新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する不安が募る中、未知なるウイルス等に感染した場合に、『保険』がどのように機能するのか、どのような場面で役立つのか等、知っておきたい事が多くあると思います。
ご自身やご家族が感染するリスクは、常に伴うものです。
いざ、感染してしまった際にも困らないように、『保険』がどのように役立つのか、また公的保障はどんなものがあるのか等について、わかりやすく解説していきます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した場合の保障内容一覧
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、保険種類ごとにどのような保障がなされるのかについて解説をしていきます。
併せて、各保険会社から今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しての特別措置が発表されていますので、保険会社ホームページ等でご確認頂けたらと思います。
医療保険
「医師の指示のもと」に入院が必要とされた場合には、「通常の傷病による入院」と同様に取り扱うことになります。
つまり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染し入院をした場合、その入院日数に応じた入院給付金が支払われることになります。
また、入院一時金特約や、通院特約等を付帯した医療保険の場合にも、通常の疾病による入院と同様の取り扱いとなりますから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染し入院をした場合も給付金支払いの対象となります。
加えて、病院等医療機関の事情により医療施設以外での入院や療養(ホテルや自宅での療養等)を必要とした場合にも、入院給付金支払いの対象とする特別措置が取られています。
なお、ホテルや自宅での療養の際の特別措置については、以下の「5-1 ホテルや自宅で療養しても保険は下りる?」にて解説をさせて頂きます。併せてご覧頂けたらと思います。
死亡保険
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染を原因とした死亡の際にも、「通常の傷病で亡くなった場合と同様」に死亡保険金が支払われます。
各保険会社の特別措置対応にもよりますが、災害割増特約等における「災害死亡保険金」や「災害高度障害保険金」についても、保険金の支払い対象とするとの発表も出されています。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を直接の原因として死亡・高度障害状態等に該当した場合、保険加入時の特別条件(保険金削減や給付金不払)がある契約でも、「保険金削減や給付金不払を行わない」とする特別措置を取る保険会社もあります。
尚、詳細の支払い条件等については、現在ご加入中の保険会社ごとに特別措置の対応が異なりますから、各保険会社にて確認をして頂くとより詳しい情報を得る事が出来ます。
就業不能保険
就業不能保険は、主に就業不能状態が支払い対象外の期間(主に60日や180日)を超えて継続している場合に、就業不能給付金を支払うタイプの保険になります。(ご加入の保険種類によって条件が異なります。)
各保険種類によって支払い条件等も異なるため一概にはお伝え出来ませんが、就業不能状態が支払い対象外の期間(※)、つまり「支払われない期間」を超えて継続していることが給付金支払いに必要となりますので、給付金を受け取れるハードルは高いと言わざるを得ません。
※支払い対象外期間・・・就業不能開始から起算して、保険金が支払われない期間を言います。
具体的には今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における医師の指示による入院等については、重篤者を除きおよそ2週間程度となりますので、多くの就業不能保険における支払い対象外期間を超えることがほとんどありません。そのため、給付金支払にならないケースが多く出てきてしまいます。
また、勤務先の指示により自宅待機や休業等をする場合は、所定の就業不能状態には該当しないため、給付金の支払い対象外となります。
収入保障保険
収入保障保険は、万が一の際に、保険金を毎月一定額ずつ受け取ることが出来る保険になります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染し、それを直接の原因として死亡・高度障害状態になった場合に、「通常の傷病で亡くなった場合と同様」に死亡保険金が支払われます。
基本的に、上記「死亡保険」と同様の保険金支払条件になります。
新型コロナウイルスに感染した場合の損害補償内容一覧
海外旅行保険(疾病・死亡補償)
海外旅行保険の疾病・死亡補償について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した際に、旅行期間中および旅行期間終了後30日以内に死亡または治療を開始した場合に、保険金支払いの対象にする特別対応を発表しています。(2020年5月現在)
