医療保険の加入を検討されている方で、まず初めに悩むところが、「入院給付金日額をいくらにしたら良いか」ではないでしょうか?
入院給付金日額は、入院時に入院日数ごとに支払われる給付金です。入院時の費用については、実際に入院した際の差額ベッド代などの自己負担額がいくらになるか等、金銭的な心配も多いと思います。
ここでは、入院給付金の概要から入院給付金日額を決める際のポイントについて解説していきたいと思います。
医療保険の入院給付金とは
医療保険の入院給付金には、主に2種類の給付金があります。
・病気による入院「疾病入院給付金」
・ケガによる入院「災害入院給付金」
健康保険証の種類や入院基本料の支払いの有無にもよりますが、最近のほとんどの医療保険の入院給付金は「日帰り入院」も保障されます。
入院給付金には、主に「支払限度日数」が設定されており、1入院60日型など1回の入院に対する入院給付金の支払い限度日数を定めています。
入院にかかる主な費用
ここでは、実際に入院をした際にかかる主な費用について解説をしていきます。
医療費
年々増え続けている国民医療費ですが、平成30年度のデータでは実に43.4兆円と言われています。(参照:厚生労働省「平成30年度 国民医療費の概況」)
高齢化の伸展とともに増大する医療費の状況は深刻です。
そうした中、実際に入院をした場合の「自己負担額」はいくらになるか?という心配をされる方も多いと思います。
入院をする際に必要となる費用には、健康保険の対象となる治療費(自己負担割合3割)と、健康保険対象外の治療費(全額自己負担)があります。
以下に、健康保険対象外となる治療費について解説をしていきたいと思います。
差額ベッド代
差額ベッド代については、入院する病院によって金額は様々。5,000円/1日程度から30,000円/1日が一般的な差額ベッド代になります。平均的な差額ベッド代は約6,000円程度と言われていますが、特別室等になりますとさらに高額な差額ベッド代が必要となります。
かかりつけの病院や自宅から近い病院などの差額ベッド代については事前に調査しておくこともおススメします。
ここでは、「平均的な1日あたりの差額ベッド代」とその「基準」について掲載します。
平均的な1日あたりの差額ベッド代
1人部屋 | 7,797円 |
---|---|
2人部屋 | 3,087円 |
3人部屋 | 2,800円 |
4人部屋 | 2,407円 |
平均 | 6,144円 |
差額ベッド代の基準
①一病室あたり4床以下
②面積が一人あたり6.4㎡以上
③ベッドごとにプライバシーを確保する設備
④個人用の私物収納設備
⑤照明・小机・椅子の設置
(厚生労働省 平成29年11月現在)
食事代
入院時の食事代は、1食あたり「460円」(一般的な食事代)になります。
平成30年4月より入院時の食事代(自己負担額)が引き上げられました。
1日3食となりますので、1日の食費は460円×3食=「1,380円」となります。
1日1,380円×入院日数分が入院時の食事代(自己負担額)となります。
詳細については下記に表にしておきますので、ご参照ください。
1食あたりの自己負担額
その他雑費
入院に関わるその他雑費についてですが、例えば入院時の日用品代や退院後の快気祝いなども含めますと予想以上に費用がかかることもあります。
また、お見舞いに来られた方へ食事や飲み物を用意することも想定されます。
その他雑費についても入院時にかかる出費として考えておく必要があります。
家族の交通費等
家族が入院することによって、お見舞いのための交通費も見えない出費のひとつです。
自家用車で通院できる場合と公共交通機関やタクシー等を利用する場合と出費額は様々ですが、こちらも見えない出費のひとつですので、医療費の一部と考えておくと良いかも知れません。
入院給付金日額を決めるときのポイント
入院をする際に必要となる費用には、健康保険の対象となる治療と対象外となる治療がある点、解説をして参りました。
健康保険の対象となる治療費は、上述の通り実際にかかった医療費の3割を病院に支払います。(70歳未満の場合)
ただし、高額な医療費がかかった場合、家計の負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。
