がん保険の待期期間とは? 待期期間が必要な理由と3大注意点を徹底解説!

がん保険

今では日本人の2人に1人はがん(悪性新生物)に罹患しています。(*1)
欧米に比べてがんで亡くなる人が多く「日本はがん大国」と言われるくらい身近な病気に位置付けられています。

こういった状況の中で、がんに対する備えの手段として「がん保険」に興味のある方や、すでに加入されている方も多くいらっしゃいます。

テレビに出ている芸能人や知人など身近な方が「がん」に罹患したと聞くと、「自分もがんになったら今加入しているがん保険で大丈夫かな」と不安になることもあるかもしれません。

がん保険の見直しを希望される方に「どうして見直そうと思ったのですか?」と聞くと
「今加入しているがん保険が古いと思って」
「がんのニュースを見て今のがん保険で良いのか不安になったから」
というお答えをされる方は多いです。

今回の記事では、加入中のがん保険を見直しする際に知っておきたい保険契約締結後の「待期期間」の必要性や注意点を確認していきましょう。

*1. 国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」(全国がん罹患データ(2018年))
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

がん保険の待期期間とは

今回取り上げるがん保険の待期期間とは、一体どういう期間のことを指すのでしょうか。実はこの待期期間という言葉は一般的な生命保険にはあまり見られないものになります。この章では、一般的な生命保険との対比を交えてがん保険の待期期間の基礎的な説明を加えていきたいと思います。

一般的な保険の保障開始時期と免責について

一般的に保険契約を締結する際に、
①申込書の記入
②告知書の記入(または診査)
③第一回目保険料の支払い(現在はキャッシュレスの会社もあります。)
のすべてが完了する日をもって申込した保険の保障がスタートします。保険契約者に対して保険会社が負う支払義務のスタート日を責任開始日と呼びます。

上記3つのうち1つでも不備があると、不備が解消されるまで保険会社が負う支払義務は発生しませんので注意するようにしてください。

しかし、責任開始に免責期間(保険金が支払われない期間)が設けられている保険商品の一つに「がん保険」があります。この場合、免責期間終了後が責任開始日となります。

保険会社のがん保険のパンフレットや約款を見ると『給付金のお支払いは、責任開始日以後にがんと診断確定された場合に限ります。』と記載されています。もちろんこの場合の責任開始日は免責期間終了後という意味です。

がん保険の待期期間の概要

上記でも解説致しましたが、がん保険には死亡保険や医療保険とは異なり、保険を契約してから保障がスタートするまでに待期期間があります。

この待期期間は保険会社によって「免責期間」「待ち期間」「不担保期間」「不てん補期間」などと呼ばれております。
この期間に、医師から「がん」と診断されても加入したがん保険から診断給付金等の保障は受けられません。さらには、がん保険の契約自体が無効になってしまうのです。

「加入したら保障されると思っていたのに・・・」
「保険に加入しても保障されない期間があるなんて・・・」
と心配になる方もいらっしゃると思います。では、この待期期間は一体どれくらいの期間なのでしょうか。次節で詳しく見ていきましょう。

がん保険の待期期間が90日である理由

多くのがん保険では待期期間は90日で設定されています。
例えば、がんの自覚症状が出た段階ですぐにがん保険に加入し、90日間の待期期間中は病院へ行かず、責任開始日後に病院でがんと診断されたとした場合、がん保険の保障を受けられる可能性はあります。ただし、がん保険加入後の短期間で給付金の支払い請求があった場合には、一般的には保険会社による調査が入り、問題がないかどうか判断されますのでご注意ください。

後ほどご説明いたしますが、保険会社としては上記のように、がんの自覚症状がある人が病院でがんと診断されるより少し前にがん保険に加入して、がんと診断されたらすぐに保険金を受け取るようなことが出来なくするために待期期間を設定しています。しかし、90日以上の待期期間を設定してしまうと、自覚症状がない人が通常通り加入してもしばらく保障されなくなってしまい、がん保険の本来の機能が損なわれてしまうことになります。

以上の理由から、今のがん保険の待期期間は一般的に90日となっています。

がん保険に待期期間があるのはなぜ?

ではなぜ、がん保険には待期期間があるのでしょうか?
理由としては、保険の公平性を保つためです。

がんはその部位にもよりますが、胸やリンパにしこりが出来たり、血尿や血便などの自覚症状が現れることがあります。
そこで「自分はもしかしてがんなのかな?」と考えて、病院に行く前に先にがん保険に加入するようなことができてしまうわけです。

病院へ行く前でしたら、がん保険に加入する際に記入する告知書の告知項目にあてはまらないのです。

もし、このような人ががん保険加入後すぐにがんと診断され、加入したばかりのがん保険から給付金が支払われてしまうと、自覚症状がなく加入した人と比べて不公平になってしまうことから90日間の待期期間が設けられているわけです。

もしろん、前述の通り90日間の待期期間中に病院へ行かず、責任開始日後にがんと診断された場合、がん保険の保障を受けられる可能性はあります。しかし、がんは発見が早ければ早いほど早期治療が可能となり、治る可能性が高くなる病気です。むやみに病院へ行くことを我慢することで病状がさらに進行し、手遅れになったり治療期間が長引いてしまう可能性がありますので、自覚症状が現れたならすぐに病院へ行って診察を受けられることをお勧めします。また、このような状況にならないためにも自覚症状のない元気なうちにがん保険への加入を検討してみてください。

がん保険の待期期間に関する3つの注意点

ここまで、がん保険の待期期間がなぜ存在しているのか、その理由について説明してきました。保険の公平性を保つためには必要なものであるとご理解頂けたとは思いますが、一方で注意を払わなければいけない点があります。ここでは、待期期間に関する3つの注意点について解説させて頂きます。

