ご自身に万が一のことがあった時に、残された家族に様々な保険金等を残すために加入をするのが生命保険です。
「保障は一生涯。そして、解約した際には解約返戻金があり掛け捨てでない。さらに保険料は加入した時のまま上がりません。」
このようなフレーズは、テレビCMをはじめ今ではいたる所で聞くようになりました。これは終身保険の大きな特徴です。
「掛け捨ての保険はちょっと・・・」「途中で保障が終わったら困る」こんなニーズに応える商品として終身保険は生命保険の商品の中でも根強い人気があります。
今回は終身保険の一種である『低解約返戻金型終身保険』について解説していきます。
一般的な終身保険と低解約返戻金型終身保険の違い、メリット・デメリット・活用手段についてご理解いただけるかと思います。
低解約返戻金型終身保険とは?
低解約返戻金型終身保険は、保険料払込期間中に解約すると解約返戻金が通常よりも低くなってしまう代わりに、保険料が低く設定され保険料払込終了後の貯蓄性が高くなる終身保険のことを指します。
この低解約返戻金型終身保険が生まれた背景には、生命保険商品の「予定利率の引き下げ」が大きく影響しています。
予定利率とは、保険会社が契約者から受け取った保険料を運用する際に約束する利率のことです。予定利率と保険料は密接に関係しており、予定利率が引き下げられると特に貯蓄性のある保険の保険料は上がってしまいます。この予定利率の引き下げにより高くなった保険料を少しでも低く抑えるために低解約返戻金型終身保険が誕生しました。
通常の終身保険との違いは?
同じ保険金額、払込期間で比べた場合、低解約返戻金型終身保険の解約返戻金は「通常の終身保険」の一般的に70%となっています。一方保険料は、通常の終身保険と同じ条件にした場合、低解約返戻金型終身保険のほうが割安になります。これは前述の通り払込期間中の解約返戻金を低く抑えているからです。
低解約返戻金型終身保険の3大メリット
「低解約」という言葉から何となくマイナスイメージをもたれる方もいらっしゃるかもしれませんが、低解約返戻金型終身保険にはメリットも存在します。払込期間中の解約返戻金を通常の終身保険よりも低く設定することで、どんなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットに分けて解説いたします。
死亡保障がある
1つ目のメリットとしては、死亡保障を確保しながら資産運用が可能であることが挙げられます。
「低解約返戻金型」という名前ではありますが死亡保障のある終身保険であることには変わりはないので、解約返戻金を用いて資産形成をしながら死亡保障を確保することができます。
保険料が比較的安い
2つ目のメリットとしては、保険料が通常の終身保険と比較すると安いことが挙げられます。
「低解約返戻金型」は、一般的に払込期間中に解約した際の解約返戻金が通常の終身保険の解約返戻金の70%に抑えられています。
このように解約返戻金を低く抑えることにより、同じ保障額で終身保険に加入するよりも保険料を安くできます。
貯蓄性が高い
3つ目のメリットとしては、保険料払込期間が過ぎれば、通常の終身保険よりも少ない保険料となることで、一般的に解約返戻率が高くなることが挙げられます。
特に保険料払込期間を短期払(10年、15年、60歳、65歳など)にした場合、同じタイミングで解約したとすれば、払込期間が短いほど払込期間終了後の解約返戻金の返戻率は高くなります。ただし払込期間が短くなればその分保険料が高くなることにご注意ください。
これは、通常の終身保険でも同じことですが、払込期間中の解約返戻金を低く設定している分、低解約返戻金型終身保険の方が顕著に現れます。
低解約返戻金型終身保険の3大デメリット
ここまで、低解約返戻金型終身保険の3つのメリットについて解説をしてまいりました。
保険料が安く済み、貯蓄性にも優れているのであればいい事づくめではないかとお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、低解約返戻金型終身保険にはデメリットも存在しているのです。
ここからは、低解約返戻金型終身保険の3つのデメリットについて解説します。
途中で解約すると元本割れになる
1つ目のデメリットとしては、保険料払込期間の途中で解約してしまうと、元本割れを起こしてしまうことが挙げられます。
