生命保険会社から現在加入している保険がもうすぐ更新時期とのお知らせを受け取り、更新後の保険料が大幅に上がることからこの際、現在加入している保険を見直したい…。このようなご相談を受けることがあります。
生命保険の見直しには色々な方法がありますが、ここでは現在加入している生命保険を解約などして、別の生命保険に乗り換える「乗り換え」について取り上げたいと思います。
この記事では、生命保険の乗り換えを検討したいタイミング、メリットや乗り換え前に必ず知っておきたい注意点について解説します。
そもそも生命保険の乗り換えとは
生命保険の乗り換えとは
生命保険の乗り換え(見直し)とは、現在契約している保険を解約もしくは減額等し、新たに他の保険商品に加入することを言います。
生命保険を乗り換え(見直し)することによって保険料が安く抑えられるなどのメリットもありますが、気を付けておきたいデメリットもありますので注意が必要です。
一方、現在契約している保険において保険期間が満了し新たな契約として同じ保障内容で継続することを、生命保険の更新と呼びます。
保険の更新のタイミングでは、大きく分けて「乗り換え(見直し)」と「更新」の2つの選択肢があることを覚えておいてください。洋服に例えるなら新たに買い替えるか、補正で済ますかといったところでしょうか。
生命保険の乗り換えの必要性
生命保険は形のない商品ですから、その内容について加入時点では詳細に理解したものの長きにわたる契約期間中ずっと忘れずに理解し続ける事は、非常に難しいことです。
一定の保険料を長い期間にわたって支払っていくわけですから、定期的にメンテナンスが必要となります。
生命保険の乗り換え(見直し)のタイミングは後述しますが、現在加入している保険を点検確認して保障内容が自分のニーズに合わなくなっているのであれば乗り換え(見直し)を検討してみるのも良いでしょう。
また移り変わる社会情勢や制度などを反映した新しい保険商品が日々開発・発売され続けています。
特に医療保険やがん保険は日進月歩で次々に新しい商品が開発されています。例えばがん保険の内容が入院から通院主体に変わったり、一時金での給付が重視される傾向が強くなったりしていることなどがあげられます。
これはがん患者の入院日数の減少や新しい治療法にフレキシブルに対応できるといった事情を反映した商品開発といえます。
以前に加入した保険と新しい保険を比較検討し、現在の社会情勢や制度によりマッチした保障への見直しも必要かもしれません。
もちろん点検してみて問題がなければ当然ながら乗り換え(見直し)の必要はありません。
生命保険の乗り換えを検討すべきタイミング
ライフステージに変化があったら
生命保険の乗り換え(見直し)のタイミングはいくつか考えられますが、主なものにライフプラン上の変化があった時が考えられます。
- 結婚した時・・・配偶者という守るべき家族が増えます。特に専業主婦となった場合は乗り換え(見直し)を検討するタイミングといえます。
- 子供が生まれた時・・・将来の教育費をはじめ、子供の成長に伴って準備するお金や保障も増えていきます。
- 自宅を購入した時・・・多くの場合「団体信用生命保険」に加入しますので、この場合は重複する保障を減らすという意味で乗り換え(見直し)が考えられます。
- 子供が独立した時・・・扶養家族が減り必要な保障額も減少します。
- 仕事を辞めた時・・・特に定年退職などの場合は退職金や老齢年金を受け取るタイミングでもあり、一般的に必要な保障額は減少します。
- 自営業になったとき・・・会社員から自営業に転職する場合、厚生年金から国民年金へと年金の種別が変わります。それに伴い万一の時の遺族年金も遺族基礎年金のみとなります。死亡保障の増額や収入保障保険の検討など保険の見直しは必須といえるでしょう。
保険の更新時期が近づいたら
現在更新型の定期保険に加入している方は満期の時期が近づくと保険会社から更新の通知が届きます。また担当営業から「更新の時期が近づいているので見直しましょう」といった連絡を受けることがあると思います。
