医療保険は控除が可能! 賢く利用し保険料を節約しよう!

医療保険

日本人の生命保険の加入率は、生命保険文化センターの令和4年度「生活保障に関する調査」(※1.)によると、男性では77.6%、女性では81.5%となっています。約8割の方々が生命保険に加入していることがわかります。

また同じく令和3年度に生命保険文化センターで生命保険の加入目的を調査(※2.)したところ、「医療費や入院費のため」が59.0%(前回57.1%)と最も多く、次いで「万一の ときの家族の生活保障のため」52.4%(前回49.5%)、「万一のときの葬式代のため」12.4%(前 回15.4%)の順となっています。
その中で1.6%は「税金が安くなるため」という回答をあげています。

もちろん、税金が安くなるという理由だけで生命保険に加入する人は少ないとは思いますが、自分が必要と思う保障を備えると同時に払う税金が安くなるのであれば、生命保険の加入に際し背中を押してくれるのではないでしょうか。

今回は、保険料控除の中でも医療保険の部分を詳しく解説していきます。

(※1.)参照:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度活保障に関する調査」(生命保険の加入状況)
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r4/2022honshi_all.pdf
(※2.)参照:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」(直近加入の生命保険:直近加入契約(民保)の加入目的)
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf

医療保険の保険料控除とは?

生命保険料控除制度とは

私たちが生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを保険料控除といいます。
現在、保険料控除の対象となる保険種類は次の3つになります。

①一般生命保険料控除

生存または死亡に基因して一定額の保険金、その他給付金を支払うことを約する部分に係る保険料を支払っている場合に控除を受ける事ができます。

②介護医療保険料控除

入院・通院等にともなう給付部分に係る保険料を支払っている場合に控除を受ける事ができます。
今回の中心となる医療保険の保険料控除はここに該当することになります。

③個人年金保険料控除

個人年金保険料税制適格特約の付加された個人年金保険契約等に係る保険料を支払っている場合に控除を受ける事ができます。
※いずれに分類されるかは特約等の名称に関わらず、保障内容によって異なるため生命保険会社に確認しましょう。

(※1.)参考資料:(公財) 生命保険文化センターHP「税金に関するQ&A」を基に作成

新制度と旧制度の違い

平成22年度の税制改正により、平成24年度から生命保険料控除制度が改正されました。先ほど紹介した3種類のうち、①一般生命保険料控除と③個人年金保険料控除は、名称はそのままですが、平成23年12月31日までに締結された保険契約(従前の生命保険料控除制度適用)と平成24年1月1日以降に締結された保険契約(新制度適用)とで適用される制度が異なるようになりました。また、②介護医療保険料控除制度は平成22年度の税制改正によって生命保険料控除制度に新たに加わり、平成24年1月1日以後新たに締結された生命保険が新制度の対象になりました。

併せて所得税・住民税に対する控除額も変更になり、加入時期が平成24年1月1日以前か以後かで所得税・住民税の控除額を計算する式が異なりますので注意してください。

医療保険で保険料控除を受けられる税金は2種類!

医療保険で保険料控除を受けられる税金は所得税と住民税の2種類あります。

年間の支払い保険料の金額によって、控除額が異なってくるという点と上限が決まっている点で両者は共通しています。

しかし、それぞれの税で控除額には差がある点に注意する必要があります。

以下で詳しく見ていきましょう。

医療保険の保険料控除額はいくら?

医療保険の保険料控除には上限がある

上述の通り、医療保険の保険料で控除を受ける事ができる税金は所得税と住民税の2種類あり、それぞれの税で控除額には差があります。以下にわかりやすく表でまとめてみました。なお、ここで紹介しているのは新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額になります。

所得税 住民税
区分 年間払込保険料額 控除される金額 年間払込保険料額 控除される金額
①一般生命保険料
②介護医療保険
③個人年金保険料
(税制適格特約付)
20,000円以下 払込保険料全額 12,000円以下 払込保険料全額
20,000円超
40,000円以下
(払込保険料×1/2)
+10,000円
12,000円超
32,000円以下
(払込保険料×1/2)
+6,000円
40,000円超
80,000円以下
(払込保険料×1/4)
+20,000円
32,000円超
56,000円以下
(払込保険料×1/4)
+14,000円
80,000円超 一律40,000円 56,000円超 一律28,000円

参照:生命保険文化センター 「新しい生命保険料控除制度とは?」
https://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/tax/tax_q16.html

新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約)に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の計算式に当てはめて計算した金額です。

①所得税の場合

年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 ⇨ 支払保険料等の全額
20,000円超40,000円以下 ⇨ (支払保険料等)×1/2+10,000円 
40,000円超80,000円以下 ⇨ (支払保険料等)×1/4+20,000円 
80,000円超 ⇨ 一律40,000円

