収入保障保険とは? 3つの選定ポイントや類似保険との違い、税金の仕組みまで解説!

生活

ご結婚やご出産を機に生命保険を初めて検討される方も多いと思います。周囲の方からは
「結婚したのであれば大きな保障の生命保険に加入した方が良いよ」
「子供が産まれたら大きな保障の保険に入らないといけないよ」
と助言を貰ったりするのではないでしょうか。

その場合、できれば合理的な保険料で大きな保障の準備ができれば、これに越したことはありませんよね。
そんな時に是非検討していただきたいのが、「収入保障保険」です。

収入保障保険を簡単に説明しますと、被保険者が死亡もしくは高度障害(他の要件でも支給される種類の収入保障保険もありますが、後に詳細を記載しています)になった場合に契約時に定めた年金月額を保険期間終了時まで毎月受け取れる保険です。

死亡時に関しては公的な遺族年金も受け取れますが、その上乗せ部分としての保障を得ることができる保険ということになります。言わば遺族の生活を経済的に守る為の保険です。

今回はこの「収入保障保険」について、基本的な解説からスタートし、メリットやデメリット、さらには3つの選定ポイントや類似保険との違い、税金の仕組みまでまとめて解説致します。この記事を読んでいただくことによって、収入保障保険に関するあらゆる疑問が解消されることでしょう!

収入保障保険とは?

収入保障保険の特徴

冒頭で、収入保障保険は遺族の生活を経済的に守る為の保険という表現をしました。収入保障保険を考える場合、公的な遺族年金がどの程度支給されるのか、万一があった場合の遺族の生活費やお子様の教育資金がいくら位必要なのか等を総合的に検証し加入を検討する必要があります。

ここでは、収入保障保険について基礎的な事項を順に解説していきます。

受取額や受け取り方

年金月額(いわゆる保険金額)ですが、ご自身で自由に設定することが可能です。受け取る金額が多いに越したことはありませんが、そうなると当然のことながら、保険料が高くなってしまいます。必要十分な保障額の計算はなかなか難しいと思いますので、この点はファイナンシャルプランナーに是非ご相談されて下さい。

一般的な受け取り方としては、収入保障保険加入時に定めた年金月額を支払事由発生時から保険期間終了時まで毎月受取るというものです。

この他、一括でまとまったお金が必要な場合には年金原資に相当する額を一括で受取ることも可能です。

また、年金月額として受取りを始めたものの、途中でまとまったお金が必要になった場合にも受給の途中で残りの年金原資相当額を一括で受取ることも可能です。

※保険商品ごとに受取りの方法が定められています。商品ごとの約款やパンフレットで加入前に十分確認されて下さい。

この時注意しなければならないのは、初めからにしても途中からにしても、年金原資相当額を一括で受取った場合にはその後月々で受取る予定の総合計額に比べ一定額が削減された金額になってしまうということです。これは保険期間満了までに見込まれる年金原価の運用益が差し引かれる仕組みになっているからです。

例)被保険者・・・夫、収入保障保険年金月額15万円、保険期間65歳まで、夫が55歳で亡くなった場合の受取額
●年金月額で受給した場合の総額・・・15万円×12か月×10年間=1,800万円
●夫の死亡時に一括で受け取った場合の受取額(年金原資相当額)・・・約1,650万円
※上記は概算であり正式には保険設計書などで確認下さい。

保険期間

収入保障保険は定期保険になりますので、一定期間を保障する種類の保険になります。
保険期間の選択肢としては
●~歳まで保障
●~年間保障
という選択肢があります。

保険会社によっては被保険者の年齢、性別で制限される組合せもありますが、とりあえずライフプランを踏まえご希望の保障期間でシミュレーションされてみられるのが好ましいかと思います。

保障対象

加入できる方の年齢要件は保険会社によりばらつきがあり、ご加入を検討される際は保険会社に確認されることをお勧めします。

以前は、健康な方でないと加入が難しい保険種類でしたが、最近では健康に不安のある方や健康上問題がある方でも加入が可能な収入保障保険も販売されていますので、過去に加入を試みたが健康上の理由で加入できなかった方でも再度検討されると良いかと思います。