この補償についても特例としての対応となります。通常の取り扱いは、「責任期間中に感染・発病し、責任期間終了後72時間以内に治療を開始した場合」となります。
尚、さらなる詳細については各保険会社に問い合わせをして下さい。
海外旅行保険(費用補償)
次に、海外旅行保険の特約の費用補償についても、ご案内させて頂きます。
海外旅行保険には、旅行のキャンセルをした場合や、旅行期間中に中途帰国した場合に別途かかる旅行費用を補償する特約も付加することが出来ます。
旅行予定先での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延を事由とした旅行中止、または中途帰国をした場合であっても、通常の旅行中止、中途帰国と同様に別途必要となる旅行費用の補償を受けることが可能となります。
尚、外務省の渡航禁止勧告・退去勧告が発令されたために帰国をした場合も補償の対象内となります。
加えて、海外旅行保険に基本的にセットされている「救援者費用(※)」特約についても、一部の保険会社では、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した場合にも補償する旨を公表しています。
※救援者費用特約:現地で入院等、傷病により自力で帰国出来ない際に、日本から家族が迎えに行き一緒に帰国するために要した費用を補償する特約。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、どのようなケースにおいて補償対象になるか等については、状況に応じて各保険会社が特別措置の情報を更新しています。
詳しくは、各保険会社HP等にてご確認頂くことをおススメします。
特定感染症補償特約
一部の保険会社になりますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した場合も、特別感染症補償の保険金支払いの対象となります。
基本的に、損害保険の特定感染症法における一類感染症、二類感染症または三類感染症の補償対象には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は含まれず、補償の範囲外となっています。
2020年4月現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、特定感染症法上の「指定感染症」になりますが、政令により一類感染症または二類感染症と同程度の措置を講じるという改定をして補償対象とする保険会社もあります。
■参考 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年)法律第114号
いずれにしましても、この特定感染症補償特約についても、詳細は保険会社に確認頂くことが重要です。
所得補償保険
所得補償保険は、疾病やケガで働けなくなった際に所得を補償する保険で、疾病やケガで入院・通院・自宅療養による休業時に保険金が支払われます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した場合、疾病と見做し保険金の支払い対象にする旨、一部の保険会社から公表されています。
ただ、商品によっては保険金の支払条件や、支払対象外期間(※)が設定されているもの等、補償内容や補償範囲も異なりますので留意が必要です。
※支払い対象外期間・・・就業不能開始から起算して、保険金が支払われない期間を言います。
新型コロナウイルスに感染した場合の公的保障一覧
健康保険
入院や療養等をした場合、本来3割の自己負担が必要なところですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、指定感染症に指定されたことにより、新型コロナウイルスを原因とした入院や療養の費用は「公費負担」となりました。
また、厚生労働省「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて」によると、令和2年3月6日より、新型コロナウイルスの感染判定のための検査(PCR検査)も「公費負担」となり、「感染の有無に関わらず、検査費用の自己負担はゼロ」となります。
尚、詳細については、下記資料をご参照頂けたらと思います。
■厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/index.html
■厚生労働省「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて」(令和2年3月4日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000604470.pdf
傷病手当金
傷病手当金とは、健康保険等の被用者(被保険者)が病気やケガで働けなくなり、事業主から十分な報酬を受けられない場合に支払われます。
支給額は、1日あたりの標準報酬額の2/3が支払われることになります。
支給期間は、休んだ期間のうち4日目から最長1年6ヶ月の期間で、条件(※)を満たしている日を支給対象とします。
(国民健康保険には、原則、傷病手当金はありません。)
※【傷病手当金の受給条件】
- 業務外の事由による病気やケガで療養中であること
- 労務(今まで従事してきた仕事)に服することができないこと