更新後の保険料が上がる場合は保険を見直す良い機会といえます。加入している保険が現在のご自身やご家族の状況にあっているのかをこのタイミングで検討してみることは大変重要です。
誕生日を迎えたら
誕生日を迎え年齢が上がると新たに加入する際の保険料が高くなる可能性があるのでこの時期を生命保険の乗り換え(見直し)の機会にすることも検討してみましょう。
年齢が上がると一般的に病気のリスクも高まりますので保障を増やすことも考慮に入れておきましょう。
年齢が上がる前に乗り換え(見直し)を行っておけば、保険料も誕生日後に加入した場合より安くなります。
なお、保険料が満年齢で決まる保険会社と保険年齢(満年齢の端数が6カ月を超えると1つ上の年齢とみなす)で決まる保険会社がありますので注意が必要です。
生命保険を乗り換えるメリット
保険料が下がる可能性がある
生命保険の乗り換え(見直し)を検討するということは、現在加入している保険会社とは異なる会社の商品も含めていろいろな角度から比較検討することになります。その際、同じ条件の方(性別、年齢)が「同じ保障内容でも他の保険会社の保険料の方が安い」という可能性も生まれてきます。
現在加入している保険会社だけでなく、他社のプランも比較検討することで、たくさんの選択肢の中から自分に適した保障内容の商品を選ぶことができるのが乗り換え(見直し)のメリットです。
特に更新型定期保険の場合は更新時に保険料が上がることがほとんどですが、少しでも割安な商品に乗り換えることで、保険料の上昇を抑えることができます。
保障内容が自分にあったものになる
生命保険の保障内容を乗り換え(見直し)することにより、今のご自身にとって適切な保障内容にすることができるというメリットがあります。
保険に加入した時期とライフステージやライフスタイルが大きく変化している場合、それに伴って必要な保障も大きく変わります。
「子供の教育や自分たちの老後のことを踏まえて、今の保険が果たして適しているのか…」
乗り換え(見直し)は自分と家族の現在から将来に向けてのライフプランをじっくり考える絶好の機会でもあるのです。
最新の保険商品も選択肢に入る
寿命の長期化や医療技術の進歩、社会保障制度の変化により、保険商品も日々進化しています。
必ずしも新商品が優れているとは限りませんが、生命保険を乗り換える際にはそんな現在の社会情勢等を反映した新商品と比較検討することも選択肢となります。
例えば医療保険においては入院の短期化が進んだ結果、日帰り入院から保障される商品が主流となっています。
また、既往症のある方も契約できる緩和型の商品も販売されています。
がん保険においても医療技術の発達に伴い通院で治療を行うケースが増えており、それに伴い通院給付金特約を付帯した商品が増えています。また一時金給付の商品も多く販売されています。
現在加入している保険商品が今の社会情勢にマッチしていない場合も考えられます。
最新の保険商品を検討してみることも選択肢のひとつと考えられます。
生命保険を乗り換えるデメリット
解約返戻金が元本割れする可能性がある
まず確認したいのが、現在加入している保険を契約の途中で解約するとお金が戻ってくるかどうかという点です。定期保険の場合だとほとんど戻ってきませんし、仮に戻ってきたとしても少額のことがほとんどです。
終身保険や養老保険の場合は一般的に解約返戻金がありますが、解約や乗り換えの時期によっては、想定よりも解約返戻金が低い場合があります。
加入後すぐに解約をすると払い込んだ保険料に対して戻ってくるお金がまったくないか、あってもごくわずかです。
特に、貯蓄を目的に終身保険等に加入している場合は契約の途中で解約すると元本割れする可能性が大きいので注意が必要です。
生命保険の乗り換え(見直し)を検討する場合は今入っている保険がどの種類なのか、終身保険や養老保険の場合は解約時の返戻金がいくらになるのか保険会社等に確認してみるのが良いでしょう。
予定利率が下がる可能性がある
予定利率とは生命保険会社が契約者に約束する運用の利回りのことです。生命保険の乗り換え(見直し)前後で、予定利率が変わっている可能性があります。
