万一のときに備えて医療保険に加入しようと思っても、種類が多くてどれを選べばいいか分からないという方は多いのではないでしょうか。今回は、プロの視点から医療保険の選び方を解説します。基本知識から選ぶ際のポイントまでをしっかり押さえましょう。
医療保険を選ぶためのステップ
医療保険は多くの会社で商品として販売しています。そんな多くの中から、どのようなステップで選んでいけばよいのでしょうか?一般的なタイプや保障内容などをみていきましょう。
保障のタイプを決める
医療保険には、保障が一生涯続く終身タイプと一定期間で契約が終了する定期タイプとがあります。
保険の内容を決める
一般的には、大きく3種類に分かれます。
- 入院時の1日当たりの給付金が主契約タイプ
- 1回の入院で給付金を一時金で受けとるタイプ
- 入院時にかかった費用の実費分が保障されるタイプ
保険会社を決める
上記の中から、自身の希望する保険のタイプが決まれば、その希望に合致する商品(保険会社)が絞り込まれていきます。
可能であれば、複数の保険会社の商品を取扱う方に相談しましょう。様々なタイプから、あなたの希望する商品の絞り込みを可能としてくれるはずです。
終身医療保険と定期医療保険について
医療保険には、保障が一生涯続く終身医療保険と、一定期間で契約が終了する定期医療保険があります。終身医療保険は定期医療保険に比べて一般的に保険料が割高ですが、一度加入すると保険料は変わらず一生涯の安心を得られます。
一方、定期医療保険はライフプランにあわせて期間を限定して加入でき、終身医療保険に比べて見直しがしやすく、保険料も保障期間が短いため低めに設定されています。
保障がほしい期間と保険料のバランスを見て、どちらが自分にふさわしいのかを検討することが大切です。
保険料の支払い方法
終身医療保険には、加入している限り一生涯保険料を払い続ける終身払と、一定年齢で支払いが終わる短期払の2種類があります。
終身払
短期払よりも毎月の保険料が安く、見直しもしやすいです。社会保障制度の改定や医療の進歩によって必要な保障は時代によって変わります。保険契約もそれにあわせて変わるため、途中で見直しができるほうが臨機応変に対応できるでしょう。
短期払
60歳や65歳で払い込みが終了する短期払は、収入があるうちに払い込みが終わるので、老後に保険料の心配をすることがありません。また、保険料が変わることはなく、解約返戻金が無いか僅かな場合がほとんどです。ただし、老後の保険料も前倒しで支払うので毎回の保険料が終身払に比べて高く、保険の見直しがしにくいというデメリットがあります。
比較のポイント
医療保険を選ぶ際は、次の3つのポイントを比較しましょう。
①入院給付金日額
入院給付金日額とは、入院日数に応じて受け取れる給付金で、1日5,000円、10,000円などと設定されています。例えば、1日5,000円の保険に加入し5日間入院した場合、受け取れる金額は25,000円となります。
日本には高額療養費制度があるため、1日5,000円あれば治療費をカバーできるケースも多いかもしれません。高額療養費制度とは、その月の上限額を超えて医療費を支払った場合は、申請によって払いすぎたお金が返ってくる制度のことです。
しかし、治療費以外にも入院・通院時にかかる交通費や家族の生活費、病衣代や日用品費など、出費がかさむことも考えられます。入院費用以外の出費が気になる場合は高めに設定しておいたほうが安心です。
②1入院の限度日数
医療保険の多くは1入院に対する支払限度日数が設定されています。60日、120日、180日など商品によって異なります。仮に60日タイプの医療保険に加入した場合、1回の入院で入院給付金を受け取れるのは60日目までとなり、それ以降は保障の対象外です。限度日数は長いほうが安心ですが、その分保険料も高くなります。
現在は入院日数が短くなってきていることから、大半の入院の場合では限度日数が60日でも差し支えありません。ただし、がんや脳卒中、急性心筋梗塞などは入院期間が長引く恐れもあります。心配な方は限度日数を引き上げるか、日数延長される特約を付けて備えるようにしましょう。
③手術給付金
手術を受けたときに給付される手術給付金は、主契約の入院給付日額に倍率をかけ計算されます。その倍率が一定額タイプと、種類に応じて倍率が変わるタイプがあります。一定額タイプは、手術の種類によらず1回につき5万円、10万円などと給付額が決められています。倍率が変わるタイプは、手術の種類によって10倍、20倍、40倍などに分かれています。
例えば入院日額5,000円の保険に加入しており、倍率が20倍の手術を受けたら、100,000円が支払われます。倍率変動タイプは定額タイプよりも保険料がやや高めですが、大きな手術を受けたときに手厚い保障が受けられるという点では安心感があります。
特約は付けるべき?
医療保険には、任意で特約を付けることができます。主な特約について解説します。
三大疾病特約
がん(悪性新生物)、脳卒中、急性心筋梗塞になったときに手厚い保障が受けられる特約です。特約内容としては、約款によって定められた特定の状態になったときに一時金が給付される、入院給付金の支払限度日数が無制限になる、以降の保険料が免除されるなどが挙げられます。家族にがん患者がいて発症するリスクが高い、治療が長引いたときにもしっかりと保障を受けたいという方に適しています。商品によっては対象となる三大疾病の範囲について、がん、脳疾患、心疾患と、広く設定しているものもあります。
女性疾病特約
乳がんや子宮がんなど女性特有の病気(女性特有の病気以外にも、女性に多いとされる病気についても対象となるものもあります。)にかかったときに、通常の入院・手術給付金に一定金額が上乗せされる特約です。数ある疾病の中で、女性特有の病気にかかった場合だけ保障が手厚くなるのが特徴です。
ただし、女性特有の病気だからと言って医療費が跳ね上がることはなく、特約を付けることによって保険料は高くなります。女性特有の疾病にかかるリスクが高い人にはぴったりですが、主契約だけで医療費をカバーできることも多いため、事前に本当に必要かどうかを見極めましょう。
先進医療特約
先進医療とは、厚生労働省が定める最先端の医療技術で、対象となる疾患や受診できる医療機関が限定されています。先進医療は公的医療保険が適用されず、全額自己負担となりますが、その治療費を補うのが先進医療特約です。比較的高額な治療もあり、治療の選択肢を狭めたくない場合に付けておくと安心です。
生活習慣病特約
1996年12月、厚生省の公衆衛生審議会は、生活習慣に着目した新たな疾病概念を導入しました。これが生活習慣病といわれるものです。
生活習慣病の種類には悪性新生物・心疾患・脳血管疾患・高血圧・糖尿病・肝疾患・腎疾患・膵疾患など様々なものがあり、保険会社によって対象となる疾患の数や対象の疾患(病名が指定されている場合もある)等が異なりますが、この特約で指定された生活習慣病で入院した場合に給付の対象となります。
まとめ
医療保険は、商品によって保障内容が異なります。家族構成や職業、年齢によって必要な保障は変わるので、自分だけでは判断が難しいというのが現状です。そこで、保険に加入する際は専門家のファイナンシャルプランナーに相談しましょう。
監修者
橘 美穂子(ファイナンシャルプランナー)

■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格