保険料

基本的には掛け捨ての定期保険商品であり保険料は貯蓄性のある保険に比べて一般的に割安な水準となっています。

また保障額は、保険期間が定められているため、年金として受け取る期間が年々少なくなることから受取総額はそれに合わせて減少していきます。このため、保険期間中の保障額を一定とした一般の定期保険に比べて保険料は割安となる傾向にあります。

さらに、喫煙をしない方、健康に問題が無く保険会社が定めた基準を満たす方、また保険会社によっては優良ドライバーの方には割安な保険料が適用されるような仕組みがあり、検討される際は適用要件を確認されることをお勧めします。

なお、死亡や高度障害以外の要件でも支給の対象となる収入保障保険については、当然ながら死亡や高度障害のみが対象となる収入保障保険に比べて保険料は高くなります。

収入保障保険と似た2つの保険との比較

収入保障保険と混同しがちな2種類の保険として「所得補償保険」と「就業不能保険」があります。

「収入保障保険」と「所得補償保険」、「就業不能保険」との違いですが、言葉のニュアンスで一見同じような内容に感じられますが、実は全く内容が異なります。

ここでは、所得補償保険と就業不能保険について簡潔に解説を加えていきたいと思います。

所得補償保険

所得補償保険とは、会社員や公務員、自営業者などが病気やけがで仕事ができなくなった場合の収入の減少を補う為の保険です。主に損害保険会社が販売している商品で、保険期間は1年~5年更新となり補償の対象期間は1年~2年(短期補償タイプ)もしくは60歳や65歳まで(長期保障タイプ)というのが一般的です。

収入保障保険と類似した保険に見えるかもしれませんが、所得補償保険には死亡した場合の保障は無く、うつ病などの精神疾患で働けないケース等では補償対象外となることもあるので注意が必要です。

就業不能保険

就業不能保険とは、約款で定められた障害状態や要介護状態になった場合に、加入時に決めた保険金が支給される保険になります。保険期間は50歳~70歳満期などから選択し、保障の支払対象期間は満期まで支給されるものが一般的です。また、所得補償保険同様に精神疾患等は免責となる場合が多いです。

こちらも死亡した場合の保障は基本的には有りませんので、収入保障保険と分けて考える必要があります。
就業不能保険について詳しくこちらの記事で解説しております。

民間保険に所得を保障するような商品はある? 所得補償保険とは 民間保険に所得を保障するような商品はある? 所得補償保険とは 国の制度として労災保険や傷病手当金などがありますが、民間の保険で何か所得を保障出来るようなものがあるとより安心ですね。損害保険会社において「所得補償保険」と言われる商品がありますが、必要なものでしょうか。社会保障制度と所得補償保険の必要性について、一緒に考えていきましょう。

収入保障保険の種類

多様化するニーズに合わせて、様々な種類の収入保障保険が現在販売されており、死亡時以外の要件でも加入時に決めた金額が支給されるものもあります。

一般的な収入保障保険

●死亡もしくは高度障害になった時に、契約で定めた金額を保険期間終了時まで毎月受取るタイプ

死亡や高度障害に加え、就業不能になった場合や特定疾病に罹患した場合も保険金が支給されるタイプ

●一般的な収入保障保険に所定の障害状態になった場合の要件を加えたタイプ(保険商品ごとに障害等級の定めがあります)
●一般的な収入保障保険に所定の要介護状態になった場合の要件を加えたタイプ(保険商品ごとに要介護の認定ランクの定めがあります)
●一般的な収入保障保険に特定疾病に罹患した場合の要件を加えたタイプ(保険商品ごとに特定疾病の定めがあります)