②住民税の場合

年間の支払保険料等 控除額
12,000円以下 ⇨ 支払保険料等の全額
12,000円超32,000円以下 ⇨ (支払保険料等)×1/2+6,000円 
32,000円超56,000円以下 ⇨ (支払保険料等)×1/4+14,000円 
56,000円超 ⇨ 一律28,000円

(注)

  1. 支払保険料等とは、その年に支払った金額からその年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。
  2. 平成24年1月1日以後に締結した保険契約(新契約)については、主契約又は特約の保障内容に応じ、その保険契約等に係る支払保険料等が各保険料控除に適用されます。
  3. 異なる複数の保障内容が一の契約で締結されている保険契約等は、その保険契約等の主たる保障内容に応じて保険料控除を適用します。
  4. その年に受けた剰余金や割戻金がある場合には、主契約と特約のそれぞれの支払保険料等の金額の比に応じて剰余金の分配等の金額を按分し、それぞれの保険料等の金額から差し引きます。

参照:国税庁HP タックスアンサー(よくある税の質問)No.1140生命保険料控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm

控除額の具体的な計算シミュレーション

では、具体的に医療保険に加入した場合、いくら保険料が控除されて、いくら税金が戻ってくるかを見ていきましょう。

例えば、Aさんが月払い8,000円(年間96,000円)の医療保険に加入していたとします。またAさんの課税所得は300万円であると仮定します。

まず所得税に対する控除額は上記の表にあるとおり保険料80,000円超は40,000円になり、40,000円が所得額から控除されることになります。

次に住民税は上記の表にあるとおり保険料56,000円超は28,000円になり、28,000円が所得額から控除されることになります。注意点としては、2つの控除額合計68,000円が実際に戻ってくるというわけではないという点です。控除額に各税の税率をかけた金額が戻ってくることになります。

実際に戻ってくる金額を見ていきましょう。課税所得が195万円〜330万円の人は所得税、住民税の税率が10%なので、戻ってくる金額は次のようになります。

40,000円(所得控除額)×10%=4,000円
28,000円(住民控除額)×10%=2,800円
4,000円+2,800円=合計6,800円のお金が戻ってきます。

医療保険の保険料控除の申請方法

上記で解説してきました通り、医療保険の保険料控除はとてもお得な制度ですが、医療保険に加入しているだけで自動的に控除されるわけではありません。やはり、保険料控除を享受するためには申請が必要になります。

また申請方法も会社員と自営業等確定申告をされている方では申請方法が異なります。以下では保険料控除を受けるための実際の申請方法について詳細に解説していきたいと思います。

会社員は年末調整で医療保険の保険料控除が受けられる

会社員の場合は年末調整で申請ができます。勤務先でもらう「給与所得者の保険料控除等申告書」に保険料控除の内容を記入したうえで保険会社が発行する保険料控除証明書を添付し、勤務先に提出することで年末調整をしてもらえます。その結果控除を受けることになります(給与天引きにより保険料を払い込んでいる場合は、保険料控除証明書の添付は不要になります)。

このように会社員の場合は年末調整というかたちで控除されますので、還付分でいくらお金が戻ってきたか分かりにくく、節約している実感も湧きにくいと思います。また住民税に関しましても、昨年分の所得が確定して、その金額に基づき自動的に翌年の住民税が計算されます。所得税と同様にお金が戻ってくるわけではないのでなかなか実感はしづらいですが、もちろん保険料控除を受けた場合と受けない場合では税金の金額は異なります。

なお給与の年間収入額が2,000万円を超える場合や、年末調整で保険料控除を受けていない場合などは、確定申告をすることになります。

重要な保険料控除証明書と保険料控除申告書の記入方法

介護医療保険料控除の申請の仕方は、従来までの保険料控除の申請の仕方とほぼ同じになります。年末調整で控除申請をする場合も同じく、「給与所得者の保険料控除等申告書」に、保険会社から送付された保険料控除証明書を参考にして保険料控除の内容を漏れなく記入するようにします。平成30年分の所得からは保険会社からメールで送信される証明書のデータを印刷(※)し、年末調整や確定申告の際に使用することもできるようになりました。
(※)国税庁のホームページで一定の手続きが必要になります。

繰り返しとなりますが、介護医療保険料控除の対象となる契約は、平成24年1月1日以後に契約した医療保険、医療費用保険、がん保険、介護保障保険、介護費用保険等の契約になります。ちなみに傷害保険はこの対象となりません。

入院や通院、手術、がんの一時金等にともなう給付部分にかかる主契約保険料や特約保険料が対象となると考えると分かりやすいでしょう。

では、具体的に保険料控除申告書の記入方法をご紹介します。

1. 対象となる年分の「給与所得者の保険料控除申告書」を用意する。平成29年分以前は「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」という形式でありましたので、今後も年度によって書式が変更される可能性がありますが、会社員の方であれば勤務先で配布されることが多いのでそんなに心配はないかと思います。

『◆令和5年分給与所得者の保険料控除申告書』
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/2023bun_04.pdf
※申告する年によって書類が変更になる場合がありますのでご注意下さい。

