卵管の膨大部に受精に必要な精子を人工的に届けることで受精を促す治療です。
後述する体外受精とよく混同されますが全く違う方法です。
体外受精より妊娠率は下がるようですが、身体への負担・経済的負担が軽いことから回数を重ねることができます。
妊娠することに対して治療するという実感が湧き始める治療方法です。
体外受精による治療方法
体外受精とは、排卵手術により排卵前に体内から取り出した卵子と精子の受精を体外で行う治療です。
タイミング法や人工授精では妊娠できず自力での受精が難しい方が対象となります。
費用が高額となり、国の特定不妊治療助成事業の公的補助を受けることができます。この点については後ほどご説明いたします。
不妊治療時にかかる費用と利用できる制度
不妊治療には、保険診療と自由診療があります。「不妊治療は高額になる」というイメージは自由診療によるものです。
初期の一般的な治療では健康保険が使える場合もありますが人工受精からは保険適用外となるケースがほとんどです。
ここでは、不妊治療にかかる費用や、費用を減免することができる3つの制度について解説を加えていきたいと思います。
不妊治療時にかかる費用
『不妊治療』というと治療費が高額というイメージですが、実際に病院へ支払う費用はどのくらいなのでしょうか。
さきほど紹介した治療の種類別に見てみましょう。
- タイミング法 健康保険適用 1回数千円
- 人工授精 健康保険適用外 1回1~2万円
- 体外受精 健康保険適用外 1回20~60万円
これらの不妊治療は1回で良い結果に結びつかない場合もあるため、成果が出るまで継続して行うことになります。
結果的に治療期間が長くなり費用も高くなってきてしまうのが実情です。
また、お仕事をされている方であれば、治療期間中に仕事を早退したり有給休暇をとったりすることなどを余儀無くされることもあり、仕事にも影響が出てくることが予想されます。
高額な治療費がかかることだけではなく、治療期間に比例して所得が下がる可能性があることも念頭に置いておく必要があります。
不妊治療を行う際には、肉体的な負担や精神的な負担に加えて、経済的な負担も考慮したいところです。
不妊治療時に利用できる3つの制度
ご紹介した治療の種類別の費用に対して、国が補助してくれる公的制度はどのようなものがあるのでしょうか。
3つの制度をご紹介いたします。
健康保険制度
一般的な不妊治療である初期の不妊治療については健康保険制度が適用されます。対象となる治療については次のようなものが挙げられます。
【対象となる治療】
- ホルモン検査や精液検査、子宮卵管造影検査などの検査
- タイミング法の指導
しかし、健康保険制度が適用される初期の不妊治療については、元の費用がそれほど大きくはないという点については注意するようにしてください。
特定不妊治療助成制度
国の不妊治療に対する取り組みとして特定不妊治療費助成制度があります。
この制度は、体外受精と顕微授精を受けた夫婦を対象に自治体ごとに助成を受けることができるという制度です。
タイミング法や人工授精は対象外となります。
また、この制度の対象者は次の2つの条件を満たしている必要があり、所得制限も設けられています。
【対象者】
以下2項目両方に該当する方
- 特定不妊治療(体外受精及び顕微授精)以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、または可能性が極めて少ないと医師に診断された法律上の婚姻をしている夫婦
- 治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦
【所得制限】
730万円(夫婦合算の所得額)未満
ただし、こちらは都道府県ごとや地域によっても条件や金額が変わってきますので注意が必要です。
例えば東京都では、平成31年4月1日以降に開始した1回の治療について所得制限は905万円と緩和されています。事前にご自身でお近くの役所などに行ってご確認いただくことをお勧めします。
また時限的ではありますが、今般の新型コロナウィルス感染症の影響で所得が急変した場合の所得要件の取扱いについて特別措置が取られていますので対象となるか確認されてみてはいかがでしょうか。
参照:新型コロナウィルス感染症の影響に伴う令和2年度における 「不妊に悩む方への特定治療支援事業」の所得要件の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000639600.pdf
医療費控除
医療費控除とは、1年間で支払った医療費の合計が一定の金額を超えたときに、その医療費をもとに計算した合計金額分を所得から控除することができる制度です。
医療費を控除する仕組みなので、健康保険適用外の不妊治療は含まれないと考えてしまう方も多いのですが、実は不妊治療にかかる薬代や治療費、交通費などほとんどが対象に含まれます。もちろん不妊治療に関してならどのような費用も医療費控除の対象となるわけではありません。
その内容によっては対象外となる事もありますが、医療費控除制度を申請することで、所得税と住民税がそれぞれ減税され、税金の還付を受けることができます。所得税に関しては、減税された分の税金が還付金として返金され、住民税については申告した翌年の6月より減税され、収める税金が少なくなります。
不妊治療に備えるための2種類の保険
不妊治療に対して、上記のような公的制度での補助もありますが、どうしても健康保険適用外の治療となると高額な費用負担が「治療を受けよう」「治療を続けよう」という気持ちを抑制してしまうこともあると思います。
では、公的制度では補いきれない部分について民間の保険でカバーすることも検討してみてはいかがでしょうか。ここでは、不妊治療に備えるための2種類の保険について解説致します。