- 連続する3日間(待機期間)を含み4日以上休んでいること
- 給与の支払いがないこと(給与の減額支給等ある場合は調整あり)
尚、新型コロナウイルスに感染して仕事を休んだ場合でも、傷病手当金の支給対象となり、主に以下の条件で支給対象となります。
- 発熱等の自覚症状があるため、自宅療養を行っており、療養のため仕事を休む場合
- 陽性で自覚症状がない人で療養を必要とする場合
など。
但し、以下に該当する場合は支給対象外となりますので、注意が必要です。
- 本人に自覚症状がないが、家族が感染したため濃厚接触者扱いとして休暇を取得した場合
- 勤務先に新型コロナウイルス感染者が出たため、事業所全体が休業したため、それに伴う休暇
など。
尚、詳細については、下記の厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について」(令和2年3月6日)をご参照下さい。
■厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について」(令和2年3月6日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000604970.pdf
休業手当
休業手当とは、雇用側の事由によって従業員が休業をさせられた際に支給される制度となります。
こうした場合には、従業員の生活を確保するために平均賃金の6割以上の休業手当が支払われるように定められていますが、新型コロナウイルスに関しては、雇用側の責任で休業することにはならないため、残念ながら休業手当の対象とはなりません。
これは、都道府県知事が行う緊急事態宣言により新型コロナウイルス感染者は就業制限対象者に該当し、これを理由に休業したということになるからです。
ただし、雇用側の指示により休業をする場合には、休業手当の対象になります。(自主的に休業する場合は非該当)
加えて、事業所等において新型コロナウイルス感染者が出たため事業所全体が休業になった場合には、休業手当の対象になります。
今回、緊急事態宣言により休業要請を指示された事業所について、「雇用調整助成金の特例措置」も設けられています。
こちらは、本来、休業手当を支給する事由ではないケースでも、休業を余儀なくさせられた事業所等の救済措置でもあります。
尚、詳細については、下記の厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)および、厚生労働省 雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)をご参照下さい。
■厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
■厚生労働省 雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
新型コロナウイルス関連の支援策について
保険会社の支援策
今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連に関する各保険会社の支援策についてまとめさせて頂きます。
多少の差異はありますが、多くの保険会社が同様の支援策を表明し実施しております。
尚、支援策内容の詳細については各保険会社にご確認下さい。
保険料払込猶予期間の延長
契約者の申し出により、保険料払込を一定期間延長する特別措置となります。
保険金・給付金請求手続きの簡略化
請求に必要な書類を一部省略する等により、保険金・給付金の支払いが簡易迅速に出来る特別措置になります。
契約者貸付利息の免除
新規の契約者貸付について、契約者貸付金利を一定期間0%にすることで利息を「免除」する特別措置となります。
(約款規程の範囲内の契約者貸付上限額まで)
本来、契約者貸付金利は、予定利率に対し一定の貸付金利が付加されますが、特例として一定期間について「貸付金利を0%」とする特別措置になります。
契約者へのお見舞金の支払い
一部の保険会社では、新型コロナウイルスに感染したと診断された場合、治療の有無にかかわらず一律でお見舞い金を支払う特別措置の対応をしています。
災害死亡保険金の取り扱い
一部の保険会社では、災害保険金・災害高度障害保険金について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を直接の原因として死亡・高度障害状態に該当した場合、「災害保険金・災害高度障害保険金の支払いを対象とする」特別措置の対応をしています。
自治体の支援策
生活福祉資金貸付制度
「厚生労働省HP 生活福祉資金貸付制度」によると、新型コロナウイルス感染症の影響から、休業や失業等により生活資金に不安がある方へ向け、緊急小口資金等の特例貸付を実施しています。
主な対象者は、新型コロナウイルスの影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生活維持のための貸付を必要とする世帯とし、貸付上限額を20万円以内で貸付を行う制度です。
■厚生労働省 HP 生活福祉資金貸付制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsu-fukushi-shikin1/index.html
