生命保険料控除とは
納税者が、生命保険や共済に加入して保険料を支払うと、一定の条件を満たせば所得から控除されます。その結果として所得税や住民税が減税されるという税法上の優遇措置があります。
生命保険料控除対象の保険
平成24年1月1日以降に契約した保険は新制度の対象
新制度では
①一般の生命保険
生存又は死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険契約
②介護、医療保険
疾病又は身体の傷害等により保険金が支払われる保険契約のうち、医療費支払事由に基因して保険金等が支払われる保険契約
③個人年金保険
「個人年金保険料税制適格特約」が付加された年金保険
の3種類があります。
「個人年金保険料税制適格特約」とは
①年金受取人が、契約者またはその配偶者であること
②年金受取人は被保険者と同一人であること
③保険料払込期間が10年以上あること(一時払いは対象外です)
④年金の種類が確定年金・有期年金の場合は、年金開始時に被保険者の年齢が60歳以上で、かつ年金受取期間が10年以上であること
の4つの条件を満たした契約に付加できるものです。この特約には保険料は必要ありません。
また、上記の4つの条件を満たしていたとしても「個人年金保険料税制適格特約」を付加していなければ、個人年金保険料の控除対象とはなりません。(その場合、一般生命保険料控除の対象となります。)
平成23年12月31日までに契約した保険は旧制度の対象
旧制度には
②介護、医療保険はありません。①の一般の生命保険に含まれていますので2種類だけとなります。
対象となる保険に加入していれば毎年10月から11月頃に保険会社から「生命保険料控除証明書」が郵送されてきます。(平成30年分からは電子メール等で送信された証明書を印刷したものでも利用できるようになりそうです。)
生命保険料控除証明書には「新」、「旧」、「一般」、「介護医療」、「個人年金」が必ず表示されています。
生命保険料控除の対象者
保険料を払う契約者が対象ですが、保険金の受取人が誰でもいいというわけではありません。保険金の受取人が保険契約者本人か配偶者、その他の親族である生命保険契約です。その他の親族とは六親等以内の血族と三親等以内の姻族です。この範囲以外の人が受取人となっている保険は控除を受けることはできません。
控除額の計算方法
新制度の計算方法
平成24年1月1日以降に契約した保険は新制度の対象となります。
①一般の生命保険、②介護医療保険、③個人年金保険の3種類でそれぞれを計算します。
所得税の計算方法
年間払込保険料が20,000円以下の場合:払込保険料全額
年間払込保険料が20,000円超40,000円以下の場合:(払込保険料×1/2)+10,000円
年間払込保険料が40,000円超80,000円以下の場合:(払込保険料×1/4)+20,000円
年間払込保険料が80,000円超の場合 : 一律40,000円
①一般②介護医療③年金それぞれの控除を合計したものが控除額となりますが適用限度額は
120,000円です。
住民税の計算方法
年間払込保険料が12,000円以下の場合:払込保険料全額
年間払込保険料が12,000円超32,000円以下の場合:(払込保険料×1/2)+6,000円
年間払込保険料が32,000円超56,000円以下の場合:(払込保険料×1/4)+14,000円
年間払込保険料が56,000円超の場合:一律28,000円
①一般②介護医療③年金それぞれの控除を合計したものが控除額となりますが適用限度額は
70,000円です
旧制度の計算方法
平成23年(2011年)12月31日までに契約をしている保険は旧制度の対象となるため計算方法が違います。
旧制度では生命保険と介護医療保険の区分はなく、一般生命保険となっています。
①一般の生命保険 ②個人年金保険の2種類でそれぞれを計算します。
所得税の計算方法
年間払込保険料が25,000円以下の場合:払込保険料全額
年間払込保険料が25,000円超50,000円以下の場合:(払込保険料×1/2)+12,500円
年間払込保険料が50,000円超100,000円以下の場合:(払込保険料×1/4)+25,000円
年間払込保険料が100,000円超の場合 : 一律50,000円
①一般②年金それぞれの控除を合計したものが控除額となりますが適用限度額は100,000円です。
住民税の計算方法
年間払込保険料が15,000円以下の場合:払込保険料全額
年間払込保険料が15,000円超40,000円以下の場合:(払込保険料×1/2)+7,500円
年間払込保険料が40,000円超70,000円以下の場合:(払込保険料×1/4)+17,500万円
年間払込保険料が70,000円超の場合 : 一律35,000円
①一般②年金それぞれの控除を合計したものが控除額となりますが適用限度額は70,000円です。
「新」の①生命 ②介護医療 ③年金 「旧」の①一般 ②年金の総合計の適用限度額は所得税12万円住民税7万円です。
新制度と旧制度の両方の契約がある場合は要注意
気をつけなければならない点が一つあります。
例えば「旧」生命保険料を8万円、「新」生命保険料を3万円払っていた場合
「旧」生命保険料の控除額は
80,000円×1/4+25,000円=45,000円です。
限度額の5万円には足りないので「新」生命保険料も使いましょう!と考えますよね。
「新」生命保険料の控除額は
30,000円×1/2+10,000=25,000円です。
「旧」と「新」を合計すると
45,000円+25,000円=70,000円になります。これで50,000円の控除が受けられると思われますが、実は、「新」と「旧」の両方の適用を受ける場合は「新」の限度額までしか受けられないのです。
この例の場合、受けられる控除額は40,000円になってしまいます。「新」生命保険料は使わずに「旧」生命保険料だけを使うほうが45,000円の控除が受けられるので良いでしょう。
まとめ
・「生命保険料控除」を受けることで、所得税と住民税が軽減されます。
例えば、80,000円の所得控除(住民税の場合は56,000円)を受けると所得税が4,000円~36,000円(所得によって税率が変わりますので税額がかわってきます)軽減され、住民税は5,600円(税率は10%)軽減されます。
・①一般の生命保険、②介護医療保険、③個人年金保険の3種類を活用出来ます。
・給与所得者は勤務先に年末調整の書類と一緒に生命保険料控除証明書を提出すればOKです。
・自営業などの確定申告をしている人は確定申告のときに添付します。
やはり難しいと思われる方は、是非、専門家のファイナンシャルプランナーに確認してみてください。
監修者
橘 美穂子(ファイナンシャルプランナー)

■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格