保険料払込期間中は通常の終身保険に比べて解約返戻金が低く設定されているため保険料払込期間終了前に解約すると、受け取れる解約返戻金は通常の終身保険よりも少なく、また払込保険料の総額を下回ってしまいます。ドル建て商品などで為替差益を十分に出している場合を除いて多くのケースで元本割れとなります。
保険の見直しがしにくい
2つ目のデメリットとしては、一度契約をすると保険の見直しがしにくいことが挙げられます。
保険料払込期間中に解約してしまった場合、元本割れをするため、保険の見直しをしにくいデメリットがあります。
なお、保険料の支払いが厳しくなったときや一時的にお金が必要になったときは、解約するという選択肢以外にも契約者貸付等で対応する選択肢もありますので、焦らずに担当者によく相談しましょう。
インフレの影響を受ける
3つ目のデメリットとしては、インフレの影響を受けてしまうことが挙げられます。
低解約返戻金型終身保険は通常の終身保険同様に、加入時に月々支払う保険料や、万が一の際の死亡保険金、そして解約返戻金も決まっている商品がほとんどです。つまり、インフレによりお金の価値が変わっても、それに連動して死亡保険金や解約返戻金が変わることはありません。
将来の解約返戻金額が確定しているのは安心できることかもしれませんが、10年以上先に解約返戻金を元に教育資金や老後資金に充当しようとお考えの場合には、加入している保険の価値が将来大きく変わる可能性もあることは頭にいれておきましょう。
低解約返戻金型終身保険の活用手段
ここまで、低解約返戻金型終身保険のメリットとデメリットについてそれぞれ解説をしてまいりました。加入前には、メリットとデメリットの両面をしっかりと理解した上で慎重に検討するようにしましょう。
ここからは、低解約返戻金型終身保険の活用方法について4つご紹介いたします。低解約返戻金型終身保険の特徴を活用することで、さまざまな形の資産形成を行うことが可能になるのです。
老後資金として
1つ目の活用方法は、老後資金を貯蓄することです。
保険料払込期間を60歳や65歳など退職のタイミングなどに設定することにより解約返戻金を使用して老後資金の準備に使うことができます。解約返戻金は一時金として受け取ったり、年金で受け取ったりとご自身の資金計画に合わせて使用することが出来ます。
教育資金や住宅ローンの負担がありながら一方で死亡保障が必要な期間でも、低解約返戻金型終身保険に加入することで、比較的安い保険料で保障を準備することが出来るのです。
教育資金として
2つ目の活用方法は、教育資金を準備することです。
お子様の将来の教育資金準備に用いられる保険と言えば『学資保険』が有名です。学資保険は、加入のタイミングに期限がある上、満期保険金(学資金)を受け取れる時期が高校入学時や大学入学時などの一定の期間に限定されています。そのため、教育資金以外の用途に転用しにくい、というデメリットがあります。
一方、低解約返戻金型終身保険であれば加入のタイミングに制限はない上、解約返戻金を受け取るタイミングも保険料払込期間が満了していれば元本割れを気にせず自由に設定できます。保険料も割安なため加入の仕方によっては学資保険の満期保険金より多くの学資金を確保することもできます。
ライフプランに合わせて保険料払込期間や死亡保険金額を設定しましょう。
学資保険の代わりとして大学進学費用を貯めるためのプラン例
学資保険では返戻率を注目しがちですが、学資保険加入のもう一つの大切な目的は「契約者(多くの場合は親)に万が一のことが起こった際にも、目標通りの教育資金を確保する」というものです。
契約者に万が一(死亡・高度障害)のことがあった際には、それ以降の保険料の払い込みは免除となり満期の際にはしっかりと満期保険金(学資金)が支払われます。契約者に万一のことがあった時の満期保険金(学資金)=通常時の満期保険金(学資金)というイメージです。
一方の低解約返戻金型終身保険では、被保険者(多くの場合は親)に万が一(死亡・高度障害)のことがあった際に、加入時に決めた死亡保険金(高度障害保険金)が支払われます。その死亡保険金(高度障害保険金)を将来のお子様の教育資金(学資金)に充当するということになります。こちらは 死亡保険金(高度障害保険金)>解約返戻金というイメージです。
両者の違いは