一般的に同じ保障額でも、予定利率が下がると保険料が高くなり、解約返戻率も予定利率が低いほど低くなっていきます。
また、バブルのころの契約では予定利率5.5%という保険商品もありました。いわゆる「お宝保険」です。
しかし、ここ20年以上は生命保険の予定利率は下がり続けています。現在加入中の保険商品がこの「お宝保険」に該当する場合は、解約、乗り換え(見直し)によってマイナスが生じないか慎重にご判断下さい。
ご自身の現在の契約の予定利率や解約返戻金を把握しておくことも大切ですので担当者に確認してみてください。
お宝保険についてはこちらの記事もご覧になってください。
元の条件より悪い条件での契約となる可能性がある
新しい保険契約を結ぶ際には、生命保険会社に対して健康状態(体況)等の告知が必要になります。
そしてこの告知の結果、引き受けの条件として保険料が割り増しになったり、保障内容が制限されるなどのケースも考えられますので注意が必要です。
最悪の場合には保険に加入できない可能性もありますし、正しく告知した場合でも責任開始前の疾病や不慮の事故を原因とする場合には保険金・給付金が支払われないこともあります。
また、保険料についても生命保険の乗り換え(見直し)時の年齢で計算されるので、同じ保障でも保険料が高くなる可能性があることも留意しておかなければなりません。
一方で、がん保険の乗り換え(見直し)の時は保障が開始されるまで大半の場合3か月(90日)の待ち期間がありますので、新たな保険の保障が開始されるまで既契約のがん保険は解約しない方が安心といえます。
この場合、支払う保険料が2重となりますので家計への負担が増えることになります。
このように引き受けの条件によっては乗り換えで新たな保険に加入し直すよりも、今の保険をそのまま継続しておく方が良い場合も出てきます。
生命保険を乗り換える前に必ず確認したい注意点
新たな保険に必ず加入できるわけではない
上述の通り、新しい生命保険に加入する場合には、大半の保険種類では保険会社に対して現在の体況について告知をしなければなりません。
これを告知義務といいます。告知内容によっては新たな保険契約が引き受けられなかったり、正しく告知しなかったために新たな保険契約が解除または取り消しになったりすることもあります。
したがって今ある保険を解約して新たな保険に加入しようとする際は、ご自身の現在の健康状態が加入の条件を満たしているかを見落としてはいけません。
生命保険の乗り換え(見直し)前の保険加入時に体況上の問題がなかったとしても、現在の健康状態や過去の病歴から保険会社が新たな契約の引き受けを承諾するとは限りませんので、既契約の解約は新たに加入する保険の契約が成立した日以降に行うようにすることが必要です。
これは、万が一必要な保障が確保できなかったり、最悪の場合は保険に加入できなくなった際に無保険状態を発生させないためです。
空白期間を作らないよう重複契約の時期を設ける
生命保険の乗り換え(見直し)で気を付けなければいけないことの一つに保障を途切れさせないということがあります。
保険契約は申し込み、診査、保険料の払い込み、以上3つが無事に完了して成立(保障開始)の運びとなります。
診査が通らない場合や保険料の入金が確認されなければ保険は成立しません。
加入中の保険を先に解約していると、次の保険が成立するまで空白期間つまり無保険の状態になるわけです。
生命保険を乗り換え(見直し)する際はこの無保険の状態を作らないことが重要です。無保険ということはその期間に万が一のことがあっても何も保障されないということです。
このような事態を避けるために乗り換え(見直し)をする際は、必ず先に新しい保険の契約が成立してから元の保険を解約することが重要です。
上述の通り、ほとんどのがん保険では3か月(90日)の待期期間があります。
この間は旧契約を継続しておいた方が安全といえます。責任開始までの90日間は保険料負担が重なりますが、無保険期間を作るリスクを考えると二重に契約しておくに越したことはないです。
契約中の保険をよく見直す
生命保険の乗り換え(見直し)の際、まずは現在加入中の契約内容を十分に確認することが重要です。