どのタイプの収入保障保険を選ぶかはご自身やご家族ごとのライフプランや考え方で選んでいただくのがよろしいかと思います。

収入保障保険の2つのメリット

保険料が割安である

上記「保険料」の際にも記載した通り、基本的には掛け捨ての定期保険商品であるため貯蓄性のある保険に比べて一般的に割安な保険料となっています。

また年金受取総額が年々少なくなることから、保険期間中の保障額を一定とした一般の定期保険に比べても保険料は割安となる傾向にあります。

またさらに、非喫煙や健康上問題がない状態であればそれぞれの状況に応じて割引される保険料率が適用され保険料が割安になることが多いです。

このように収入保障保険の保険料は他の保険に比べても保障額に対して比較的安く設定されている保険であることからその割安感はメリットの一つと言えると思います。

死亡時や高度障害時のリスクに合理的に備えられる

収入保障保険は契約期間満了に向かって死亡保険金を受け取る期間が短くなるため、必然的に死亡保険金の受取総額が減っていき「三角の保険」といわれる所以となっています。一見年金月額が減っていくよう見えるため「保障が減っていく保険なんて、意味がない!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これはあくまで保険金の受取総額が年々減っていくのであって毎月受け取る年金月額が減ることはありません。

一般的にお子様が成長していくにつれ、子育てに必要なお金の総額は少なくなります。つまり、世帯主や配偶者の方の万が一の事態に備える必要な保障額は年々少なくなるということから、収入保障保険は本来の必要保障額に見合った額を合理的に備えられる仕組みを持った保険であると言えます。

収入保障保険の2つのデメリット

解約返戻金がない

収入保障保険は一般的には掛け捨ての保険であるため、解約返戻金は全く無いか、またあったとしてもわずかなケースがほとんどです。もしも保険期間の途中で解約したとして、解約返戻金を必要資金に充てるといったことはできません。

また、割安な保険料で大きな保障を得ることができる保険種類ですが、幸い何事も無く保険期間満了を迎えても返ってくる満期保険金等はありませんので十分理解しておく必要があります。

突発的な金銭的負担の備えに向かない

収入保障保険は基本的な死亡保険金の受け取り方は年金型で月々年金月額を受け取る設定になっています。また、前述したように死亡保険金を一括で受け取る場合には、月々受取る予定額の総合計額に比べ一定額が削減された金額(年金原資額)を受取ことになるため、本来必要とする保険金額に不足が生じる場合があるので注意が必要です。

万が一の際に一定の保険金額が必要となることが予め考えられたり、それに備えるのであれば、収入保障保険より終身保険(一生涯保障の保険)や定期保険(一定期間の保障)を検討されることをお勧めします。

収入保障保険選びの3ポイント

保険金を受け取る金額を決める

保険金額はご自身で自由に設定することが可能です。ただし、保険金額が大きくなればそれだけ保険料も高くなるので、公的な遺族年金額も必要保障額の計算に含めたうえで適切な保険金額を設定することが大切です。必要な保障額や保険期間の計算はなかなか難しいと思いますので、この点はファイナンシャルプランナーに是非ご相談されて下さい。

保険金の受け取り方を決める

1.1. の「受取額や受け取り方」で述べたとおり、保険金の受け取り方には大きく分けて、最初から終わりまで年金で受け取る年金形式、万が一あった際に一括で受け取る一括受取形式、両方の受け取り方をする一括受取形式+年金形式の3種類あります。またそれぞれの受け取り方により税金のかかり方や最終的に受け取ることができる保険金額に違いが出てくるため、十分に理解し慎重に検討すべきです。

また受け取り方だけでなく、契約者・被保険者・年金受取人の契約形態によっても対象となる税金が異なってきます。

オススメの受け取り方については 6.1. で解説しています。

保障が必要な期間を決める

保険金額や保障期間を自由に設定できるからこそ、ご自身の家族構成やライフステージによってしっかりと検討を加えるべきです。例えば、お子さまが大学に進学するまで、お子さまが独立するまで、配偶者の方が年金を受給するまでなど、それ以降の家計への負担が少なくなる時期を考えると、自然と保障期間は決定できるのではないでしょうか。

収入保障保険にかかる税金

年金形式の受け取りの場合の税金

収入保障保険で受け取る保険金にかかる税金は、保険金の受取方法と、契約者・被保険者・受取人の関係などによって課税の種類が変わります。この点も加入する際によく確認しておく必要があります。

以下で詳しく解説いたします。

収入保障保険にかかる税金のシミュレーション

収入保障保険の保険金を年金形式で受け取る場合

収入保障保険の保険金を年金形式で受け取る場合には、被保険者の死亡時と2年目以降年金を受け取る各年と2段階に分けて課税されます。どの税金がかかるかは、誰が契約者(保険料負担者)か、誰が受取人(保険金受取人)かという契約形態によって決まります。