2. 保険料控除申告書の中段あたりにある「介護医療保険料」の部分に必要事項を記入します。控除申請をする際には、保険会社から届く保険料控除証明書に記載されている情報が必須です。必ず手元に置いた状態で記入を始めるようにしましょう。

必要記入事項は以下の通りです。

ⅰ) 保険会社等の名称: 契約している保険会社の名称を記入します。

ⅱ) 保険等の種類: 通常は加入している保険の種目が保険会社から郵送される保険料控除証明書に記載されているので参考に記入しましょう。

ⅲ) 保険期間又は年金支払期限:保険会社からの保険料控除証明書に記載があるのでそのまま記入しましょう。

ⅳ) 保険等の契約者の氏名:実際に保険を契約している方の氏名を記入します。給与所得者本人の名義で契約をしているのであれば、そのまま本人の氏名を記入しましょう。

ⅴ) 保険金等の受取(氏名・続柄): 実際に保険金や給付金等を受け取る方の氏名と続柄を記入します。たまに保険会社からの保険料控除証明書に記載がないこともあるのでその場合は保険証券等で調べて正確に記入しましょう。

ⅵ) あなたが本年度中に支払った保険料等の金額:保険会社から届く保険料控除証明書に書かれた証明年12月末までに支払い予定の金額である「申告額」を記入するようにしましょう。一緒に書かれている「証明額」とは、証明年1月から証明日までに払込した金額になりますので、年末調整の申告には使用しません。

ⅶ)(a)の金額の合計: (a) の合計金額を記入します。加入している保険が1種類であればその金額を、数種類あるならその合計を記入します。

ⅷ)Cの金額を計算式Ⅰ(新保険料等用)に当てはめて計算した金額: 計算後の金額を記入します。

自営業の方は確定申告で医療保険の保険料控除が受けられる

自営業の方などの確定申告が必要な場合、翌年の2月16日から3月15日までの所得税の確定申告において保険料控除証明書を添付することにより控除を受けることができます。

確定申告を税理士に任せている場合は、保険料控除があることを必ず伝えるようにしましょう。税理士はあなたがどんな保険に加入しているかまでは分からないのですからきちんと知らせておきましょう。

医療保険の保険料控除に関するQ&A

医療保険の保険料控除申請を忘れた場合、いつまでなら控除を受けられる?

保険料を支払っているのであれば、申請しなければ控除を受けられないことになります。忙しい年末の年末調整や年度末の申請を忘れてしまったり、場合によっては申請期限に間に合わなかったりする場合もあると思います。いつまでなら控除を受けられるかを解説いたします。

会社員で年末調整が必要な方の場合は、会社が定めた提出期限が1つ目の期限になります。10月末から11月中旬の会社が多いです。しかしこれは会社が独自に定めた期限ですので、実際には翌年の1月31日までであれば提出可能になることがほとんどです。
(実務上は書類や計算の変更が伴いますので受付が可能かどうかはそれぞれの所属会社にご確認ください。)

万一会社で受け付けられなかった場合でも2月16日から3月15日の間に確定申告をしていただければ大丈夫です。

しかしそれも逃してしまった場合、最後の期限は5年後までになります。更正の請求という手続きをとることにより過去5年以内であれば控除を受けることができます。

医療保険の保険料控除には対象外のものはありますか?

保険契約によっては、傷害特約や災害割増特約など、身体傷害のみに対して保険金が発生するものがあります。

これらは新制度では介護医療保険料控除の対象外となるため、実際に支払った保険料と保険料控除証明書の金額が異なる場合があります。申告時には保険料控除証明書に書かれた金額を記入いたします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ここまで医療保険の保険料控除について解説してきました。

介護医療保険料控除は申請を行えば支払った税金が戻ってくるという効果があります。保険による保険料控除制度は複雑で、いくらお金が戻ってくるのかを把握するのは難しいと感じる方もいるかもしれません。

そんな時は是非保険のプロであるファイナンシャルプランナーにご相談ください。保険に関する様々な控除制度や保険の加入の仕方による節約についてなど詳しく説明いたします。

執筆者

宮野 亮一(ファイナンシャルプランナー)

1995年大学卒業後、空調関係のメーカーに就職。このころ職業能力検定の一つとなったファイナンシャル・プランニング技能士、いわゆるファイナンシャルプランナーという仕事に興味を持ったことがきっかけで、2001年に損保系生命保険会社へ転職。主な業務は、家計相談やライフプランニング、そして個人・法人保険の販売。12年の経験を積み、より幅の広いコンサルティングアドバイスするために現職へ。個人の家計相談はもちろん、ライフプランセミナー、相続・事業承継等のコンサルティングを行う。ほけんペディアでも、幅広い分野の記事を執筆中。
■保持資格:AFP資格2019年度MDRT成績資格会員(Court of the Table会員)相続診断士
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