自営業の人は会社員や公務員に比べて、公的社会保障が薄いため、民間の保険で万が一のときに備える必要があります。
ここでは、まず自営業者やフリーランスの方が受けられる公的保障を整理し、自営業者やフリーランスの方の保険の選び方を説明します。
自営業者の経済的リスク
自営業者やフリーランスの方は、会社員や公務員のように組織には属さず独立して仕事を行っています。
そのため、死亡時や病気やケガをして休業しなければならなくなった場合、老後の生活費の確保等、さまざまな経済的リスクに自分自身で備える必要があります。
自営業者の公的保障
自営業者やフリーランスの方は、大前提として会社員や公務員とは公的保障(社会保険)の仕組みが違い、保障内容が薄いということをおさえておかなければなりません。
国民年金
たとえば老齢年金制度では、自営業者やフリーランスの方は国民年金のみ(1階建て)ですが、会社員・公務員の方は、それに厚生年金がプラスされていますので(2階建て)、同じ状況になったとしても受け取れる年金の額が大きく異なります。
万一、本人が亡くなった場合に配偶者等に支給される遺族年金や、万一本人が障害1級・2級などの認定を受けた場合に支給される障害年金も、すべて同様で、自営業者やフリーランスの方には1階部分しかありません。
従って、自営業者やフリーランスの方は老後の備えや、死亡・障害時の備えを自分で補う必要があります。
国民健康保険
会社員・公務員の方の公的医療保険としては、健康保険組合や全国健康保険協会などに加入することが一般的ですが、自営業者やフリーランスの方の公的医療保険は国民健康保険しかありません。
この公的医療保険制度では、病気やケガをして仕事を休んだときの保障について大きな違いが見られます。
もし病気やケガで働けなくなったとき、健康保険組合や全国健康保険協会からは「傷病手当金」という手当が支給されます。
基本的には会社を休んだ日数に応じて、最長1年半まで平均的な1日あたりの給与の約2/3相当の手当金を受け取ることができます。
自営業者やフリーランスの方が病気やケガをして仕事ができなくなってしまったら、国民健康保険には傷病手当金に相当する保障が備わっていませんので、その瞬間から収入が無くなってしまうリスクが考えられるのです。
自営業者やフリーランスの方は、こうした病気やケガによる収入減のリスクに対して備える必要があります。
介護保険
介護保険とは、高齢になり介護や日常生活の支援が必要と認められた場合に、介護サービスを受けられる制度です。
40歳になると加入して、国民健康保険料に上乗せして保険料を支払っていきます。この保険については、会社員と自営業者は同じ扱いになります。
自営業者の保険の選び方
前述の通り、自営業者やフリーランスの方は、公的保障ではカバーしきれないリスク部分を、民間の保険会社の保険商品への加入等、自分で補う必要があります。
この章では備えとなる保険の選び方について見ていきましょう。
病気やケガに対する備え
病気・ケガで入院・手術をして働けなくなったときの経済的リスク(治療費や入院費等)をカバーする保険として、医療保険があります。
ポピュラーな商品は、入院1日につき所定の金額を受け取れる入院給付金、手術1回につき所定の金額を受け取れる手術給付金が主契約となります。
特約の種類は豊富で、先進医療特約、がん診断特約、三大疾病特約など、特に不安な部分に対しては手厚い保障を受けられるようになっています。
自営業者やフリーランスの方は、是非とも用意しておきたい保険の一つだと言えます。
死亡時の備え
万一の死亡時における経済的リスク(遺族の生活費や葬儀代等)をカバーする保険として、生命保険があります。
生命保険には大まかに言うと掛け捨て型の「定期保険」、積み立て型の「終身保険」・「養老保険」の三種類があり、いずれも万が一の死亡時に保険金を一括で受け取ることができます。
そして受け取れる保険金に関しては、保険期間内であればいつの時点でも契約時に決められた金額に変わりはありません。
老後の備え
仕事をリタイアした後の老後の生活費不足をカバーする保険としては、前述の積み立て型生命保険である「終身保険」・「養老保険」、に加え「個人年金保険」があります。
なかでも「終身保険」は、一生涯にわたって亡くなったときの死亡保障を確保できる保険ですが、途中解約時に解約返戻金を受け取ることができます。なので老後資金の準備や子供の学費準備に活用されることも多いのが特徴です。
現在では上記の積み立て型保険の中でも、株式や債券で運用する変額型、外貨で運用する外貨建て型など、様々な個性をもったタイプが存在します。
自営業者が加入を検討すると良い保険
前述の通り自営業者やフリーランスの方には、会社員・公務員と違って「傷病手当金」という制度がありませんので、特に働けなくなった時の経済的リスク(所得・収入)のカバーという概念は大切になってきます。
所得補償保険(就業不能保険)
所得補償保険とは、損害保険会社が販売する保険で、被保険者が病気やケガで入院や通院、自宅療養を行うことで働くことができなくなった場合に、税込み年収の最大60%ほどが補償され、一定期間(通常は1年~5年、最長60歳まで。
保険会社によってはそれ以上のものもあります)、毎月一定の金額を受け取ることができる保険です。
また保険期間中に保険金の支払いがなかった場合には、保険金の一部が戻ってくる場合があります。
日常生活以外の、仕事中や旅行などいつでもどこでも保険の対象となり、日本国内・国外も問いません。「就労不能」状態になった時の所得減少リスクをカバーする保険が「所得補償保険」です。
ただし健康上の告知審査があり、以前にかかった病気などによっては保険に加入できないといった場合もありますので、その点は理解しておく必要があります。
生命保険会社でも、「就業不能保険」という名前で販売しており、保険金額の設定等に違いはあるものの、基本的な保障内容は類似しています。
収入保障保険
収入保障保険とは、万が一の死亡時に残された遺族の生活費等をカバーしてくれる保険です。
保険種類としては前述の「定期保険」の一部に分類され、特徴としては保険金が給与のような形で毎月支払われる点です。
保険期間は60歳や65歳に設定されていることが多く、死亡保険金の受け取り期間は、死亡時から保険期間満了までの残存期間となります。
したがって、時間の経過とともに受け取れる保険金の総額は少なくなっていきますので、死亡保険のなかでも保険料は割安に設定されています。
このように長期にわたって安定して保険金を受け取れる点や保険料の設定が割安な点から、残された遺族の生活保障に適した保険だと言えます。
最近では特定疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)に罹患した際に、死亡時と同額の保障額を同じ保険期間分受け取ることが可能な保険商品も販売されています。
まとめ
一口に自営業者やフリーランスと言っても、ライフスタイルは様々で既婚の方もいれば独身の人もいるでしょうし、お子様がいる人もいない人もいます。
また一人一人将来のライフプランも違うと思います。
公的保障では補いきれない経済的リスクをカバーするために、民間の保険会社の商品の中から保険を選んでいくという作業を「大変だなあ!」と感じられる方は、保険会社や保険代理店の営業パーソン・ファイナンシャルプランナー等、保険のプロのアドバイスを活用されることをお勧めいたします。