①払い込んだ保険料に対しての万一の際に受け取る金額
②死亡保険金(高度障害保険金)・満期保険金を受け取るタイミング
の2点です。
また、現在では低解約返戻金型終身保険には死亡保障だけでなく特定疾病や介護の際にも保障がある商品が出ています。
もちろん重い病気を患った場合や介護が必要な状態になった場合には生活が大きく変わり、支払保険料が負担に感じられることもあるかもしれません。保障範囲が学資保険よりも広い低解約返戻金型終身保険に加入をしておくと安心ですね。
死後の整理資金として
3つ目の活用方法は、死後の整理資金を準備することです。
ご自身の葬儀代やお墓代を準備するために終身保険を活用することが多いですが、低解約返戻金型終身保険ですと一般的により少ない保険料で準備することが出来ます。基本的には払込保険料のほうが死亡保険金額より低くなります。
例えば、死亡保険金が500万円の終身保険の保険料支払い総額が400万円であれば預貯金で同額の葬儀代やお墓代を準備するよりも少ない金額で済ますことが出来るのです。
相続対策として
4つ目の活用方法は、相続対策をすることです。
終身保険は相続対策としても活用することができます。保険料が比較的安い低解約返戻金型終身保険の場合、通常の終身保険に比べて有効性は高いと言えます。
生命保険を使って相続対策をするメリットは以下の2つです。
①相続税の非課税枠があること
相続人が死亡保険金を受け取る際には「500万円×法定相続人の人数」の非課税限度額がありますので、預貯金などで受け取るよりも税制面でメリットがあります。
②受取人がすぐに死亡保険金を活用できること
預貯金などの相続財産は遺産分割協議が終わるまで受け取ることができないことが多いですが、死亡保険金は受取人がすぐに受け取り使用できるため、葬儀費用や納税資金や生活費に充てることができます。
貯蓄目的で加入する場合の注意点
ここまで、低解約返戻金型終身保険の活用方法について解説を行ってきました。低解約返戻金型終身保険を貯蓄目的で検討される方は多くいらっしゃいます。その場合にどんなことに注意すれば良いでしょうか。
ここからは、低解約返戻金型終身保険の2つの注意点について解説いたします。
保険料払込期間の設定
低解約返戻金型終身保険は一生涯保障(終身保障)ですが、保険料を払い込む期間は加入時にご自身で決める必要があります。保険料払込期間中は一般的に解約返戻金を通常の終身保険の70%に抑えているためご自身が保険料を払い込むことが可能な期間を設定することが重要です。
保険料払込期間を長く設定してしまい払込期間中に急に解約返戻金を必要とした際に利用できる解約返戻金が思っていたより少ないということが起きてしまいます。
貯蓄目的の場合には積み立てた解約返戻金の使用時期がいつなのかしっかりと確認しましょう。いざ解約しようと思った時に低解約返戻期間中では元本割れが起きてしまうことがあります。非常に重要なことですのでライフプランを確認しながら計画的に積み立てていきましょう。
返戻率の確認
低解約返戻金型終身保険は保険料払込期間(低解約返戻金期間)が終わりますと解約返戻金が一気に上がります。解約返戻率とは、支払った保険料総額に対して、解約時に受け取る金額の割合のことを指します。
ご自身が解約をしようとするタイミングでの解約返戻率の確認が重要です。例えば、老後資金を積み立てる目的で低解約返戻金型終身保険に加入したのであれば、60歳や65歳のタイミングで何%になっているか確認するようにしましょう。
まとめ
現在、低解約返戻金型終身保険は多くの保険会社で発売されていて死亡保障だけでなく、特定疾病や介護保障など様々な保障もカバーされていて充実している保険商品の一つです。
しかしながらデメリットにも挙げましたように一度加入すると保険料払込期間中は見直しがしづらい商品です。
低解約返戻金型終身保険に加入する際には、返戻率や保険料だけに注目するのではなく、加入時には目的に合わせて保険料払込期間を設定するなど慎重な判断が必要です。できればライフプランニングなどを行い資金計画をしっかりと立てることをお勧めします。
上述のとおり自身で情報を集めてもなかなか判断が難しい商品の一つです。
保険会社別の商品など特徴を比較してご自身に合った商品が選択できるよう、気軽にお金の専門家であり保険に詳しいFPにご相談ください。