被保険者の死亡時

収入保障保険の保険金を受け取る権利の評価額(年金受給権評価額)に対して、相続税(契約者=被保険者≠保険金受取人の場合)または贈与税(契約者≠被保険者≠保険金受取人の場合)がかかります。なお、相続税の課税対象となる場合には、保険金の評価額に対して「500万円×法定相続人の人数」が非課税となります。
※契約者=受取人の場合には、死亡時での課税はありません。

保険金受取時

2年目以降、各年に受け取る年金額に対して所得税(雑所得)・住民税が課税されます。

収入保障保険の保険金を一括で受け取る場合

保険金を一括で受け取った場合にかかる税金は、誰が契約者(保険料負担者)か、誰が受取人(保険金受取人)かという契約形態によって相続税、所得税・住民税、贈与税がかかります。

事例1:相続税の対象

契約者=被保険者≠保険金受取人(例:契約者=夫、被保険者=夫、受取人=妻)の場合、相続税の対象となります。受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません)である場合、「500 万円×法定相続人の人数」は非課税となります。

事例2:所得税・住民税の対象

契約者=保険金受取人≠被保険者(例:契約者=夫、被保険者=妻、受取人=夫)の場合、受け取った保険金から払い込んだ保険料を差し引いた金額が一時所得となり、その金額から特別控除の50万円を引いた残りの金額の1/2が所得税の課税対象額となります。

事例3:贈与税の対象

契約者≠・被保険者≠保険金受取人(例:契約者=夫、被保険者=妻、受取人=子)の場合、贈与税の課税対象となります。暦年課税の場合、110 万円の基礎控除があります。

※記載内容は2020年9月現在のものであり、将来的に変更されることもあります。
※税金についての個別事案の計算等については税理士や管轄の税務署にお問い合わせください。

収入保障保険に関するQ&A

収入保障保険のおすすめの受け取り方は?

収入保障保険は遺族年金の上乗せ部分として加入するケースが多い保険です。これを踏まえると順当に年金として受取った方が好ましいと私は考えます。

一時金で大きな金額を手にすると使いみちに迷ったり、将来の事を考えずに浪費したりする可能性があります。

このように一時金で受け取ると、故人の想いに反する使い方をしてしまう恐れがあるため、受け取り方については遺族間でしっかりと話をする必要があります。

収入保障保険はコロナウイルスでも適用される?

新型コロナウィルス感染症に感染しただけでは受給の対象とはなりません。
当然、新型コロナウィルス感染症が原因で死亡や高度障害など受給要件に該当すれば支給の対象になります。

収入保障保険が必要なのは結局どんな人?

収入保障保険への加入が必要な方についてですが、世帯主は勿論、働いている配偶者、言い換えると働いて生計を担っている方は加入しておく方がよいと言えます。

一家を支える方に万が一のことがあった時でも、残された遺族が今まで通りの生活を送ることができること、そしてお子様の教育目標が無事に達成できることが大切です。

まとめ

ここまで収入保障保険に関してその概要やメリット・デメリット、さらには税金についても解説を行ってきました。

保険料が低く抑えられ非常に合理的な保険である一方で、保険金の受け取り方や保険期間、保険金額など決めなければいけないことが沢山あり、結局何が正解なのかよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな時は「保険のプロ」であるファイナンシャルプランナーに相談されてみてはいかがでしょう。
ライフプランや家族の状況に応じた最適な保険を選んでくれるはずです。

執筆者

坂本 雄一(ファイナンシャルプランナー)

1993年大学卒業後、熊本の地方銀行に入行。融資業務、預金業務、資産運用業務を経験。より顧客の人生設計(ライフプラン)やマネープランに銀行員として的確にアドバイスがしたく16年3か月の行員生活に終止符を打ち、外資系金融機関へ転職。その後は、よりファイナンシャルプランナーとしての活動の幅を広げるべく独立し現在に至る。熊本県下最大の住宅展示場で資金相談会も定期的に開催中。
■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士住宅ローンアドバイザー
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