確認する主なポイントは保険の種類、保障額と保険料、保険期間、受取人と被保険者等々です。
これらの項目を確認し、次の保険ではどこをどう改善したいのかをよく把握したうえで乗り換え(見直し)を行ってください。
乗り換え(見直し)を勧められた保険で魅力だと感じた内容が、実は今の保険でも実現可能であったということもあります。
生命保険を乗り換える方法と手続き
生命保険商品の乗り換え(見直し)を行う場合は手続きが少し煩雑となりますので手続きについて順を追って説明していきます。
- 新たに加入したい生命保険を決定
複数の保険会社のパンフレットなどの資料を取り寄せ、情報を収集します。知り合いにFPがいらっしゃれば相談してみるのもよいでしょう。じっくり検討の上、ご自身にあった保険を決定します。 - 新たに加入する生命保険の申し込み手続き
決定した生命保険商品の申し込み、告知・診査などを行います。 - 保険契約の成立
告知・診査が通り、保険料を支払うと契約成立(保障開始)となります。 - 既契約保険商品の解約手続き
新たに加入する契約が成立してから、既契約保険の解約手続きに入ってください。
手続きが完了すれば、乗り換えは終了です。
生命保険の乗り換え以外の選択肢
ここまで生命保険の乗り換え(見直し)に関してメリット/デメリットと注意点について解説してきました。
ここまでの解説で、乗り換え(見直し)に対して少し抵抗感がある方もいらっしゃることでしょう。
実は、乗り換え(見直し)以外にも保険料負担を抑えたりする方法は存在します。ここからは、生命保険の乗り換え以外で保険料負担を軽減する4つの選択肢について解説します。
特約のみを解約する
保険の主契約に付いている特約部分を解約することにより、保険料を安くする方法です。
定期特約や入院特約、介護特約などがありますが、これらを解約することにより特約部分の保険料が不要になります。
ご自身の現在の保険に付いている特約がニーズに合っているかどうか一度確認してみてください。
保障額を減らして保険料を抑える
現在の保険の保障を一部解約して保障を減らすことを減額といいます。減らした分の保険料が不要となり、解約返戻金がある保険では、その部分に応じた解約返戻金が支払われます。
ご自身の現在の保険の保障額が適切な額になっているか、今一度確認してみると良いでしょう。
払済保険にする
積立型の保険の場合、その保険に積み立てられている解約返戻金を一時払として残りの保険料に充てることで、それ以降の保険料の支払いをストップさせながら同じ保障期間で保険が継続できます。
これを払済保険と言います。保障額は減り、特約は解約となりますが、それ以降の保険料の支払いは必要ありません。
払済保険についてはこちらの記事もご覧になってください。
契約者貸付を利用する
保険料を抑えるという事とは少し異なりますが、一時的にお金が必要となった時には有効な手段です。
契約者貸付とは貯蓄性のある保険に加入している場合、その解約返戻金の一定の範囲内で保険契約者がお金を借りられる制度です。
したがって、解約返戻金がある契約、例えば終身保険・養老保険・学資保険・個人年金保険等で利用することができます(解約返戻金がある保険商品でも契約者貸付制度の対象外となるものもありますので保険会社への確認が必要です)。
また、借り入れができるのは契約者のみであることと利息が付く点に注意が必要です。
契約者貸付についてはこちらの記事もご覧になってください。
まとめ
生命保険の乗り換え(見直し)について、検討したいタイミングやそのメリット・デメリット、さらには乗り換え(見直し)以外の選択肢についても解説をしてきました。
大切なことは、ご自身が契約している保険の内容を定期的に確認し、ライフステージや家族の現状と照らし合わせて必要な保障をメンテナンスすることです。
そして、その際の一つの選択肢として生命保険の乗り換え(見直し)がある、という点ご理解いただけますと幸いです。
なお、乗り換え(見直し)するべきか否かの判断は非常に難しいかと思いますので、迷ったら『保険のプロ』であるFPに相談することをおすすめします。