生命保険に加入する際にはほとんどの場合告知が必要となります。
これを告知義務と言いますが、「生命保険の告知義務」という言葉はなんとなく聞いたことはあるけれど、実際には何をどうすればよいのか良く分からないという方に向けて、告知義務の概要からもし間違い(違反)をしてしまった場合の対処方法までを分かりやすく解説していきます。
告知義務とは
告知義務とは、生命保険に加入(契約する)時に、その保険の対象となる人(被保険者)の職業や最近の健康状態・既往歴(病歴)等をありのままに保険会社に対して報告しなければならないことを言います。
では、なぜ告知をしなければならないのでしょうか。
それは生命保険自体が多数の人々が保険料を出しあって相互に保障しあう「相互扶助」の仕組みとなっていて、保険会社は保険加入者に対して公平性を保たなければならないからです。
例えば、病気がちなAさんと健康なBさん(同性・同年齢)が同じ条件で医療保険に加入したとしたら、Aさんの方が給付金を多くもらう可能性が大きくなります。このような状態が続くと公平性が保てなくなるので、そうならない為にも加入者全員に告知の義務があるのです。
告知内容と方法
ではその告知はどのような内容なのでしょうか。
大きく分けて職業に関する項目と身体に関する項目とがあります。
職業に関しては「勤務先名」「業種」「仕事の具体的内容」などがあります。
無職(資産生活者や年金受給者は除く)の場合は保険に加入することができない場合があります。
身体に関しては主に「最近3ヵ月以内の診察・検査・治療・投薬」また、「5年以内の手術・入院の有無」「過去2年以内の健康診断・人間ドックでの指摘の有無」などが問われます。
その他では身体の障害の有無や女性特有の告知項目もあります。
妊娠している場合は、保険会社によっては医療保険に加入できないことがあります。
これらの告知項目を保険会社に報告する方法は「告知書」の提出、医師による診査の場合、または保険会社の面接士との面会という方法もあります。
いずれの場合でも保険会社の社員や代理店の営業マンに口頭で伝えただけでは保険会社に告知をしたことにはならないのでご注意ください。
告知の際の注意点
正しく告知をするための主な注意点をあげてみます。
些細な事でも事実をありのままに記入すること
これくらいなら、とかよく覚えていないからとかの理由で告知が免れることはありません。
質問項目に該当することはどんなに些細なことでも正確に答える必要があります。
あいまいな表現は使用しないで具体的な数値を用いること
例えば「血圧が高め」と言ってもどの数値を基準に高めと言っているのか判断できません。この様な場合、保険会社は危険の度合いを高めに判断する傾向があります。
また、明確に答えられなかったり判断に困る場合は自己流に解釈するのではなく保険会社や営業マンに質問することも大切なことです。
過去だけでなく、現在の状況も併せて記入すること
質問に項目が無くても、過去の病気が現時点でどうなっているのかを伝えることは大切です。
完治しているのか治療中なのか。完治しているのならいつ完治したのかも伝えます。
詳しく記入すればそれだけ不利になると思われている方も多いようですが実は全く逆で、上記のようにできるだけ客観的に状況が分かるように記入する方がより良い条件で生命保険に加入できると言えます。
とはいえ、質問にないことや問われている期間外のことまで記入する必要はありません。
告知義務違反とは
故意または重大な過失によって事実を告知しなかったり、もしくは虚偽の告知をした場合は告知義務違反となる可能性があります。
わざとではなく不注意や全く記憶になく告知しなかった場合でも告知義務違反の対象となります。
告知義務違反と判断されれば、保険会社は保険契約を解除できると約款で定められています。
契約が解除されると万一のことがあっても保障が受けられなくなったり、それまで払った保険料も戻ってこない可能性があります。
ただし、告知義務違反をした内容と請求をした事由とに因果関係が認められない場合には給付金が支払われることがあります。
また、告知義務違反には2年の時効があるとよく言われますが、適用されないケースもあります。
知らずに告知義務違反をしてしまった場合の対処法
大きな病気やケガでなかったり記憶があいまいな場合、うっかりと告知すること自体を忘れていたり、間違った内容で告知してしまったということがありますよね。そのようなときはどうすればよいのでしょうか。
契約成立前の場合(告知直後に気が付いた場合)
契約が成立する前に気が付いた場合は、保険会社に連絡すれば「追加告知」を行うことができ保険加入時にすべての告知をした状態での加入手続きをしたことになります。
この追加告知は告知し忘れた項目のみ追加で告知すれば大丈夫です。
契約成立後の場合
告知義務違反に気づいたのにそのまま放っておくと告知義務違反の状態が続き悪意のある悪質な告知義務違反と判断されてしまう可能性があるので、保険契約が成立した後でもすみやかに保険会社へ連絡し追加の告知をして下さい。
その結果、特定の条件が付いたり引受けを断られることになるかもしれませんが一方的に契約を解除されることはないでしょう。
契約から2年経過していれば告知義務違反が時効なのは本当?
保険を契約してから2年間無事に経過したら、たとえ契約時に告知しなかった持病が有ったとしても時効により契約を解除されることはない?
答えは、半分正しくも有り半分は誤りです。
ほとんどの保険約款には「保険契約が2年間有効に継続すれば、保険会社は保険契約を解除することができない」旨が記載されています。
一方で「2年以内に保険金等の支払事由が発生していた場合」または「故意に告知を偽ったような悪質な告知義務違反」については保険会社はいつでも契約を解除できるとも記載されています。
このことから全てに時効が成立するとは言えないでしょう。
保険会社の担当者から告知は不要と言われた場合は?
告知すべきことを告知しようとしても担当の営業マンに告知しないようにと告知を妨害されたりまたは事実でない内容を告知するように勧められることを不告知教唆と言います。
このような場合は、基本的には保険会社はその保険を解除することはできませんが、営業マンがこのことを認めなかったりすることも多く契約者に不利になることも多々ありますのでご注意ください。
不告知教唆扱いで保険会社側から契約解除はできない
不告知教唆の場合その責任(過失)は担当の営業マンにあり、その言葉を信頼した契約者または被保険者は保護される立場にあると考えられることから保険会社側から契約を解除することはできません(保険法28条2項)。
後からトラブルになる可能性がある
不告知教唆であることを営業マンが素直に認めればその過失は営業マンにあることが明らかとなりますが、契約してから時間が経っていて記憶が定かでないような場合や営業マンがそのようなことは言っていないと非を認めないような場合は不告知教唆であることが立証されずトラブルとなることが考えられます。
トラブルを防ぐために正直に告知すべき
いずれにしましても「告知」というのは保険加入時に非常に大切な要素となります。
加入時にはできる限り正確に正直に告知し、後日、告知した内容に漏れがあったと気づいた際には、速やかに保険会社に連絡することをお勧めいたします。
まとめ
告知義務についてお話ししてきましたがいかがでしたか。
万が一の時のために備えて加入する保険にもかかわらず、いざという時に保険金や給付金が支払われない、というようなケースは珍しくありません。
告知の必要性や重要性を十分に理解していないことが主な理由ですが、誠実に対応しているつもりでも告知義務違反とされてしまうことも多々あり、日ごろ保険に携わっていない方には至難の業です。
一人ひとり違う健康状態の上に何をどこまでどのように告知すればよいか迷われることでしょう。
そのような場合は信頼できる営業担当者に相談するのが一番です。もちろん私たちにご相談頂いても十分にご案内させて頂きます。