例年、12月中旬に決定される税制改正大綱。令和5年度(2023年度)の注目は、NISA拡充、相続税・贈与税の見直し、といったところでしょうか?
税制改正大綱とは税制の改正法案のいわば「たたき台」という位置付けです。
これを元に作成された法案を、国会でこの1月から3月ごろまで審議を行い、法案が可決すれば、2023年4月に施行されます。
注目ポイント1:NISA拡充
「NISA」は、個人の資産運用を後押しするために作られた税制の優遇制度です。
購入した株式や投資信託などの売却益や配当金が一定の範囲内で非課税となる制度です。
①制度の恒久化
安定的な資産運用を促すため「つみたてNISA」を基本とし投資期限が廃止されます。
②投資枠の拡大
年間の投資枠も引き上げられます。
「つみたて投資枠」は年間投資枠を3倍の120万円に拡大。
国内外の上場株などに幅広く投資できる一般型は「成長投資枠」に衣替えし、年間投資枠を2倍の240万円に広げられます。
投資の限度額を引き上げると富裕層がさらに優遇を受けることになるのではないか?という指摘もあるので、生涯通算で1800万円の非課税限度額を設けます。
③口座タイプの選択が不要に
これまでは、「つみたてNISA」、「一般NISA」どちらかの口座を選択する必要がありましたが、同時に投資することもできるような、改正案となっています。
注目ポイント2:贈与税と相続税
改正のねらいは、子育て世代などへの資産移転を促し、経済の活性化につなげることです。
①相続税の対象とする期間の延長
子や孫に財産を移す生前贈与のうち、相続財産に加えて相続税の対象とする期間を現行の死亡前3年から7年へと延長されます。
ただ、延長した4年分については、総額100万円まで相続財産に加算しないとしています。
合算する期間は、2027年1月以降、段階的に延ばし、2031年1月に7年となります。
②相続時精算課税制度
「相続時精算課税制度」は、2,500万円までの生前の贈与について、いったんは非課税としたうえで、相続の際に合算して課税額を計算するものです。
これまでは、少ない金額の贈与でも、税務署に申告する義務がありました。
毎年110万円以内の贈与は、相続時に申告しなくてもよくするという改正案です。
この毎年110万円以内の贈与とは、贈与税の基礎控除である110万円とは別カウントです。
このように、生前の早い段階での贈与を促し、若い世代が結婚や子育てなどで資金を必要としているときに円滑に資産を移りやすくするのが目的です。
この記事を書いた人
橘 美穂子(ファイナンシャルプランナー)
1997年大学卒業後、外資系金融機関に新卒入社。契約管理部門から営業部門へ。女性の少ない営業現場で、女性ならではの気配りや丁寧な対応でクライアントから絶大な信頼を得て営業部門初の女性管理職となるも、よりお客様に寄り添ったコンサルティングがしたく2014年に転職し現在。マネーセミナーの講師などもつとめる。■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格