年収が、約370~約770万円の方の場合、かかった医療費が100万円だったとすると、87,430円が実際の自己負担額となります。
(80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円)
これを、30日で按分すると、1日あたり約2,914円となります。いくら医療がかかったとしても、これがひと月の治療費の上限になるということです。
ただし、これとは別に「差額ベッド代」「食事代」や「交通費」「その他雑費」に加え「健康保険適用外の治療」等については全額自己負担となります。
また、住宅ローンを抱えている世帯等、特に長期で入院をするケースでは収入減から生活費の他に住宅ローンの返済などへの影響も懸念されます。
共働きか否か、住宅ローン等の有無、緊急時予備資金の有無などによって入院時の自己負担に与える影響は様々であることも注意が必要です。
そうした内容も十分に検討した上で、入院日額を決定する必要があります。
支給される日数の確認も重要
入院給付金には、「1回の入院についての支払限度日数」が設定されており、保険商品ごとに病気やケガで入院した際の1入院あたりの支払限度日数が定められています。
主に「1入院30日型」「1入院60日型」「1入院120日型」「1入院360日型」などに分かれます。
特定の疾病の場合は入院・通算とも無制限としている保険商品もあります。
尚、入院給付金は、一定の期間に2回以上入院をした場合には、1回の入院とみなす場合があります。
仮に「1入院60日型」の場合、1回目の入院で40日入院し、2回目の入院で30日入院したとしても、(2回目の入院の発生は前回入院の退院日の翌日から180日以内)入院給付金の支払限度日数である60日分までの支払いになります(2回目の入院が前回入院と異なる病気を原因とした入院の場合、継続した1回の入院として扱われる商品もあれば、別の入院として扱われる商品もあります。)
傷病によっては、入院が長期に及ぶこともありますので、1入院の支払限度日数についても、十分に理解し、加入の際に確認が必要な項目です。
一方、厚生労働省の調査「平成29年度 患者調査の概況」によると、在院日数は、病院「0-14日」68.2%、「15-30日」15.7%、一般診療所「0-14日」83.5%、「15-30日」8.1%というデータもあり、多くの患者が短期入院となっていることも事実です。
■出典 厚生労働省「平成29年度 患者調査の概況」より
保険料を安く抑えるには?
主に、医療保険の場合は、「主契約」と「特約(オプション)」に分かれています。
保険料を安く抑えるには、まず「主契約」の入院給付金の1入院あたりの支払限度日数をより短い設計にすることで、保険料を安く抑えることが出来ます。
(例)「1入院120型」>「1入院60日型」等
また、入院給付金日額についても、低く設定することで保険料へ反映されます。
(例)「入院日額10,000円」>「入院日額5,000円」等
「特約(オプション)」についても、ご自身で必要と思われる保障について選別をすることで、保障をスリム化することが可能です。
つまり、保障内容を充実させるか否かによって、当然ながら保険料にも影響をしてきます。
一方、保険料を安く抑えたい方向のみに傾倒してしまうことで、いざ病気やケガで入院をした際に十分な保障を受けられないことにもなりかねません。
ですから、保障と保険料のバランスをしっかりと取ることが重要になってきます。
まとめ
ここまで、医療保険の入院給付金について解説をしてきましたが、すべての方に等しいわけではなく、その方の生活状況等も含めて決定する必要がある点ご理解頂けたかと思います。
住宅ローンの返済なども実際に入院した場合には影響は少なくありません。
あなた自身が入院した場合に、経済的に支えてくれる家族があるかないか、緊急時に支出できる予備資金があるかどうかなども含め、ご家庭のキャッシュフローも加味した上で、入院給付金について「いくらにするべきか」検討する必要があります。
死亡保障の保険金額と併せて、入院給付金額の設定については、ライフプランを実施することでよりそのご家庭に即した保障額が見出せるものと考えます。