待期期間にがんになったら契約は無効

待期期間中に「がん」と診断された場合には保険金は支払われません。ではその契約はどうなってしまうのでしょうか?
そのような場合、その保険契約そのものが【無効】となります。

もちろん契約自体が無効となりますので保険契約締結後に支払った保険料は払い戻されます。

ただ、もし契約締結の告知前に、がんと診断されていた事実を契約者や被保険者が知っていた場合はすでに支払った保険料の返還はありません。

待期期間中も保険料は支払う必要あり

「保険金が支払われないなら待期期間中は保険料を支払わなくても良いの?」 このような疑問も出てくるかと思います。

結論としては、がん保険は待期期間中でも保険料を支払う必要があります。
その理由としては、待期期間中はすでに保険の契約期間中であるからです。

契約を締結した時、すなわち契約日が保険としての始期となり、待期期間はあくまで保険の責任(保障)がスタートする責任開始日までの期間となります。もともと保険料は契約日から将来分も含めてその保険期間で平準化されるように設定されていますので、保険期間がスタートするとき(契約日)から発生するようになっています。

保障を受けることが出来ないにも関わらず保険料は支払う必要があるのはなんとなく納得がいかないかもしれませんが、将来的な保障を確保するために、契約日から保険料を支払うことになっているのです。
注)最近では待機期間中の保険料を支払わなくてもよいという保険商品も出てきています。

入り直す場合は空白期間を作らない

一般的な保険を見直しする際には、乗り換え先の保険契約が成立したら、元の保険はそのタイミングで解約するのが一般的ですが、がん保険の場合は注意が必要です。

新しいがん保険が成立した後、すぐに元の加入中のがん保険を解約されてしまうと、新しい保障がスタートするまでの90日間の空白期間(保障がない期間)が出来てしまいます。

何度も申し上げているように、90日間の待期期間中に万が一がんと診断されてしまった場合、それまで支払った保険料は返還され、その契約はなかったこと(無効)になってしまいます。その上に、元のがん保険を解約してしまっているとなると、この期間にがんと診断された場合には新しいがん保険からも元のがん保険からも給付金が支払われなくなってしまうことになるのです。

二重に加入することになり「90日間分の保険料がもったいない!」と思われるかもしれませんが、万が一の際の安心を得るために加入した保険ですから、その空白期間を不安で過ごすことのないよう割り切って、解約は新しいがん保険の待期期間の終了後とするのが安心ではないでしょうか。

待期期間なしのがん保険とは

では、空白期間を気にせずに加入できる「待期期間をつくらない方法」は存在するのでしょうか??

答えは「存在する」です。

一つは、同じ保険会社同士でがん保険の見直しをする際には待期期間が発生しないように設定されている商品が最近出始めています。ただ、待期期間が発生しないからという理由だけで、本来必要としている保障が含まれていないがん保険を選択するようなことにならないよう保障内容を十分ご確認されることにご留意ください。

もう一つはもともと待期期間がないがん保険に加入することです。
「そんながん保険があるならわざわざ待期期間のあるがん保険を選ばす、待期期間のないがん保険に加入すれば良いではないか」
と思われる方が多いと思います。しかし、待期期間のないがん保険には、待期期間のない理由がきちんと存在するのです。

この章では、待期期間のないがん保険について解説していきたいと思います。

待期期間がないがん保険の概要

待期期間のないがん保険とは、一体どういった特徴があるのでしょうか。
メリットとしては当たり前のことではあるのですが、待期期間がないため加入後すぐに保障を受けることができる点が挙げられます。

一方のデメリットとしては、待期期間のないがん保険は基本的には診断給付金が保障されていない(診断給付金の保障がない)ということが挙げられます。他にも、特約の通院や抗がん剤治療などが保障されないケースもあります。

がん保険の乗り換えを検討する際には、そのがん保険がご自身の希望される保障が完備されている商品であるのか確認する必要があります。

待期期間がない保険に診断給付金がない理由

なぜ、待期期間のない保険には基本的に診断給付金がないのでしょうか?

理由としては、保険会社がリスクを回避するためです。

がん保険と言えば最大の特徴として、がんと診断された場合に給付される診断給付金が挙げられます。がん保険の診断給付金は、診断された場合に一時金として数百万円を保障していて再発の際も回数無制限で保障する商品もあり、がん保険の代表的な保障の一つとなっています。

診断給付金は保険料に対して大きな金額となりますので、保険会社もリスクを回避することもあり待期期間なしのがん保険には基本的に診断給付金がない商品となっています。

まとめ

今回は、現在加入中のがん保険を見直し、新しいがん保険に加入した場合に発生する待期期間の基礎的な事項から、3つの注意点まで包括的に解説してきました。その上で待期期間がないがん保険についてもご紹介させていただきました。

このように、「保険の見直し」という言葉はよく耳にしますが、保険には様々な商品があり、またそれぞれのルールが存在します。

そこを踏まえて「保険の見直し」をするのは知人などからの助言やネットの情報だけではなかなか困難です。
そういった時には保険のプロであるFPに相談するときっとわかりやすくご自身の希望に合った商品をしっかりと選んでくれると思います。

執筆者

平林 陽介CFP®資格

東京都出身。2000年に大学卒業後、専門商社に入社。その後外資系生命保険会社を経て現在。掲載記事においては、自身の経験や顧客に寄り添う姿勢や顧客目線のアドバイスが特徴的。通常の相談業務においても、顧客の将来に渡っての経済的保障と生活の安定を図ることを優先している。質の高いサービスと好評である。幅広い世代での相談を受けており、豊富な経験から相談結果に対する顧客満足度も高い。
■保持資格:CFP®資格宅地建物取引士
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