■東京都社会福祉協議会 生活福祉資金貸付事業
https://www.tcsw.tvac.or.jp/activity/kasituke.html
その他、各都道府県を中心とした助成金や給付金等の緊急支援策が発表されています。
ここでは、「東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」(https://covid19.supportnavi.metro.tokyo.lg.jp/)をご案内させて頂きますが、お住まいの地域別に支援策を発表していますので、各都道府県HP・市区町村HP等を確認頂くとより詳しい情報を得る事が可能です。
また、小規模事業者のみとなりますが、日本商工会議所の「小規模事業者持続化補助金」なども特別措置を発表していますので、該当される方はご確認頂くと良いと思います。
尚、募集の概要や公募要領については、下記をご確認頂けたらと存じます。
■日本商工会議所の小規模事業者持続化補助金
https://r1.jizokukahojokin.info/
加えて、日本政府から発表されている支援策についても、下記に掲載させて頂きます。
併せてご確認頂けたらと思います。
内閣官房 新型コロナウイルス感染症対策
法人・小規模事業者等(個人事業主)の支援策として「持続化給付金」や、「実質無利子・無担保融資」、「雇用調整助成金」、「納税猶予」の支援策が実施されています。
また、個人については、「特別定額給付金」や「子育て世帯への臨時特別給付金」、「住居確保給付金」、「学生支援緊急給付金」等の給付金制度や、「緊急小口資金・総合支援資金」の資金貸付制度や、「納税猶予」等の支援策も講じられています。
■内閣官房 新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内
https://corona.go.jp/action/pdf/shiensakugoannai_20200522.pdf
■内閣官房 新型コロナウイルス感染症対策
https://corona.go.jp/action/
新型コロナウイルスと保険に関するQ&A
ホテルや自宅で療養しても保険は下りる?
多くの保険会社が主に以下のような特別措置を表明し、保険金・給付金の支払い対応をしています。
- 医療機関の事情により、入院できず、自宅や臨時施設等(医療機関と同等と見做される施設、ホテル等)にて、医師の指示および管理下による療養を受けた場合
- 医療機関の事情により、当初の退院予定日より早期に退院を余儀なくされ、自宅療養等をした場合(医師の診断書等の証明が必要)
上述のような場合には、「通常の傷病による入院」と同様に取り扱うことになり、本来の入院日数に応じた入院給付金が支払われることになります。
尚、各保険会社の新型コロナウイルス関連情報については、随時追加情報等も公表されておりますので、詳細については現在ご加入中の保険会社HP等をご確認頂くことをおススメします。
今から保険に入っても保障・補償してくれる?
新型コロナウイルスの感染等に備えて、今から保険に加入しておきたいとお考えの方も多いと思います。
基本的に、現在の健康状態にもよりますが、通常の生命保険や医療保険(保障)や損害保険(補償)に保険加入することが出来ます。
ただ、感染リスクの高い行動等(新型コロナウイルスが蔓延している国・地域への渡航)がある場合には、保険加入の引受けを拒否されることも考えられますので、ご留意ください。
まとめ
今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する各保険会社の対応は、迅速かつ適正な対応をされたと思います。
基本的には、通常の傷病に罹患した場合と同様の保険金・給付金支払いに対応した点や、ホテルや自宅療養も入院と見做した給付金支払いを表明した点は、とても素晴らしい判断だったと感じます。
一方、個々人としては、今後も同様に未知の感染症が流行した場合、どのような準備をしておいたら良いか……。
これまで入院等で保険にお世話になることは、“縁遠い”とお感じになられていた方も、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を目の当たりにして、「他人事ではない問題」という認識を新たにお感じになられたのではないでしょうか?
「第二波の流行」について警戒が必要との報道もあることから、次なるリスクに備えるためにも、改めて「保険」について考える時間を持ちたいものです。加入している保険種類によって保険金支払いの条件等にも差異がありますし、職業・職種等も含めた自分自身の環境や状況に即した備えをしておくことも重要になると思います。
緊急事態宣言による自宅待機等、これまでにない経験をした今だからこそ、今後のリスクに備えるために、改めて「保険について考える」時間を設け、「保険に詳しいFPに相談する」等のアクションを起こしてみる良い機会にしていきましょう。
また、有事の際にも金銭面で困らない為に、ライフプランを通して、明確なキャッシュフローを作成しておくことも重要になってきます。
改めてご自身とご家族を守る“ライフプラン”を持つこと、そしてそのために保険のプロフェッショナルに一度相談することが非常に大切です。