医療保険
民間の医療保険に加入されている場合やこれから加入される場合、不妊治療で入院や手術を受けた際には入院給付金や手術給付金の支払い対象となるのでしょうか? 医療保険の支払対象となるケースと対象とならないケースを確認しましょう。
※保険会社によって支払い対象も変わりますのでご加入中の保険会社や検討中の保険会社へ確認が必要です。
支払われるケース
不妊症の治療を目的とした入院や手術の場合は入院給付金または手術給付金の支払い対象となります。
例えば、不妊症の検査の結果、医師から子宮筋腫を原因とした不妊症と言われ、子宮筋腫の治療のための入院・手術は支払い対象となります。
支払の条件等については保険会社により違いがありますのでご加入中の保険会社に確認が必要です。
また、不妊治療前に医療保険に加入している場合は、不妊治療を受けたのち異常分娩などにより出産する際には給付金の支払い対象となります。
支払われないケース
多くの保険会社では、不妊治療中に医療保険に加入すると「子宮に不担保(子宮の部位に発生した疾病は支払が免責となる)」という条件が付いてしまうことになります。この条件が付いてしまうと不妊症の治療を目的とした入院や手術の場合でも入院給付金または手術給付金は支払いの対象となりません。
また、不妊治療前に医療保険に加入していても、公的医療保険制度における「医科診療報酬点数表」により算出されない一部の手術および疾病の治療を直接の目的としない手術(人工授精や体外受精)は手術給付金の支払いの対象となりません。
不妊治療保険
民間の不妊治療保険とは、特定の不妊治療をされた際に1回につき一時金(2.5万円~10万円)が保険会社より支払われる保険です。三大疾病保障保険に含まれていたり、医療保険の特約として付加することが出来たりします。
なお、特定不妊治療として給付金の対象となる治療は、体外受精や顕微授精に限られておりタイミング法や人工受精は給付金の支払対象外となっています。
また、不妊治療保険には不妊治療だけでなく加入期間中にお子さまを出産されるたびに給付金が支払われる出産給付金(5万円~100万円)や保険期間満了時に生存されていた場合に満期一時金(100万円~200万円)が受け取れる商品もあります。
不妊治療保険についての4つの注意点
『不妊治療保険』というと不妊に悩んでいる方やこれから妊活しようとしている方には非常にニーズのある保険のように思われるでしょう。
しかしながら、不妊治療保険への加入を検討する際に注意しなければいけないことがあります。ここでは、不妊治療保険に関する4つの注意点をご紹介していきたいと思います。
保険適用がいつからなのか
特定不妊治療に対する保障は、責任開始日より2年を経過した後に保障がスタートします。
不妊治療をすぐにでも始めたい方でも、不妊治療保険に加入してから2年間の不担保期間がありますので加入のタイミングには気を付けたいところです。
また、保険の種類によっては、契約から一定期間内に出産した場合には出産給付金支払いを受けることができないということもありますので注意が必要です。このような保険の場合はすでに妊娠している人がこの保険に加入しても当該出産では給付金を受け取ることはできないのです。
保障の重複が生じていないか
不妊治療保険には現状、不妊治療以外の保障も含まれていることが多いです。
例えば、不妊治療の保障だけが必要な方にも死亡保障やがんの保障が含まれていたりするため、もし現在がん保険や死亡保険に加入されている場合保障が重複してしまうことになります。
不妊治療保険への加入を検討する際には、現在加入中の保険のことも考慮しながら検討する必要があります。
支払い回数は十分か
特定不妊治療に対して支払われる給付金の回数には「最大12回」というような上限があります。このような場合、治療回数が12回を超えると経済的負担が発生することになるので注意が必要です。
治療している全期間を対象に給付され続けるわけではありませんので、加入する際にはトータルでどのくらいの保障が得られるのか把握しておきましょう。
年齢制限に該当していないか
不妊治療保険の加入は16歳~40歳までと設定されていることがほとんどです。晩婚化に伴い、妊活をしている41歳以上の方もいらっしゃいますがこういった方々は不妊治療保険に加入することは難しいと言えます。
また、加入してから2年間は特定不妊治療の保障は不担保になりますので保険に加入する際は計画的な妊活をし、保険担当者に相談しながら検討することが重要です。
まとめ
ここまで、不妊治療とはどのような治療なのかという点からスタートし、かかる費用や国の助成制度について解説してきました。
ならびに不妊治療に備えた民間の保険として不妊治療保険について解説を行ってきました。
ここまでみてきた通り、国による助成制度だけですと体外受精や顕微受精等の多額の治療費を全額カバーすることは困難となります。
そこで、民間の保険会社で保障が受けられるととても安心できるのではないでしょうか。
また、不妊治療は金銭面に注目されがちですが、先ほども紹介したように仕事をされながら不妊治療をしているケースが多く身体的な負担もかかります。そんな家族を支えていくためには家庭内での精神面や生活面での協力も必要となります。
不妊治療により妊娠されると今度は妊婦さんとして、無事に出産したらママとしての生活がスタートします。女性にとって、そして家族にとって生活様式が一変することになります。
お子様が誕生される前の余裕のある時期に、「保険のプロ」であるFPに相談して将来のライフプランニングを行い、家族にとってこれからどのような出費がありどのような保障が必要となるのか保険の見直しも含めて相談されてみてはいかがでしょうか?